113 / 234
試練の塔
試練の塔
しおりを挟む
食事を摂っていると、マルクエンはハッとしてとある事を思い出す。
「しまった。すっかり忘れていましたが、ジャガの街で竜の素材を使った武器を作って貰っている所でした」
ラミッタもそれを聞いて「そういえば」と思い出した。
「あの二人とのお別れにばっかり頭が行ってて、忘れていたわ」
「今の装備では何か問題でも?」
剣士のゴーダが聞くと、マルクエンは答える。
「私達が元の世界から持ってきた剣は魔人によって破壊されてしまいました。この剣は急遽、買った物なのです」
マスカルが「なるほど」と頷く。
「そうでしたか、後ほどお二人の装備品を拝見してもよろしいでしょうか?」
店を出て、人の迷惑にならない場所で剣を抜いて見せた。
「そうですね……。一般の冒険者でしたら十分に立派な剣ですが、試練の塔へ挑むには心許ないですね」
「ジャガの街へ戻り、剣を貰ってきますか?」
マルクエンが言うと、マスカルは首を横に振る。
「残念ですが、剣が出来るまで時間もかかるでしょう。今は一刻を争う事態なのです」
「そんなに猶予が無いのですか?」
ラミッタが疑うように見た。
「魔人もこちらの動向を探っているでしょう。お二人には早く力を手に入れて頂かなくてはなりません。そして、勇者となり、各地に散らばる箱を破壊して頂きます」
「箱を壊すだけであれば、試練の塔へ挑まなくても良いのでは?」
ラミッタの言葉に、マスカルは説明を始める。
「試練の塔へ挑まなくてはいけない理由は二つあります。まず、第一に神から授けられる能力を手に入れること」
「世界の危機だと言うのに、塔を登らせるなんてケチくさい神様ですね」
「次に、試練の塔を突破した勇者として人々に希望を与えるためです」
「なるほど……」
肩書きが大事なことは、騎士であるマルクエンは重々に分かっていた。
「試練の塔は選ばれしものしか門を開くことが出来ませんが、きっとお二人であれば」
「わかりました」
「武器は手配させましょう。何だったら私達の剣をお貸ししても良い」
「ありがとうございます」
武器の心配は無くなり、束の間の休息をとることになる。
翌日、またも街道を行く。しばらくすると、遠くに長細い建造物が見えてきた。
「あそこに見えるのが試練の塔です」
「あれが……」
マルクエンは目を凝らし、ラミッタは千里眼を使い、試練の塔を見る。
「もう一息です。向かいましょう」
マスカルはそう言って歩き出す。一歩一歩と塔が近付いてきた。
やがて、塔を見上げる様になるほど近づく一行。昼を過ぎた頃だ。
「しまった。すっかり忘れていましたが、ジャガの街で竜の素材を使った武器を作って貰っている所でした」
ラミッタもそれを聞いて「そういえば」と思い出した。
「あの二人とのお別れにばっかり頭が行ってて、忘れていたわ」
「今の装備では何か問題でも?」
剣士のゴーダが聞くと、マルクエンは答える。
「私達が元の世界から持ってきた剣は魔人によって破壊されてしまいました。この剣は急遽、買った物なのです」
マスカルが「なるほど」と頷く。
「そうでしたか、後ほどお二人の装備品を拝見してもよろしいでしょうか?」
店を出て、人の迷惑にならない場所で剣を抜いて見せた。
「そうですね……。一般の冒険者でしたら十分に立派な剣ですが、試練の塔へ挑むには心許ないですね」
「ジャガの街へ戻り、剣を貰ってきますか?」
マルクエンが言うと、マスカルは首を横に振る。
「残念ですが、剣が出来るまで時間もかかるでしょう。今は一刻を争う事態なのです」
「そんなに猶予が無いのですか?」
ラミッタが疑うように見た。
「魔人もこちらの動向を探っているでしょう。お二人には早く力を手に入れて頂かなくてはなりません。そして、勇者となり、各地に散らばる箱を破壊して頂きます」
「箱を壊すだけであれば、試練の塔へ挑まなくても良いのでは?」
ラミッタの言葉に、マスカルは説明を始める。
「試練の塔へ挑まなくてはいけない理由は二つあります。まず、第一に神から授けられる能力を手に入れること」
「世界の危機だと言うのに、塔を登らせるなんてケチくさい神様ですね」
「次に、試練の塔を突破した勇者として人々に希望を与えるためです」
「なるほど……」
肩書きが大事なことは、騎士であるマルクエンは重々に分かっていた。
「試練の塔は選ばれしものしか門を開くことが出来ませんが、きっとお二人であれば」
「わかりました」
「武器は手配させましょう。何だったら私達の剣をお貸ししても良い」
「ありがとうございます」
武器の心配は無くなり、束の間の休息をとることになる。
翌日、またも街道を行く。しばらくすると、遠くに長細い建造物が見えてきた。
「あそこに見えるのが試練の塔です」
「あれが……」
マルクエンは目を凝らし、ラミッタは千里眼を使い、試練の塔を見る。
「もう一息です。向かいましょう」
マスカルはそう言って歩き出す。一歩一歩と塔が近付いてきた。
やがて、塔を見上げる様になるほど近づく一行。昼を過ぎた頃だ。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる