3 / 226
再会
共闘
しおりを挟む
「お、お前、生きていたのか!?」
マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。
「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」
互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。
「お知り合いなんですか?」
「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」
「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」
ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。
「いや、決してそんなものでは」
そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。
「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかってきた!!」
その言葉を聞くと、ラミッタは一気に凛とした顔になり、外へと飛び出す。
「ま、待てラミッタ!!」
マルクエンもその後を追って村の外へと走っていく。
一緒に付いてきたシヘンとケイはその光景を見て絶望した。
「な、なんスかこの数は!!」
思わずケイはそう言う。百にも及ぶゴブリンと、その後ろにはカニや犬、カマキリの魔物が続いていた。
村には衛兵が三人いるが、とても太刀打ちできないだろう。それどころか、村にいる冒険者達を合わせても無理だ。シヘンは杖を強く握ってポツリと言う。
「さっきのゴブリンは……、もしかして先遣隊だったのでしょうか」
「そうかもしれませんね」
マルクエンが大剣を引き抜いてシヘンの言葉に答える。その正面ではラミッタが魔物の群れと対峙し、振り返らずに言った。
「宿敵!! 一時休戦よ!! アイツ等をやるわ!!」
「あぁ、分かった!!」
その提案にマルクエンは同意し、二人は魔物の群れに走っていく。
「マルクエンさん!! いくらマルクエンさんが強くてもこの数は!!」
シヘンは止めようとマルクエンの背中に叫ぶが、止まらない。
敵に近づいたラミッタは炎の玉を左手から打ち出す。着弾すると、そこを中心に大きな爆発が起きた。吹き飛ぶゴブリン達。続いて雷の魔法で感電させ絶命させる。
「うおおおおお!!!」
雄叫びを上げながらマルクエンはまるで小枝を振り回すかのように大剣を振るい、次々とゴブリンと魔物を切り裂いていく。
冒険者も衛兵も、その圧倒的な力を眺めることしか出来なかった。
ものの十分程度で村を襲撃した群れは壊滅してしまう。皆、言葉を失っていたが、ケイが最初に言葉を口に出す。
「マジか、マジっスか!?」
白昼夢のような光景にそんな感想しか出てこなかった。
だが、段々と状況を理解した者達から歓声が上がる。そんな注目の的であるラミッタはマルクエンに声を掛けた。
「どうやら、亡霊じゃないみたいね」
「お前こそ、本物みたいだな」
二人は互いにニヤリと笑い顔を見合わせた。
「また一戦やり合いたいものだけど、宿敵。あなたはこの世界に来たばかりかしら?」
この世界という言葉が気にかかったが、マルクエンは言葉を返す。
「あぁ、気付いたら森の中で寝ていた」
「私が色々説明してあげるわ」
村へと歩みだすラミッタの後を、マルクエンは剣を仕舞って着いていく。
「ラミッタ殿、流石でした。本来であれば我々衛兵が戦わなければならないものを……、情けない」
「いえ、良いのですよ」
衛兵に笑顔でラミッタは返事をする。
「それで、そちらの方は冒険者でしょうか?」
「いや、昔ちょっとありましてね」
適当にはぐらかしてラミッタは冒険者ギルドに向かう。マルクエンの元にシヘンとケイもやって来た。
「マルクエンさん、やるっスねぇー!!」
ケイに言われると、マルクエンは頭をかいた。
「そんな、大したことではありませんよ」
「マルクエンさん、お怪我は!?」
「シヘンさん。お気遣いありがとうございます。怪我はありませんよ」
あんな大群相手で傷一つ無いことに、シヘンは驚いていた。冒険者ギルドに戻ると、中はざわつく。
「おい、さっきの男だ」
「何モンなんだアイツ……」
マルクエンを見ると冒険者たちは口々に言っていた。そんな中、ラミッタとマルクエンの元に老人の男が歩いてくる。
「先程の戦いを見ていました。ラミッタさんは流石の活躍で。そして、そちらの男性は……?」
老人でありながら鋭い眼光でマルクエンをちらりと見る。
「私は、マルクエン・クライスと申します。イーヌ王国で騎士を務めています」
「イーヌ王国……。あぁ、ラミッタさんが前に仰っていたお国ですか」
「宿敵、ギルドマスター殿も交えて話がしたいんだけど。我々が置かれた状況についてね」
ラミッタが言うと、マルクエンは頷いた。今はそれしか選択肢が無いだろう。
「わかった」
ギルドマスターに付いていくと、二人は奥の応接室へと案内された。
「どうぞ、おかけ下さい」
マルクエンとラミッタはギルドマスターの対面にあるソファに隣同士で座る。マルクエンはラミッタの顔をちらりと流し見た。
あの戦場でしか会わなかった彼女が隣で座っているというのは何とも奇妙な感覚だ。
そして、そのラミッタが話し始める。
「さて、私は長い話が苦手だから単刀直入に言うわ宿敵。今いるこの世界は、私達がいた世界と別の世界なのよ」
真面目に話す顔を見て、冗談ではないのだろうとマルクエンは思ったが、理解が追いつかない。
マルクエンは動揺して言った。同じ様に焦るラミッタも言葉を返す。
「いや、まって、宿敵、なんでアンタがここに!?」
互いに混乱し、上手く言葉が出て来ない。代わりにシヘンがマルクエンに声を掛けた。
「お知り合いなんですか?」
