12 / 234
冒険をしよう
乾杯
しおりを挟む
朝に村を出て、その上ケイの道案内もあり、四人は夕暮れ時には街に着くことが出来た。
住民の数は千人ぐらいだろうか、そこそこ大きな街だなとマルクエンは思う。
「さて、今日は遅いですし、宿を取った方がいいっスね。明日この街の冒険者ギルドに行きましょう!」
「えぇ、分かりました」
ケイの言葉にマルクエンは返事をした。宿屋に向かうと三人部屋と一人部屋を取る。
その後は適当な飯屋に向かい、四人は食事を取ることにした。
肉や揚げ物が盛り付けられた大皿料理と、スープにパンが目の前に運ばれてくる。
「よっしゃ、景気よく乾杯! ……、と言いたい所だけど、宿敵。あなたのそれは何?」
「何って、ミルクだが?」
真面目な顔で言うマルクエンにラミッタは爆笑する、
「あんたミルクって、冗談はやめてよ」
「何だと!? ミルクは体に良いらしいぞ?」
「いや、普通酒でしょ酒!! 飲まなそうなシヘンだってお酒頼んでるのよ!?」
ラミッタとケイはジョッキのビールを、シヘンはワインを頼んでいた。
「私は酒が飲めないんだ。ビール一口で気持ち悪くなって寝る」
「そのガタイで酒飲めないの!?」
「あぁ、一滴も飲めん」
断言するマルクエンにシヘンもポツリと言葉を漏らす。
「マルクエンさんの意外な一面ですね」
はぁーっとラミッタはため息を付いた。
「あなたと戦う時、剣じゃなくて酒でも掛けたほうが良かったかしら」
「まぁまぁまぁ、ラミッタさん! 乾杯っスよ!」
「……そうね、おこちゃまに乾杯!」
四人はジョッキとグラスをぶつけ、中身を飲み始める。
食事の時間は楽しいものだった。それが終わると宿屋へと戻る。
「宿敵は一人部屋ね、寂しくなって夜泣かないでよね?」
「ははは、言ってくれるなラミッタ」
そう言ってマルクエンは部屋へと入る。この世界に来て始めて一人でゆっくりと考え事が出来るようだ。
ベッドに腰掛けて天井を見つめる。マルクエンにはこの世界が元いた世界とは別物だと今だに信じられない。
料理もどこか見覚えのあるものばかりだし、言葉も通じる。
だが、この世界にはイーヌ王国もルーサもない。元の世界へ戻れるだろうか? そんな事をぼんやりと考えていた。
いつの間にか眠っていたマルクエンは朝を迎える。定刻になると音が鳴る魔石に起こされ、上半身を起こした。
鏡を見て髪を整える。ふと、伸びてきた髭が気になった。王都では朝メイドに剃ってもらっていたが、現在そんな者は居ない。
一瞬、この世界にも理髪店はあるのだろうかと考えたが、無い訳があるまいと身支度をしながら思う。
マルクエンは宿屋のロビーで仲間達を待つ。その間、紅茶を一杯頼んで飲んでいた。
住民の数は千人ぐらいだろうか、そこそこ大きな街だなとマルクエンは思う。
「さて、今日は遅いですし、宿を取った方がいいっスね。明日この街の冒険者ギルドに行きましょう!」
「えぇ、分かりました」
ケイの言葉にマルクエンは返事をした。宿屋に向かうと三人部屋と一人部屋を取る。
その後は適当な飯屋に向かい、四人は食事を取ることにした。
肉や揚げ物が盛り付けられた大皿料理と、スープにパンが目の前に運ばれてくる。
「よっしゃ、景気よく乾杯! ……、と言いたい所だけど、宿敵。あなたのそれは何?」
「何って、ミルクだが?」
真面目な顔で言うマルクエンにラミッタは爆笑する、
「あんたミルクって、冗談はやめてよ」
「何だと!? ミルクは体に良いらしいぞ?」
「いや、普通酒でしょ酒!! 飲まなそうなシヘンだってお酒頼んでるのよ!?」
ラミッタとケイはジョッキのビールを、シヘンはワインを頼んでいた。
「私は酒が飲めないんだ。ビール一口で気持ち悪くなって寝る」
「そのガタイで酒飲めないの!?」
「あぁ、一滴も飲めん」
断言するマルクエンにシヘンもポツリと言葉を漏らす。
「マルクエンさんの意外な一面ですね」
はぁーっとラミッタはため息を付いた。
「あなたと戦う時、剣じゃなくて酒でも掛けたほうが良かったかしら」
「まぁまぁまぁ、ラミッタさん! 乾杯っスよ!」
「……そうね、おこちゃまに乾杯!」
四人はジョッキとグラスをぶつけ、中身を飲み始める。
食事の時間は楽しいものだった。それが終わると宿屋へと戻る。
「宿敵は一人部屋ね、寂しくなって夜泣かないでよね?」
「ははは、言ってくれるなラミッタ」
そう言ってマルクエンは部屋へと入る。この世界に来て始めて一人でゆっくりと考え事が出来るようだ。
ベッドに腰掛けて天井を見つめる。マルクエンにはこの世界が元いた世界とは別物だと今だに信じられない。
料理もどこか見覚えのあるものばかりだし、言葉も通じる。
だが、この世界にはイーヌ王国もルーサもない。元の世界へ戻れるだろうか? そんな事をぼんやりと考えていた。
いつの間にか眠っていたマルクエンは朝を迎える。定刻になると音が鳴る魔石に起こされ、上半身を起こした。
鏡を見て髪を整える。ふと、伸びてきた髭が気になった。王都では朝メイドに剃ってもらっていたが、現在そんな者は居ない。
一瞬、この世界にも理髪店はあるのだろうかと考えたが、無い訳があるまいと身支度をしながら思う。
マルクエンは宿屋のロビーで仲間達を待つ。その間、紅茶を一杯頼んで飲んでいた。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる