12 / 33
カワジ、卒倒する
12
しおりを挟む姐さまの予言なる言葉にも、カップルにもカワジは興奮しまくりだ。早く早くと急かすようにその場でぴょんぴょん跳ねる。
「ほれ、二人の距離が近いから壁ドン以上。つまりゼロ距離までいくかもしれん」
「ゼロ距離って?」
「キッスっというやつだ。ほれ、口と口が」
「接吻だ」
「接吻」
「接吻」
アシュラの説明が入る。
「そうそう。昔でいう接吻だ。口と口をぶちゅうとくっつけるやつだ。あれで愛の重さを測るのじゃ」
「ああ、夜道で見たことがある。それに、たまに園児たちが『チュッ』といってしてたりする」
「そう、それだ。今はちまたではキスというらしい」
「さすが、座敷童子の姐さまです。勉強になります」
「ふふふっ。これからそれをかますぞ」
「こんな白昼堂々と。大人が?!」
ひゃーっ、とよくわからないなりに頬に手を当てカワジは照れて見せる。
座敷童子がほほほっと優美に「それが流行りというやつじゃ」と笑い、ちろりと男を面白そうに見上げた。
「それは流行りとは言わないだろう。最近みたやつは物陰にかくれてやっておったで。相変わらず、座敷童子はせっかちだな」
ここでマンが意見を述べる。物陰でやるのが風情だというのに、恥じらいがあってこそだろうとぶつぶつと呟く。
「それはそれで奥に連れ込まれてというのもいいがの。今はまさに絶好のタイミングだろう。彼女も期待しておる」
「いや、そうは思わん。さすがにここは人が多すぎる。店員も忙しく動き回っているし落ち着かない」
「マンは古いのお。スリルを味わうというのも恋愛にとってスパイスだ。この落ち着かないなかで意識しあい、そこでぶちゅうとかませば忘れない思い出。イチコロだ」
「だとしても、始めからぶちゅうとは品がないだろう」
「押しも必要だと読んだぞ?」
やいやいと、するしない、品があるない、と賑やかにテーブルの周囲を囲む妖たち。とりあえず、何か動くことが前提で白熱した会話が飛び交う。
その時、眼鏡野獣が彼女の手を掴んだ。
妖たちの視線が一斉に集まる。
「ひゃぁぁ」
「動くぞ」
「どうでるかの?」
「…………」
「……」
「……」
コクリと息を飲んだ。四妖はじっと見守り、男の行動を待つ。男は彼女の手を掴んだまま動かない。
まだ、動かない。
まだ、まだ、動かない。
「まだかっ!!」
「……動かぬのぉ。もしや、これは、焦らしプレイというやつなのかもしれぬ」
痺れを切らせたマンが叫んだので、座敷童子が乙女脳で解説する。
「これが焦らしプレイ!!」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
貧乏神の嫁入り
石田空
キャラ文芸
先祖が貧乏神のせいで、どれだけ事業を起こしても失敗ばかりしている中村家。
この年もめでたく御店を売りに出すことになり、長屋生活が終わらないと嘆いているいろりの元に、一発逆転の縁談の話が舞い込んだ。
風水師として名を馳せる鎮目家に、ぜひともと呼ばれたのだ。
貧乏神の末裔だけど受け入れてもらえるかしらと思いながらウキウキで嫁入りしたら……鎮目家の虚弱体質な跡取りのもとに嫁入りしろという。
貧乏神なのに、虚弱体質な旦那様の元に嫁いで大丈夫?
いろりと桃矢のおかしなおかしな夫婦愛。
*カクヨム、エブリスタにも掲載中。
闇に蠢く
野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。
響紀は女の手にかかり、命を落とす。
さらに奈央も狙われて……
イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様
※無断転載等不可
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
CODE:HEXA
青出 風太
キャラ文芸
舞台は近未来の日本。
AI技術の発展によってAIを搭載したロボットの社会進出が進む中、発展の陰に隠された事故は多くの孤児を生んでいた。
孤児である主人公の吹雪六花はAIの暴走を阻止する組織の一員として暗躍する。
※「小説家になろう」「カクヨム」の方にも投稿しています。
※毎週金曜日の投稿を予定しています。変更の可能性があります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
失恋少女と狐の見廻り
紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。
人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。
一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか?
不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」
時守家の秘密
景綱
キャラ文芸
時守家には代々伝わる秘密があるらしい。
その秘密を知ることができるのは後継者ただひとり。
必ずしも親から子へ引き継がれるわけではない。能力ある者に引き継がれていく。
その引き継がれていく秘密とは、いったいなんなのか。
『時歪(ときひずみ)の時計』というものにどうやら時守家の秘密が隠されているらしいが……。
そこには物の怪の影もあるとかないとか。
謎多き時守家の行く末はいかに。
引き継ぐ者の名は、時守彰俊。霊感の強い者。
毒舌付喪神と二重人格の座敷童子猫も。
*エブリスタで書いたいくつかの短編を改稿して連作短編としたものです。
(座敷童子猫が登場するのですが、このキャラをエブリスタで投稿した時と変えています。基本的な内容は変わりありませんが結構加筆修正していますのでよろしくお願いします)
お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる