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課題とお野菜ズ
ミニチュア②
しおりを挟む店への妨害はリヤーフたちの努力のおかげもあって、ひとまず乗り越えたのではないかと感じている。
図らずしも店への貢献もできているし、最終的には良い方向に向かっているので良かった。
身近なリアルな反応に、あれやこれやの気苦労が少し報われた気がした。
「すごいわね。お店で問題が起こって一度店を閉めると聞いたときは心配したけれど、リニューアルがこんなに当たるなんて」
「ええ。お野菜たちは美味しくて商品には絶対の自信があったから大丈夫だとは思ってはいたけど、変わらず買いに来てくれるお客様がいてくださってとってもありがたいわ」
一度ついたマイナスのイメージは払拭するのには時間がかかる。対応力が問われ短期間でどれだけのことをできるかが鍵だった。
「それにしても次から次へとアイディアが浮かぶのには感心するわ」
アイディアというか、前世の記憶でやってみたことがこちらにたまたま受けているだけである。
こういうのを転生特典というのだろうか。
「うーん。もともとお野菜たちは売り出す予定だったし、せっかくなら対策しつついろいろしてみたくなっちゃってアイディアというほどのことじゃないの。協力してくれている商会の者はノリがいいし、お野菜たちも含めとっても協力的だから、再オープンまであっという間だったわ」
「やっぱりフロンティアのアイディアなんですね?」
同じ北部の子爵令嬢であるバルバラが、指の先で優しくミニチュアを撫でながら私に期待を込めた眼差しを向けた。
彼女の手には人参とサツマイモ、レンコンのミニチュアフィギュアが乗っている。果物とか、ほかの種類もたくさんあるのに見事に根菜ばかりだ。
「ええ。お野菜たちと土いじりしていたときに、何体か器用な子がいるからそういうのを形にするのもいいかと思って。遊びでやらせてみたらなかなかの出来だったから作って……」
みたのだけど、と言い切る前にバルバラやローレルたちがキャァーと興奮した声を上げた。
きらきら、きらきらと非常に期待のこもった眼差しで見つめられ、ローレルが抑えきれないとばかりにふさがっていない私の片方の手をがしっと掴む。
「もしかして、このミニチュアはお野菜ちゃんたちが作ってるのかしら?」
「そうなの。だから、お野菜たちの気分で個数は変わるから日でできる数を限定して」
るのだけど、とまた最後まで話す前に興奮する友人たち。
「まぁー! まぁー、まぁー。まぁー!!!!」
「貴重ですわ」
すると、餌を見つけた動物のようにキラリンと目を輝かせ、ぐいっと詰め寄ってくるローレルたち。ローレルに至ってはすでに手を捕まえられているので、鼻息が届くほど近くに顔がある。
あまりの勢いに、思わず仰け反り私は微苦笑する。ここまで顕著な反応があるとは思いもよらなかった。
「お、落ちついて」
「これは落ちついていられませんわ。小さな手で作っている姿とか想像するだけで、あっ、ちょっと鼻血が……大丈夫ですわね。すみません。興奮がおさまりません。ますます愛おしいお野菜ちゃんたち。可愛い模型まで作れるなんてさすがですわ!」
途中、握っていた手に気づいて「ごめんなさい」と手を離し、ハンカチで鼻を抑えながらローレルがぽわんぽわんと髪を揺らす。
最後は、声に喜色を乗せてうっとりと思い馳せるようにミニチュアフィギュアのお野菜ズを見つめた。
「はっ。こうしてはいられません。しっかりじっくり観察すべきだわ」
「そうよね。まさかお野菜ちゃんたちが作っているなんて思いもしなかったもの。なんて尊いのかしら」
頬をピンクに染めながらまたお互いに見せ合い、この足の角度がとか、葉の形もそれぞれ違うだとか、見比べてわいわいと興奮の声を上げる。
「この土下座バージョンとか面白いですわ。何に謝っているのかしら?」
「こっちは両手上げて喜びのポーズです。これ見るとなんだか笑えて気持ちが軽くなるんですよね」
「こちらの棒立ちのロマネスコも可愛いですわ」
「本当にいろいろなお野菜とポーズがあってどれも味わい深いです」
うふふ、きゃははっと貴族のお嬢様が頬を染めて話題が尽きないとばかりに眺める視線の先に、可愛いお野菜ズのミニチュアフィギュア。
これはお野菜たちに報告しなければ。こんなに楽しそうに話をしているのを聞けるなんて、聞いているこちらも楽しくなる。
「気に入ってもらえてとても嬉しいわ」
私は、にこにこにこと楽しげに語り合う友人たちを眺めた。
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