上 下
181 / 226
亜人の森

攻略法

しおりを挟む
「この箱にも何か出来ることがあればいいんだけどね」

「今のところ、緑色になって魔物が出てくる時しか破壊できないもんな」

「えぇ、後は柵で囲っておくぐらいしかないしね。気休め程度だけど」

 そこで、マルクエンはふと思い出す。

「あ!! そう言えばシチがこの箱は周辺の魔物の転送装置だって仮説を立てていなかったか!?」

 マルクエンの言葉を聞いてラミッタもハッとする。

「色んなことありすぎて忘れていたわ……」

「ってことは、周りの魔物を狩り続ければ……」

「いや、待って。……、ちょっと試したいことがあるわ」



「っと、言うわけで。皆さんにも協力をお願いしたいのですが」

 ラミッタが立てた作戦を実行するために、兵士たちに仮説を話す。

「承知いたしました。我々も戦いましょう」

「わかった!」

 兵士たちと二人は魔物狩りを始めた。

 森の中に居た熊型の魔物をマルクエンは切りつける。

 だが、トドメは刺さない。前足を一本斬り捨て、自由を奪う。

 セロラも曲刀を使い、森の中を駆け巡って魔物を弱らせていく。

 そうして魔物を次々に虫の息にしていった。

 夕暮れになり、皆は村に帰る。

「コラー、大丈夫か?」

 一目散にセロラはコラーの元へ走り、様子を伺う。

「あぁ、俺は平気だよ」

「そっか」

 ホッとした顔をして笑顔を見せるセロラ。

 王都からやって来た使者に、現状と試したいことがあると伝え、またひとっ走りして貰うことにした。





 そんな日々が一週間は続く。

 獣人は回復も早いのか、コラーは自分で動き回れるぐらいになっていた。

 夜になり、その時は来る。

 箱が怪しく緑色に光り、魔物達が召喚された。

 その様子を見て、ラミッタはニヤリと笑う。

「やっぱり。思った通りね」

 箱から出てきたのは、負傷し、衰弱した魔物達だった。

 そう、箱が緑色にならなければ壊せないのであれば、それまでに出てくる周囲の魔物を弱らせておけば良かったのだ。

「それじゃ、チャッチャとやっちゃいますか」

「あぁ!!」

 ものの十数分で魔物も、箱も片付いた。

 戦いというよりは魔物にトドメを刺すだけの作業だ。

「この事は早速報告ね」

「あららー。こういうコトされると困っちゃうんだよなー」

 気配を消して上空から見下ろしていたのは、奇術師の魔人ミネスと。

「久しぶりだな異世界の勇者よ!!!」

 ガタイの良い男の魔人。クラムだ。

「やはりこの箱なんてまどろっこしい事をせずに、さっさと勇者を血祭りに上げれば良かったのだ」

「えー。せっかく僕が作ったのにひどいー」

 ラミッタは上空に向けて雷を打ち上げる。マルクエンも光の刃を飛ばした。

「行くぞ!!」

 クラムは剣を構えて急降下し、マルクエンとラミッタに襲いかかる。

 青いオーラを身に纏ったマルクエンはそれを迎え撃った。

 剣同士がぶつかり合うと、ガァンと音が鳴り響く。

「それじゃ君はボクと遊ぼうか」

 ミネスはラミッタに向かって言う。

 ラミッタは剣を握りしめ、空を翔ける。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?

ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。 それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。 「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」 侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。 「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」 ※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい…… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】ちびっこ錬金術師は愛される

あろえ
ファンタジー
「もう大丈夫だから。もう、大丈夫だから……」 生死を彷徨い続けた子供のジルは、献身的に看病してくれた姉エリスと、エリクサーを譲ってくれた錬金術師アーニャのおかげで、苦しめられた呪いから解放される。 三年にわたって寝込み続けたジルは、その間に蘇った前世の記憶を夢だと勘違いした。朧げな記憶には、不器用な父親と料理を作った思い出しかないものの、料理と錬金術の作業が似ていることから、恩を返すために錬金術師を目指す。 しかし、錬金術ギルドで試験を受けていると、エリクサーにまつわる不思議な疑問が浮かび上がってきて……。 これは、『ありがとう』を形にしようと思うジルが、錬金術師アーニャにリードされ、無邪気な心でアイテムを作り始めるハートフルストーリー!

【完結】慈愛の聖女様は、告げました。

BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう? 2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は? 3.私は誓い、祈りましょう。 ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。 しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。 後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

令嬢キャスリーンの困惑 【完結】

あくの
ファンタジー
「あなたは平民になるの」 そんなことを実の母親に言われながら育ったミドルトン公爵令嬢キャスリーン。 14歳で一年早く貴族の子女が通う『学院』に入学し、従兄のエイドリアンや第二王子ジェリーらとともに貴族社会の大人達の意図を砕くべく行動を開始する羽目になったのだが…。 すこし鈍くて気持ちを表明するのに一拍必要なキャスリーンはちゃんと自分の希望をかなえられるのか?!

騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。 剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作? だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。 典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。 従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。

処理中です...