180 / 234
亜人の森
痛み
しおりを挟む
楽しい宴会から一変して村は悲惨な状況になった。
セロラはコラーの横に座って泣いている。
「ごめん、コラー……」
意識を失ったままのコラーから返事は無い。
月明かりが差し込む中。コラーは目が覚めた。
全身がビリビリと痛み、うっと声を上げる。
足元に重みを感じて見てみると、セロラがもたれ掛かって眠っていた。
「セロラ……」
一言そう呟き、セロラが無事だった事に安堵する。
その時、セロラの猫耳がピクリと動き、顔を上げてコラーを見た。
「コラー! 起きたか!?」
「あぁ……」
セロラは思わずコラーに抱きつこうとするが、ぐるぐる巻かれた赤く血の滲んだ包帯を見て自重する。
「コラー。何で私を助けた?」
「何でって……。気付いたらな、体が勝手にだよ」
「そう……」
セロラは何と言えば良いのか、ずっと考えた。
そして、出した答えは。
「コラー。ごめんね。助けてくれてありがとう」
「良いんだ。でも、もう無茶はしてくれるなよ?」
「うん……」
いつになく聞き分けの良いセロラを見てコラーはフッと笑う。
朝になり、集会所で目覚めるマルクエンとラミッタ。
ラミッタは徹夜で手当をしていたので、まだ眠気が抜けきらないでいた。
「おはよう。お疲れラミッタ」
「えぇ、大丈夫よ」
ふわーっとあくびを一つして集会場を見渡す。
犠牲者こそ居なかったが、怪我人は多数いる。
その中でも、一番重症のコラーの様子を見に行く。
「あら、仲良さそうに寝ているわね」
コラーと寄り添って寝るセロラを見て二人は安堵した。
他の怪我人を看ている間に、目覚めるコラーとセロラ。
「おはよう、気分はどうかしら?」
「あっ、おはようございます!! 申し訳ありません。自分が不甲斐ないばかりに……」
「いえ、誰かを守る姿勢は兵士として立派でした」
マルクエンに言われると、思わずコラーは照れた。
「とりあえず、痛み止めを飲んで。そして薬塗って包帯の交換よ」
言われた通りにするコラー。傷口に包帯が張り付いていて、剥がす時が物凄く痛い。
「コラー、大丈夫か?」
セロラが手を握っていてくれているので、恥ずかしい所を見せるまいと耐える。
「さてと、どうしたものかしらね」
集会所の外、村の中心に置かれた箱を見てラミッタは言う。
「箱を壊しても、これじゃいたちごっこだな」
マルクエンも思わずはぁっとため息をつく。
セロラはコラーの横に座って泣いている。
「ごめん、コラー……」
意識を失ったままのコラーから返事は無い。
月明かりが差し込む中。コラーは目が覚めた。
全身がビリビリと痛み、うっと声を上げる。
足元に重みを感じて見てみると、セロラがもたれ掛かって眠っていた。
「セロラ……」
一言そう呟き、セロラが無事だった事に安堵する。
その時、セロラの猫耳がピクリと動き、顔を上げてコラーを見た。
「コラー! 起きたか!?」
「あぁ……」
セロラは思わずコラーに抱きつこうとするが、ぐるぐる巻かれた赤く血の滲んだ包帯を見て自重する。
「コラー。何で私を助けた?」
「何でって……。気付いたらな、体が勝手にだよ」
「そう……」
セロラは何と言えば良いのか、ずっと考えた。
そして、出した答えは。
「コラー。ごめんね。助けてくれてありがとう」
「良いんだ。でも、もう無茶はしてくれるなよ?」
「うん……」
いつになく聞き分けの良いセロラを見てコラーはフッと笑う。
朝になり、集会所で目覚めるマルクエンとラミッタ。
ラミッタは徹夜で手当をしていたので、まだ眠気が抜けきらないでいた。
「おはよう。お疲れラミッタ」
「えぇ、大丈夫よ」
ふわーっとあくびを一つして集会場を見渡す。
犠牲者こそ居なかったが、怪我人は多数いる。
その中でも、一番重症のコラーの様子を見に行く。
「あら、仲良さそうに寝ているわね」
コラーと寄り添って寝るセロラを見て二人は安堵した。
他の怪我人を看ている間に、目覚めるコラーとセロラ。
「おはよう、気分はどうかしら?」
「あっ、おはようございます!! 申し訳ありません。自分が不甲斐ないばかりに……」
「いえ、誰かを守る姿勢は兵士として立派でした」
マルクエンに言われると、思わずコラーは照れた。
「とりあえず、痛み止めを飲んで。そして薬塗って包帯の交換よ」
言われた通りにするコラー。傷口に包帯が張り付いていて、剥がす時が物凄く痛い。
「コラー、大丈夫か?」
セロラが手を握っていてくれているので、恥ずかしい所を見せるまいと耐える。
「さてと、どうしたものかしらね」
集会所の外、村の中心に置かれた箱を見てラミッタは言う。
「箱を壊しても、これじゃいたちごっこだな」
マルクエンも思わずはぁっとため息をつく。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる