上 下
57 / 234
お家で待とう

しおりを挟む
 マルクエンは冒険者ギルドで鉄製の大鎚おおづちを借りる。

 重さ数十キロにも及ぶそれを軽々と片手で持ち運ぶのは、流石と言った所だろうか。

「さて、着いたわね」

 魔人の残した箱の前まで来るとラミッタが言う。

「さぁ宿敵! ぶっ壊しちゃいなさい!!」

「おう!!」

 マルクエンはありったけの力を込めて箱に大鎚を叩きつけた。

 ガインっと物凄い音が鳴り響くも、箱はビクともしない。

 二度三度と叩くも、箱に傷ひとつ付けることが叶わなかった。

「この箱、硬い!!」

 マルクエンがそう口にする。ラミッタは何かを考えていた。

「でも、魔物が出てきた時はあっさりと壊せたわ。何か条件があるのかしら」

「謎ッスねー……」

 うーんと皆で悩む中、ラミッタは思いついた仮説を披露する。

「多分だけど、魔物が出てくる時しか破壊できない……、かもしれないわね」

「可能性はあるな」

 マルクエンはラミッタの意見を支持した。

「宿敵、箱を押して動かしてみて」

「あぁ、分かった!」

 ラミッタに言われ、マルクエンは馬鹿力で箱を押す。

 しかし、ほんの少しも動かない。

「壊せない、動かせない。ってことは、待つしか無いって所かしら」

「あぁ」

「まー、悩んでいても仕方ないわ。その時まで街でゆっくり暮らしましょう」

 ラミッタは箱に背を向けて歩き始めた。その後をマルクエン達も付いていく。

 ギルドに大鎚を返すと、マルクエン達は街なかを歩いた。

「何か欲しい物があったら買い物しちゃいましょう。せっかくお金も貰ったんだし」

「それじゃ、私は食べ物や、生活の消耗品なんかを買ってきますね!」

「お、私は荷物持ちしてくるッスー」

 シヘンとケイは買い物に出かける。残されるマルクエンとラミッタ。

「それじゃ宿敵。私達も何か家で必要な物でも買うわよ」

「うーん、特にこれと言って必要な物が無いのだが……」

「ありまくりよ!!」

「具体的に何が必要なんだ?」

 マルクエンが不思議がって聞くと、ラミッタは答える。

「必要なものは必要なものよ!! 街の中を見ていたら気付くわよ」

「そういうものなのか?」

 マルクエンとラミッタは街を歩く。ラミッタは雑貨屋の前で足を止めた。

「そうね、ここでも見ていきましょう」

「あぁ、分かった」

 二人は店の中へと入っていく。食器類や消耗品などが売っていた。

「いらっしゃいませー! 何かお探しですか?」

 マルクエンは女性の店員に話しかけられる。

「いえ、特にこれと言って探しているものは無いのですが……。そうだ、何か良い食器がありましたら」

「食器ですか……。あっ、そうだ! こちらなんていかがでしょう?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

処理中です...