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亜人の森

聖域へ

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「それじゃ、コラーさん。セロラさん。お世話になりました」

 マルクエンに言われると、コラーはあたふたとしだす。

「いえ!! こちらこそ!! 箱も魔人倒して頂いてで、なんてお礼を言ったらいいのか……」

「お二人共。村のこと頼みましたよ」

「は、はい!! マルクエン様もラミッタ様も、ご武運を!!」

 コラーは敬礼してマルクエン達を見送る。





 とある森、月明かりに照らされて女が仰向けに寝ていた。

「う、うぅ……。ここは?」

 上半身を起こすと、周りを見渡す。

 自分の長いブロンドの髪がサラリと風になびいた。

 状況が分からない。誰かが被せてくれたのかは知らないが、毛布をどけると立ち上がった。

「おっ? お目覚めかい? 眠り姫様」

「誰だ!!」

 剣がないので右手に魔力を込めて言う。

 焚き火に照らされて、男の姿がぼんやりと見えた。

「あー、待った待った。そんな事されたら怖くておしっこ漏れちゃうよ」

 声の主である男はふざけているのか、そんな事を言った。

「ふざけるな、貴様は誰だ!?」

「俺の名はマッサ! ただのしがない冒険者さ」

「冒険者?」

「そうそう、夜の魔物を討伐してたら、アンタがそこで寝ていたんだ」

 女は状況を整理する。自分は戦場で急に意識が途絶えたはずだ。

「すまない。どうしても状況が理解できない」

「何があったか知らんが、俺は美人の味方さ。ほら、お腹でも空いてないかい?」

 焚き火の上で煮込んでいたスープを一杯よそい、近付いてきた。

「そう睨まないで、変なもの入ってないから」

 確かに女は腹が減っていた。

 だが、見ず知らずの男が持ってきた料理を食べるほどバカではない。

 受け取った皿に毒見の魔法を掛ける。

 どうやら本当に何もされていないらしい。

「おわ、やっぱ俺って信用されてないの!? かなしいー!!」

「疑ったことはすまなかった」

「まぁいいや。食べながらお話でもしようか。とりあえずアンタ名は?」

「名か、私の名は……」






 マルクエンは馬車を走らせ、街道を行く。

 荷台ではラミッタが目を瞑りウトウトしている。

 このまま道なりに行けば聖域へと着く。

 辺境の地にある為、今日は日が暮れたら野宿だ。

「さてと、ここら辺で野営でもするか」

「そうね」

 テントの設営と食事を済ませ、魔物避けの結界を張る。

 運良く空は晴れており、月明かりが二人を照らしていた。




 次の日、二人は聖域へとまた向かう。

 道は整備されているが、山道で、斜面になっている。

「この上が聖域か」

「そうね」

 しばらく道を行くと、村が見えた。

 聖域を守る人々が暮らす場所だ。
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