上 下
30 / 234
異世界の日常

またも再会のシチ

しおりを挟む
 次の日、四人は一つの部屋に集まり、ラミッタが話し始める。

「この街とは今日でおさらばね。魔王の情報が集まらないわ」

「そうだな、次の街へと向かうか」

 マルクエンは頷いて言う。

「シヘンさんの村から離れていってしまうが、大丈夫ですか?」

「えぇ、私は平気です!」

「それじゃ、早速出発するッスか?」

「そうね、今から出れば夕方前には次の街に着くことが出来るわ」

 四人は街を後にし、街道を歩き出した。

 道中の魔物はシヘンとケイの練習用に任せ、マルクエンとラミッタは見守ることに徹する。

「はい、この辺りで休憩ね」

「あー疲れたッスー」

 そんな事を言うケイを見て少し笑い、シヘンはお弁当を取り出した。

「作っておいたんです。食べて下さい」

「ありがとっ、それじゃ頂こうかしら」

「あぁ、シヘンさんありがとう」

 サンドイッチを掴んで皆で食べる。

「美味しいわシヘン」

「ありがとうございます!」

 ラミッタに言われてニコッと笑顔を返すシヘン。マルクエンも感想を言った。

「本当、美味しいです。毎日食べたいぐらいですよ」

「えっ、その、毎日……、ですか?」

 シヘンは思わず顔を赤らめて下を向く。ラミッタはマルクエンを不機嫌そうな顔で見た。

「何言ってんのよ、ド変態卑猥野郎」

「えっ、私は何かおかしい事でも言ったか?」

 昼食が終わり、やっと次の街が遠くに見えてきた。そんな時だ。マルクエン達の前に立ちふさがる影があった。

「私の下僕候補よ、今日こそ屈服させてあげるわ!!」

 白い肌に黒いドレスとゴスメイク。黒魔術師のシチ・ヘプターだった。ついでにちっこい手下も居た。

「お前は、シチ・ヘプター!!」

 マルクエンは名前を口に出して剣を引き抜いた。

「なっ、えっ、な、名前覚えていてくれたの!? じゃなくて、覚えていたのか、流石、下僕候補ね」

 少し嬉しそうなシチだったが、冷静さを取り繕う。

「あんた達、懲りないわね」

 ラミッタも剣を構えて呆れていた。

「あなたは魔剣士ね。今日こそ倒してあげる」

 シチは炎の魔法を数発打って寄越した。ラミッタは軽々とそれらを避けて地面を強く踏む。

 すると、シチの立つ地面が急に盛り上がり、壁が出来た。その壁に捉えられたシチと手下は身動きが取れなくなった。

「ふん、この程度……」

 魔力を送り込んで解除しようとするが、シチは驚く。魔力が壁をつたい、地面へと流れ出て行ってしまうのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...