109 / 166
課題とお野菜ズ
ベジロード店①
しおりを挟む友人たちのやり取りに、少し落ち込み気味だった気分が彼女たちのおかげでずいぶん良くなった。
「ポーズにリクエストとかあれば、伝えるだけは伝えてみるわよ」
「リクエスト?」
「うん。淡々と同じものを作る子もいれば、新しいポーズを模索する子もいるから、もしかしたらノリノリで作ってくれるかも」
もともとフィギュアは、器用なものが多く暇を持て余したお野菜たちが土粘土で遊んで作っていたことと、前世のガチャブームと私のお野菜愛から同志がいたらもしかしたら受けるかもと思ってリヤーフに提案したものだ。
フィギュアはお野菜たちが遊びの延長で作るのでどれひとつとして同じ形のものはなく、たまに面白いポーズのものもあったりと見ているだけで楽しい。
加工は火や風を使えば短時間でできるし、魔力は一定量いるがそこまで高度な魔法ではない。
王都には魔法使いが多い分様々な事情でくすぶって仕事にあぶれている者も多く、補助食品のこともあったので従業員を増やすべく真面目な者を雇い生産体制もばっちりだ。
そして、付加価値としてカブちゃんズとの握手。なので、レア感もありガチャとしての収益も跳ねに跳ねた。
もともとお試しとして期間限定で出したのだが、続くかはわからないことがさらに売り上げを伸ばしている要素と思われる。
私的にはお野菜たちに無理はしてほしくないので、物がなくなれば終ればいいくらいの感覚だ。
今のところポーズをとったり形を作ることが楽しいお野菜たちが一定数おり、安定して作ることができているのでもうしばらくは続きそうだし、これだけ気に入ってくれているのなら何か要望があれば伝えてみるのもいい。
「何その神の御言葉! ですが、まだまだ揃えきれてないから大体見てから言わせてもらうわ。あと、実際にお野菜たちが作っているって知らせたらもっと人が押し寄せるんじゃないかしら?」
「うーん。公に発表してもいいのだけど、これはあくまでカブちゃんズと握手したいといった要望が多くて考えたことだから。こんなに人気になると思わなかったし、それにこれ以上人気になるのはちょっとね。こっちがメインになっても困るし」
よく売れる商品は予約以外の購入の上限を決めさせてもらう代わりに、野菜や栄養補助食品と新しい商品、そして接客カブちゃんズにガチャと全体的に種類を増やしエンターテイメント性を持たせたのだ。
ガチャがメインになってしまってはスタッフの増員もしなければならないし、やはりメインは商品を売ることなのでこれ以上個数を増やすつもりはない。
「加減が難しいのね」
「そもそも、商品に個数制限をかけたのも満遍なく欲しい人に行きわたるようにと思って始めたことだから、これに関してもたくさんの人に楽しんでほしいかな」
こちらも従業員を多く抱えているので利益も重要視してはいるけれど、お野菜たちの美味しさを伝えたいが前提にあるので何事もほどほどがいい。
「一時期、商品の売り切れが続いてましたものね。詳しくは知りませんけれど、そのときにいろいろあったのでしょう?」
「まあ、いろいろ?」
「やっぱり。フロンティアは何も言わなかったから、ある日開いたと思ったらガラッと売り方も変わって新鮮なお野菜も売るようになっていて驚きました。しかも、お野菜たちまで接客しているなんてもう癒やしスポットですわ」
妨害工作を行っていた者の目的は、客足を途絶えさせることや悪い噂を流すことで顧客からの信頼を落とすこと。
最初がただの売り上げ貢献というのも、警戒させないようにと考えてのことだったのだそうだ。
ベジロード店を含めたシュタイン商会の南部での活動において、今までにも商品の輸送ルートを邪魔されたりとさまざまな妨害に遭っていた。
主にベジロード関係の妨害がひどかったようで、簡単な報告は聞いていたが思ったよりも多岐にわたり邪魔されており、そのたびにリヤーフが乗り切り倍返しをしていたようだ。
今まで努力せずとも甘い汁を吸い続けていた南部貴族や関係者からすれば、北部の元貧乏伯爵家で王太子殿下の婚約者となった者が関係する商家が、王都で活躍するのが目障りで仕方がないようだ。
着々と足場を固めて勢力を見せるので、焦ってあらゆる方向から仕掛けてきたらしい。
ありきたりと言えばありきたりな理由であるが、されるほうはたまったものではない。
細部の報告は伯爵である父にはしていたようだが、学生である私には余計な心配はかけないでおこうと話は回ってこなかった。
どうしてわかったかというと、前回にちょろちょろ漏れ出た情報を聞き逃さず突っ込んでいったら仕方なく白状したからだ。
商売のことはリヤーフの管轄であるし、私が知ったところで何ができるかと言われれば何もできない。
商売人には商売人のルールや大人の事情があり、まだ私に隠していることもあるとは思いながらも、そのときはひとまず呑み込んだ。
だけど、数々の妨害の酷さは解決したことであったとしても、いまだに私は腹が立っていた。
1
お気に入りに追加
5,573
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。