「い、いえ、知り合いというか、知ってはいるのですが」
「えー、何スか? もしかして痴話喧嘩とかー?」
ケイはにやにや笑いながら言った。マルクエンは顔を赤くして言葉を返す。
「いや、決してそんなものでは」
そんなやり取りをしていると、村人が血相を変えて冒険者ギルドに入ってきた。
「た、大変だ!! ゴブリンと魔物の群れが村に襲いかかってきた!!」
その言葉を聞くと、ラミッタは一気に凛とした顔になり、外へと飛び出す。
「ま、待てラミッタ!!」
マルクエンもその後を追って村の外へと走っていく。
一緒に付いてきたシヘンとケイはその光景を見て絶望した。
「な、なんスかこの数は!!」
思わずケイはそう言う。百にも及ぶゴブリンと、その後ろにはカニや犬、カマキリの魔物が続いていた。
村には衛兵が三人いるが、とても太刀打ちできないだろう。それどころか、村にいる冒険者達を合わせても無理だ。シヘンは杖を強く握ってポツリと言う。
「さっきのゴブリンは……、もしかして先遣隊だったのでしょうか」
「そうかもしれませんね」
マルクエンが大剣を引き抜いてシヘンの言葉に答える。その正面ではラミッタが魔物の群れと対峙し、振り返らずに言った。
「宿敵!! 一時休戦よ!! アイツ等をやるわ!!」
「あぁ、分かった!!」
その提案にマルクエンは同意し、二人は魔物の群れに走っていく。
「マルクエンさん!! いくらマルクエンさんが強くてもこの数は!!」
シヘンは止めようとマルクエンの背中に叫ぶが、止まらない。
敵に近づいたラミッタは炎の玉を左手から打ち出す。着弾すると、そこを中心に大きな爆発が起きた。吹き飛ぶゴブリン達。続いて雷の魔法で感電させ絶命させる。
「うおおおおお!!!」
雄叫びを上げながらマルクエンはまるで小枝を振り回すかのように大剣を振るい、次々とゴブリンと魔物を切り裂いていく。
冒険者も衛兵も、その圧倒的な力を眺めることしか出来なかった。
ものの十分程度で村を襲撃した群れは壊滅してしまう。皆、言葉を失っていたが、ケイが最初に言葉を口に出す。
「マジか、マジっスか!?」
白昼夢のような光景にそんな感想しか出てこなかった。
だが、段々と状況を理解した者達から歓声が上がる。そんな注目の的であるラミッタはマルクエンに声を掛けた。
「どうやら、亡霊じゃないみたいね」
「お前こそ、本物みたいだな」
二人は互いにニヤリと笑い顔を見合わせた。
「また一戦やり合いたいものだけど、宿敵。あなたはこの世界に来たばかりかしら?」
この世界という言葉が気にかかったが、マルクエンは言葉を返す。
「あぁ、気付いたら森の中で寝ていた」
「私が色々説明してあげるわ」
村へと歩みだすラミッタの後を、マルクエンは剣を仕舞って着いていく。
「ラミッタ殿、流石でした。本来であれば我々衛兵が戦わなければならないものを……、情けない」
「いえ、良いのですよ」
衛兵に笑顔でラミッタは返事をする。
「それで、そちらの方は冒険者でしょうか?」
「いや、昔ちょっとありましてね」
適当にはぐらかしてラミッタは冒険者ギルドに向かう。マルクエンの元にシヘンとケイもやって来た。
「マルクエンさん、やるっスねぇー!!」
ケイに言われると、マルクエンは頭をかいた。
「そんな、大したことではありませんよ」
「マルクエンさん、お怪我は!?」
「シヘンさん。お気遣いありがとうございます。怪我はありませんよ」
あんな大群相手で傷一つ無いことに、シヘンは驚いていた。冒険者ギルドに戻ると、中はざわつく。
「おい、さっきの男だ」
「何モンなんだアイツ……」
マルクエンを見ると冒険者たちは口々に言っていた。そんな中、ラミッタとマルクエンの元に老人の男が歩いてくる。
「先程の戦いを見ていました。ラミッタさんは流石の活躍で。そして、そちらの男性は……?」
老人でありながら鋭い眼光でマルクエンをちらりと見る。
「私は、マルクエン・クライスと申します。イーヌ王国で騎士を務めています」
「イーヌ王国……。あぁ、ラミッタさんが前に仰っていたお国ですか」
「宿敵、ギルドマスター殿も交えて話がしたいんだけど。我々が置かれた状況についてね」
ラミッタが言うと、マルクエンは頷いた。今はそれしか選択肢が無いだろう。
「わかった」
ギルドマスターに付いていくと、二人は奥の応接室へと案内された。
「どうぞ、おかけ下さい」
マルクエンとラミッタはギルドマスターの対面にあるソファに隣同士で座る。マルクエンはラミッタの顔をちらりと流し見た。
あの戦場でしか会わなかった彼女が隣で座っているというのは何とも奇妙な感覚だ。
そして、そのラミッタが話し始める。
「さて、私は長い話が苦手だから単刀直入に言うわ宿敵。今いるこの世界は、私達がいた世界と別の世界なのよ」
真面目に話す顔を見て、冗談ではないのだろうとマルクエンは思ったが、理解が追いつかない。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】ちびっこ錬金術師は愛される
あろえ
ファンタジー
「もう大丈夫だから。もう、大丈夫だから……」
生死を彷徨い続けた子供のジルは、献身的に看病してくれた姉エリスと、エリクサーを譲ってくれた錬金術師アーニャのおかげで、苦しめられた呪いから解放される。
三年にわたって寝込み続けたジルは、その間に蘇った前世の記憶を夢だと勘違いした。朧げな記憶には、不器用な父親と料理を作った思い出しかないものの、料理と錬金術の作業が似ていることから、恩を返すために錬金術師を目指す。
しかし、錬金術ギルドで試験を受けていると、エリクサーにまつわる不思議な疑問が浮かび上がってきて……。
これは、『ありがとう』を形にしようと思うジルが、錬金術師アーニャにリードされ、無邪気な心でアイテムを作り始めるハートフルストーリー!
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる