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課題とお野菜ズ
ミニチュア①
しおりを挟む常日頃のお野菜たちの動きを模したミニチュアたち。手足の動きやくびれなどそれぞれ違って、見ているだけで頬が緩む。
「こんなにも!?」
私が提案して作られたものなので知っているものだが、これに関しては宣伝していない。
なのに、友人たちがひっそりと集めてくれている事実に感動する。
しかも持ち歩いているとか。貴族令嬢としては微妙であるが、お野菜ラブの私からしたらとっても嬉しい。
私はほこほことした気持ちが抑えきれず、満面の笑みを浮かべた。
「みんな、持ってくれてるのね」
「もちろんですわ! なんてたってカブちゃんズとの握手がかかっておりますし、それがなくてもとっても可愛いですから、ついつい集めたくなってしまいます。ほら、これも持っているんですよ。あと、寮にもいくつか」
「そんなに?」
「一日一回限定なので、まだまだ集められてないのですけど……」
恥ずかしそうに頬を染めるローレル。
そこで頬を染める意味はわからないが、気に入ってくれているのは伝わった。そして、制作にあたる過程を思うとやはり嬉しくて、私はニンマリしてしまう。
単純というなかれ。この切り替えの良さが、自分でもいい仕事をしていると思うときもあるのでいいのだ。
カブちゃんズの握手とは、王都で育てていた野菜を売り出す際に、カブちゃんズを看板娘ならぬ看板野菜にしたところ大反響となったことから始まった。
人気者となったカブちゃんズの握手を求める女性も出てきて、それに目をつけたリヤーフにちょっと待ったをかけて、お野菜たちを誰かれ構わず触らせるのも心配だった私が提案したものだ。
日に人数を決めてカブちゃんズと握手する権利を、ガチャで当たれば獲得できるというシステムだ。
ここでは回すのではなくてボタンを押すだけなのだが、何が出てくるのかわからない点は一緒。
中身はまだこちらに出せていない伯爵領の野菜なども含めたミニチュアの模型で、カブが出れば当たりで握手可能というものだ。
「平日は授業があるのにすごいわ」
「いろいろ集めたくなるんですもの。従者にお願いしたものもありますから」
「そこまで?」
「ええ。できるだけ自分で足を運んで購入したいのですけど、揃えるには時間があまりないですから。従者も密かに楽しんでいますわ。運次第というところがすっごく面白くて嵌るのね」
ローレルたちが騒ぐのに、ミシェルもうんうんと頷く。
「私もひとつだけど持ってるわよ。さすがに持ち歩いてはいないけれど、集めて並べたくなる可愛さだと思うわ」
「ミシェルも持ってくれてるんだ」
「思わず手を伸ばしてしまったわ。なんだかやりたくなったのよね」
そう言いながら、ローレルが持っているミニチュアをミシェルはちょいちょいと突く。
それに友人たちはうんうんと頷き、妙に誇らしげに声を上げる。
「そうなんです。お金を渡してボタンを押すだけで、何が出るかわからないっていうのが楽しいわよね。当たりは握手券だけど、外れても可愛いから持ってないお野や果物が出ると嬉しいわ」
「そうなのよね。みんな嬉々としてやっているのを見ると、私もって思ってついつい並んでしまったわ。今では嬉々としてやる側ですけれど」
「噂が広まってとても人気になったわよね。私の友人はそれが目当てで行ったのだけど品切れになっていたって言ってたわ」
私は身近で起こっていた反響に、ふふふっと笑みが溢れることを止められない。
「そうね。今では午前中でなくなる日もあると聞いているわ。作れる数も決まっているからどうしてもそうなっちゃうのだけど」
せっかく足を運んでもらったのに物がなかったミシェルの友人には申し訳ないけれど、それだけ楽しみにしてもらえていること自体はすっごくすっごく嬉しい。
ベジロード店の商品の買い占めなどの問題発生を受けて、試行錯誤した結果できたミニチュアフィギュアであるが、当初はノリの部分もあり一日に十人くらいの人がやってくれたら楽しいのではと思っていたくらいである。
新しいことをするのは緊張したが、思った以上の効果とカブちゃんズがむやみやたらに触られずに済んでほっとしている。
自分のせいでお店やお野菜たちに風評被害の影響が出ることが怖かったので、うまく盛り返せたことは私にとってだいぶ気持ちが楽になった。
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