上 下
108 / 234
ジャガの街

座学

しおりを挟む
「よし、揃ったわね! それじゃ今日も楽しい特訓よ!」

 ホテルのロビーでマルクエンと合流すると、開口一番にラミッタが言う。

「が、頑張るっす!!」

「私もやります!!」

 やる気はあるみたいだが、二人共顔から疲労が隠せていない。

「うむ、やる気はよしだけどー……」

 ラミッタは真面目な顔をする。

「無理な時は無理って言う事、そうしないと命を落とすわよ?」

 そこまで言って笑顔を作った。

「まぁ、たまには無理しないといけない時もあるけどね?」

「それは置いといてだな。お二人共どうです? 昨日の今日で辛くはありませんか?」

 マルクエンに尋ねられると、ケイは情けなさそうに話す。

「うー……。正直、腕は痛いしプルップルっスー」

「私も、ちょっと疲れてて……」

 シヘンも正直に今の体調を答える。それを聞いてラミッタは頷いた。

「正直でよろしい! それじゃ今日は座学をやっていきましょうか」

 ラミッタはシヘンとケイを座らせ、火、水、雷、風、光に闇とありとあらゆる魔法を披露する。

 まるで曲芸の様に披露されるそれを非現実が起きているように眺めていた。

 途中、いつの間にか野次馬の見物人まで現れだす始末だ。

「ざっとこんなもんよ、魔法ってのはここまで出来るってわけ」

「何か凄すぎて、実感が湧かないですね」

「私もっス……」

 ラミッタはそんな二人を見て笑っていた。

「いずれ、出来る様になるわ。っていうか、なって貰わなくちゃ困るわよ?」

「が、頑張ります!!」

「さて、宿敵は何を面白いもの見せてくれるのかしらね?」

 そう言われマルクエンはうーむと悩む。

「演舞だったら見せられるが、実戦向きかと言うとそうではないぞ?」

「まぁいいからやってみなさい」

 マルクエンは「わかった」と言い、十分に距離を取ると、一礼し目にも留まらぬ速さで抜剣する。

 大剣を棒切れのように軽々と回し、見えない敵を斬り伏せるマルクエン。

 一通り終えると、また一礼し、シヘンとケイだけでなく、見物人からも拍手が起こった。

「いつの間にか見物人が増えているな」

 マルクエンは照れながら言う。

「まぁ良いわ。それじゃ二人に質問でもしましょうかしら?」

「な、何スか!?」

 ケイは何を聞かれるのだろうと身構える。

「戦いにおいて、大事なことって何かしら?」

「戦い……。っスか?」

 ラミッタは二人に考えさせる。先に答えたのはシヘンだった。

「相手の弱点を突く……。みたいな?」

「それも正しくはあるわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

処理中です...