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お家で待とう

お姫様抱っこ

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 床に座り込むラミッタを見てマルクエンは驚く。何やら様子のおかしいラミッタと、酒の匂いで察した。

「ラミッタ、酔っているのか?」

「なー!! わたしはよってないー!!」

 はいはいとため息をついてマルクエンはベッドから起き上がる。

「部屋に連れて行くぞ」

 マルクエンはラミッタをお姫様抱っこする形で抱え上げた。

「やー!! なにするんらー!!」

 ラミッタは抵抗するも、力が入っていない。マルクエンが廊下に出ると、シヘンとケイにばったりと出くわした。

「なっ!? どういう状況ッスか!?」

「ラミッタさん!?」

「どうも酔っていて部屋を間違えたらしいですね。私が隣の部屋まで運んでおきます」

 両手が塞がっているマルクエンに代わり、ケイが部屋のドアを開けた。

 そのままベッドに行ってラミッタを寝かす。

「おやすみ、ラミッタ」

「まてーしゅくてきー、にげるなー」

 よく分からないうわ言を言っていたが、ラミッタはすぐに眠りについた。




 翌日、ラミッタは頭痛で目が覚める。二日酔いでまたフラフラとしながら一階に降りてきた。

 皆は朝食をっていたが、ラミッタの方を見つめる。

「すいませんラミッタさん。一応、起こしには行ったのですが……」

「別に大丈夫よ。ちょっと水を頂戴」

 シヘンが水を持っていくと、一気に飲み干した。

「今、酔い醒ましの魔法を掛けますね」

「悪いわね……」

 シヘンはラミッタの手に触れて魔法を掛けた。みるみる内に気持ち悪さが抜けていく。

「あー、スッキリしたわ。ありがとねシヘン」

「いえ、大丈夫ですよ」

 テーブル前の椅子にラミッタは腰掛ける。

「ラミッタ、昨日は大変だったぞ。間違えて私の部屋に入ってくるし……」

 そこまで聞いて、ラミッタは吹き出し、慌てた。

「なっ、わ、私がそんな事するわけ無いじゃない!! ちゃんと自分の部屋で寝ていたし!!」

「あー、マルクエンさんが運んだんスよ。お姫様抱っこで」

 ニヤリと笑いながらケイが言う。するとラミッタは顔を真っ赤にして大慌てだ。

「う、嘘!? 嘘でしょ!?」

「嘘じゃないぞ」

 マルクエンが真顔で言うので、ラミッタは恥ずかしさが爆発しそうだ。

「な、なに酔っ払っている私に好き勝手しているのよ!? このド変態卑猥野郎!!」

「理不尽だぞ!!」

 行き場のない感情でラミッタはマルクエンに当たっていた。



 朝食を終え、ラミッタはマルクエンの部屋に散らばる装備を見て、昨日のことが現実だったと再認識する。

「もうやだ……」

 マルクエン達は装備を整え、家の外へと出て、冒険者ギルドへと向かった。

 ギルドの中に入ると、マルクエン達を見た者たちが小声で話し合う。

「おい、昨日の……」

「何者なんだ?」

 そんなヒソヒソ声を気にせず、マルクエンは受付に向かった。

 そこには、家の場所を案内してくれた女性が立っている。

「あぁ、マルクエンさん達! おはようございます!」

「おはようございます。っと、まだお名前をお伺いしていませんでしたね」

「そうでしたね、申し遅れました。私はミウと申します」

 そう言ってミウは頭を下げた。
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