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異世界の日常
引っこ抜かれて
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「ふーん……。どりゃ!!」
「ぬ、抜けた!!」
ラミッタも手下を引き抜いて、襲撃者の二人は自由の身となった。そして、マルクエンを見ると、シチに押し倒されている様な図だった。
「こ、この、ど、ド変態卑猥野郎!! 昼間っから何してんのよ!!」
「何って、何もしていないぞ!?」
いそいそとシチは立ち上がり、マルクエン達に捨て台詞を吐いていった。
「次は必ず下僕にしてあげるわ!! 体を洗って待ってなさい!!」
「いや、それ首を洗ってじゃないか?」
マルクエンのツッコミが届く前にシチと手下の二人は走っていってしまった。
その後は何事もなく、ヒョーウの街へ着いた。
「それじゃ早速、この街の冒険者ギルドへと行こうかしら」
少し疲労が溜まっているシヘンとケイを気に留めずに、ラミッタはズンズン歩いて行く。
「マルクエンさん、よく鎧を着て歩いて疲れないっスね……」
「えぇ、小さい頃から着させられていたので、それに常に筋力強化の魔法を使っていますから」
軽く笑うマルクエンだったが、とんでもない事を言った自覚は無いらしい。
「あんた達、遅い!!」
先に行っていた不機嫌なラミッタが言う。シヘンはおしゃべりは後でにしようと思った。
このヒョーウの街は交通の要で、先程居た街よりも更に活気がある。
「これだけ人が居れば、魔王の情報も集まりそうだな」
人混みを見てマルクエンが呟く。
「えぇ、そうね」
中央通りを歩き、一行はギルドへと着いた。中に入ると冒険者たちでごった返していた。
クエストの掲示板を見ると、EランクからAランクまで選び放題の状態だ。
ラミッタはAランクのミッションを好奇心で見てみるため、手を伸ばすと、誰かと手が触れ合った。
あっと手を引っ込め相手を見る。短めの茶髪をした、優男といった感じの男だ。相手はラミッタの顔をしばらく見詰め、はっと我に返る。
「おぉ、お嬢さん。失礼しました」
「いえ、こちらこそ」
そう短い会話を交わして、ラミッタはマルクエン達の元へと戻る。
「はぁ……」
先程ラミッタと手が触れ合った茶髪の優男が、ギルドの食堂でため息を付いていた。
「どうなされました? 勇者殿」
ガタイの良い男剣士が優男にそう言う。どうやら茶髪の男は勇者らしい。
「いや、ちょっとな」
「どうしたんですか? 勇者様らしくもない」
女魔法使いも普段の勇者らしくない男にそう言った。
「これは運命の出会いかもしれない……」
「運命ですか?」
困惑する男剣士、女魔法使いと顔を見合わせる。
そんな時だった。勇者は目を疑う。隣のテーブル席に先程の女性、いや天使が座った。
「あー、お腹はまだすかないけど、喉乾いたわねー」
「何か飲みましょうか? 私、アイスティーでも注文してくるっス!!」
「それで良いわ、お願い」
「了解っス!!」
褐色な肌の銀髪で、見たところ剣士だろうか? そんな女が奥へと歩いていった。
「疲れましたね、ラミッタさん」
「私はまだまだいけるわよ」
長いブロンドヘアの魔法使いであろう女が、天使の横に座る。
女性だけの冒険者パーティなのだろうか? 勇者は意を決して立ち上がる。
「ぬ、抜けた!!」
ラミッタも手下を引き抜いて、襲撃者の二人は自由の身となった。そして、マルクエンを見ると、シチに押し倒されている様な図だった。
「こ、この、ど、ド変態卑猥野郎!! 昼間っから何してんのよ!!」
「何って、何もしていないぞ!?」
いそいそとシチは立ち上がり、マルクエン達に捨て台詞を吐いていった。
「次は必ず下僕にしてあげるわ!! 体を洗って待ってなさい!!」
「いや、それ首を洗ってじゃないか?」
マルクエンのツッコミが届く前にシチと手下の二人は走っていってしまった。
その後は何事もなく、ヒョーウの街へ着いた。
「それじゃ早速、この街の冒険者ギルドへと行こうかしら」
少し疲労が溜まっているシヘンとケイを気に留めずに、ラミッタはズンズン歩いて行く。
「マルクエンさん、よく鎧を着て歩いて疲れないっスね……」
「えぇ、小さい頃から着させられていたので、それに常に筋力強化の魔法を使っていますから」
軽く笑うマルクエンだったが、とんでもない事を言った自覚は無いらしい。
「あんた達、遅い!!」
先に行っていた不機嫌なラミッタが言う。シヘンはおしゃべりは後でにしようと思った。
このヒョーウの街は交通の要で、先程居た街よりも更に活気がある。
「これだけ人が居れば、魔王の情報も集まりそうだな」
人混みを見てマルクエンが呟く。
「えぇ、そうね」
中央通りを歩き、一行はギルドへと着いた。中に入ると冒険者たちでごった返していた。
クエストの掲示板を見ると、EランクからAランクまで選び放題の状態だ。
ラミッタはAランクのミッションを好奇心で見てみるため、手を伸ばすと、誰かと手が触れ合った。
あっと手を引っ込め相手を見る。短めの茶髪をした、優男といった感じの男だ。相手はラミッタの顔をしばらく見詰め、はっと我に返る。
「おぉ、お嬢さん。失礼しました」
「いえ、こちらこそ」
そう短い会話を交わして、ラミッタはマルクエン達の元へと戻る。
「はぁ……」
先程ラミッタと手が触れ合った茶髪の優男が、ギルドの食堂でため息を付いていた。
「どうなされました? 勇者殿」
ガタイの良い男剣士が優男にそう言う。どうやら茶髪の男は勇者らしい。
「いや、ちょっとな」
「どうしたんですか? 勇者様らしくもない」
女魔法使いも普段の勇者らしくない男にそう言った。
「これは運命の出会いかもしれない……」
「運命ですか?」
困惑する男剣士、女魔法使いと顔を見合わせる。
そんな時だった。勇者は目を疑う。隣のテーブル席に先程の女性、いや天使が座った。
「あー、お腹はまだすかないけど、喉乾いたわねー」
「何か飲みましょうか? 私、アイスティーでも注文してくるっス!!」
「それで良いわ、お願い」
「了解っス!!」
褐色な肌の銀髪で、見たところ剣士だろうか? そんな女が奥へと歩いていった。
「疲れましたね、ラミッタさん」
「私はまだまだいけるわよ」
長いブロンドヘアの魔法使いであろう女が、天使の横に座る。
女性だけの冒険者パーティなのだろうか? 勇者は意を決して立ち上がる。
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