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水の神様

朝ごはんだワッショイ

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 ケイがそう口にすると、シチは頷いて話し始めた。

「魔物は、自然に生まれるものと、魔人や魔王が造ったものがいるのよ」

「そうか、それで祠に何か手掛かりがあるかもしれないんだ。そうでなくても、結界を修理したい。協力して貰えないだろうか?」

「条件次第ね」

 シチの言葉を聞いて、ラミッタは呆れを通り越して感心ている。

「あんた、よくこんな状況で交渉できるわね」

「もちろん、報酬なら払う」

「ほ、報酬って何かしら?」

 ソワソワするシチ。頭の中ではマルクエンにあんな事やこんな事をされている妄想が広まっていた。

「いや、金貨1枚でどうだろう?」

 ラミッタと相談したマルクエンが言う。

「金貨1枚!? やりましょう姉御!! これで飯が食えますぜ!!」

「そうね、金貨1枚……。って金貨1枚!?」

 別の報酬を期待していたシチは変な声を上げる。

「た、足りないか?」

「むしろ高すぎるぐらいよ。さぁ、土の中に埋まるか、協力して金貨1枚を得るか、選びなさい」

「わ、わかった。わかったわよ!!」

 ラミッタはシチ達の拘束を解いた。

「でもちょっと待った!! 私からも報酬の交渉がある!!」

 手下がそんな事を言って、全員がそちらを向く。

「朝ごはんを要求する!!!」

 全員がポカンとしてから、あぁ、朝ごはんかと言ってる事を理解した。

「シチさん達、また食べていないんですか?」

 シヘンが尋ねると手下は胸を張って言う。

「今度は三日食べてない!!」

「いや、それ偉そうに言うことじゃ無いっスから」

「恥ずかしいことを言うな!!」

 シチは手下に向かって大声を出した。

「私達も食べに行く所だったわ。それぐらい恵んであげるわよ」

「し、仕方ないわね。食べてあげるわ」

「嫌なら無理しなくてもいいわよ」

 虚勢を張るシチにラミッタはそう告げてスタスタ歩いて行ってしまう。

「シチ、良かったら食べて欲しい」

「し、仕方ないわね!!」

 マルクエンの助け舟にシチは乗っかった。

 料理店へ向かうと、シェフが朝食のパンケーキと目玉焼き、ベーコンを焼いてくれる。

「ヒャッハッハッ甘いもんと肉だー!!!」

 シチの手下は待ちきれんばかりに身を乗り出す。

「恥ずかしいことを言うな!!」

 シチは先程と同じセリフを言うが、待ちきれない気持ちは同じだった。

「それじゃイタダキマス!!」

 朝食を済まし、シェフとお金は要りません受け取って下さいの押し問答を終え、半ば強引にお金を置いて祠へと向かう。

「思ったんだが、シチは冒険者をやるつもりはないのか?」

 道中、疑問に思ったマルクエンがふと尋ねてみた。

「私は高潔なる黒魔術師!! 冒険者なんて汗臭い事はゴメンだわ」

「ろくに食べられもしないで何が高潔よ……」

 ラミッタはシチの言葉を聞いて呆れる。

 取り留めもない会話をしていると、川沿いまでたどり着き、そのまま上流へと向かう。
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