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奇術師の魔人

定番のスライム 2

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「宿敵!! あんたは見ないで!!」

 マルクエンは目を逸らして空の奇術師の方を向く。スライムはラミッタがどうにかしてくれるだろう。

「こんな卑猥なスライムを作るなんて良い趣味してるわ」

 ラミッタは剣でブスブスとスライムの核を突いていく。すると、スライムは不活性化し、ドロリと地面に落ちていった。

 だが、ラミッタはスライムを突いた際、飛び散る返り血ならぬ返り粘液を少し浴びてしまった。

「って、何よこれ!!」

 ラミッタの服も溶け始めた。肩や胸元、太ももが見え始める。

「大丈夫か、ラミッタ!?」

 マルクエンは振り返ろうとするが、ラミッタが叫ぶ。

「大丈夫じゃないけどこっち見るな!!」

 そんな様子をクスクスと笑いながら奇術師は見ていた。そして、空から降りてくる。

 マルクエンは剣を構えて奇術師と対峙した。

「まぁ、そんなに警戒しないで。今日はお話をしに来たんだ」

「話?」

「そう、単刀直入に言うよ。君たち、魔王軍に就くつもりは無いかい?」

 いきなりの提案にマルクエンは思わず言葉をそのまま返す。

「魔王軍に?」

「そう、魔王軍に。だって君たちはこっちの世界を守る義理なんて無いでしょ?」

 言われてしまえばその通りだったが、マルクエンは言う。

「お断りだ。私は魔王を倒して元の世界へと帰る」

「何でそこまで元の世界に固執するのさー」

「私はイーヌの騎士だ。国を守るために何としても帰らなければならない」

「ふーん」

 興味無さそうに奇術師は生返事をする。

「でもさ、魔王軍に入れば好きな事やり放題だよ? 気に入らない奴は斬り捨てて、可愛い女の子は自分の物にできる。それになんと今、魔王軍の仲間になれば幹部の地位もつけちゃいまーす!」

 そこであっと奇術師は付け足した。

「何なら僕がこの場で君の彼女になってあげようか?」

「そんな事は興味がない」

 きっぱりと断るマルクエン。

「えー、振られちゃった。傷つくなー。もしかして女の子に興味ない感じ?」

「語弊のある言い方だな……」

「君はさー、イーヌって国の騎士なんでしょ? じゃあこの世界なんて守る必要無くない?」 

「宿敵、楽しそうにお話しているわね」

 ラミッタが話に割って入る。マルクエンはその声の方を見ると。

「なっ、ラミッタ!?」

 服が溶けかけの胸元を左腕で隠し、右手で剣を持っていた。
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