171 / 226
亜人の森
憧れているんだ勇者様に
しおりを挟む
「まったく……」
コラーは相当な苦労人なのだろうなとマルクエンは思う。
「そうだ! こんな所で立ち話をさせてはいけません! この村で唯一の宿屋にご招待します!」
「わかりました。助かります」
コラーが宿屋に案内してくれる道すがら、コラーはマルクエンに話をし続けていた。
「あの、失礼ですが。マルクエン様とラミッタ様は竜を倒した経験があるって本当なんですか!?」
「えぇ、翼竜と……。あとは鉱脈に住む竜を」
コラーはマルクエン達の方を向き、目を輝かせる。
「凄い!! 噂は本当だったんだ!!」
「マルクエン様、竜倒したか!? もっと好きになった! ツガイになろう!」
「い、いえ、その……。ははは」
セロラがグイグイと来るのでタジタジのマルクエン。
「魔人も!! 魔人も倒したんですよね!!」
「えぇ、まぁ」
「凄い!! 凄いです!!」
「魔人も倒したのか? やっぱ結婚しよ!!」
個性の強い二人だなぁと、マルクエンは苦笑いしていた。
その後、ソワソワしていたコラーだったが、意を決してマルクエンに言う。
「マルクエン様、ラミッタ様、頼みたいことがあるんです。ちょっと……」
「ん? 何でしょうか?」
マルクエンが聞き返すと、コラーは話し続ける。
「一度で良いから、お二人の必殺技を見たいんです!」
「必殺技……? ですか」
「憧れているんです、勇者様に!」
輝いた目で見られて、顔を見合わせるマルクエンとラミッタ。
「一回きり見せて頂ければ、それで私は満足します! お願いです!」
「そうですか、まぁ、一回ぐらいならば」
開けた場所だったので、マルクエンは金色の剣を引き抜いて、空に向かって光の刃を数発飛ばした。
負けじとラミッタも詠唱を始め、光の剣を空に向かって発射する。
「うわー! 凄い!!」
「凄い!! マルクエン様、ツガイになろう!!」
キャッキャと喜ぶ二人を見てほっこりするマルクエン。
「ありがとうございました! あぁ、そうだ! 宿屋に行かなくちゃ……」
本来の目的を思い出したコラーは再び歩き始めた。
「こちらです!」
案内されたそこは、お世辞にも綺麗な外観とは言えない宿だ。
「さぁ、どうぞ中へ!」
「えぇ、それでは」
マルクエンとラミッタは、宿屋のドアを通り、室内を見る。
老朽化はしていたが、小綺麗に掃除はされており、汚いという印象は無かった。
「いい宿ですね」
マルクエンが言うと同時に、奥から人が出迎えに来る。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました勇者様」
気品のある中年の女性だ。彼女も亜人であり、頭から耳が生えていた。
コラーは相当な苦労人なのだろうなとマルクエンは思う。
「そうだ! こんな所で立ち話をさせてはいけません! この村で唯一の宿屋にご招待します!」
「わかりました。助かります」
コラーが宿屋に案内してくれる道すがら、コラーはマルクエンに話をし続けていた。
「あの、失礼ですが。マルクエン様とラミッタ様は竜を倒した経験があるって本当なんですか!?」
「えぇ、翼竜と……。あとは鉱脈に住む竜を」
コラーはマルクエン達の方を向き、目を輝かせる。
「凄い!! 噂は本当だったんだ!!」
「マルクエン様、竜倒したか!? もっと好きになった! ツガイになろう!」
「い、いえ、その……。ははは」
セロラがグイグイと来るのでタジタジのマルクエン。
「魔人も!! 魔人も倒したんですよね!!」
「えぇ、まぁ」
「凄い!! 凄いです!!」
「魔人も倒したのか? やっぱ結婚しよ!!」
個性の強い二人だなぁと、マルクエンは苦笑いしていた。
その後、ソワソワしていたコラーだったが、意を決してマルクエンに言う。
「マルクエン様、ラミッタ様、頼みたいことがあるんです。ちょっと……」
「ん? 何でしょうか?」
マルクエンが聞き返すと、コラーは話し続ける。
「一度で良いから、お二人の必殺技を見たいんです!」
「必殺技……? ですか」
「憧れているんです、勇者様に!」
輝いた目で見られて、顔を見合わせるマルクエンとラミッタ。
「一回きり見せて頂ければ、それで私は満足します! お願いです!」
「そうですか、まぁ、一回ぐらいならば」
開けた場所だったので、マルクエンは金色の剣を引き抜いて、空に向かって光の刃を数発飛ばした。
負けじとラミッタも詠唱を始め、光の剣を空に向かって発射する。
「うわー! 凄い!!」
「凄い!! マルクエン様、ツガイになろう!!」
キャッキャと喜ぶ二人を見てほっこりするマルクエン。
「ありがとうございました! あぁ、そうだ! 宿屋に行かなくちゃ……」
本来の目的を思い出したコラーは再び歩き始めた。
「こちらです!」
案内されたそこは、お世辞にも綺麗な外観とは言えない宿だ。
「さぁ、どうぞ中へ!」
「えぇ、それでは」
マルクエンとラミッタは、宿屋のドアを通り、室内を見る。
老朽化はしていたが、小綺麗に掃除はされており、汚いという印象は無かった。
「いい宿ですね」
マルクエンが言うと同時に、奥から人が出迎えに来る。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました勇者様」
気品のある中年の女性だ。彼女も亜人であり、頭から耳が生えていた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。
なんか気が付いたら目の前に神様がいた。
異世界に転生させる相手を間違えたらしい。
元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、
代わりにどんなものでも手に入るスキルと、
どんな食材かを理解するスキルと、
まだ見ぬレシピを知るスキルの、
3つの力を付与された。
うまい飯さえ食えればそれでいい。
なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。
今日も楽しくぼっち飯。
──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。
やかましい。
食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。
貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。
前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。
最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。
更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。
あおいろ
ファンタジー
主人公ーヒルフェは、唯一の家族である祖母を失くした。
彼女の葬式の真っ只中で、蒸発した両親の借金を取り立てに来た男に連れ去られてしまい、齢五歳で奴隷と成り果てる。
それから彼は、十年も劣悪な環境で働かされた。
だが、ある日に突然、そんな地獄から解放され、一度も会った事もなかった祖父のもとに引き取られていく。
その身には、奇妙なスキル【疲れ知らず】を宿して。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる