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不調と新たな問題

新たな問題②

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「そうですね。そろそろお嬢様のお耳に入れておくのが良いと判断し、ちょうどここも完成いたしましたので一度ご招待をと思いまして。そう緊張して堅くなるような話ではありませんからご安心ください」
「わかったわ」
「さっそくですが、以前からちらほらと商品が傷んでいるとクレームがきていたのですが、とうとうベジロードの商品を食べて腹痛を起こしたという報告がありました」

 淡々と告げられた内容に、どんな話をされるのか緊張していた私はその内容に思わず、「は?」と声を上げた。
 驚きすぎて目を見開いた私はリヤーフを凝視し、何度考えても信じられないと首を振った。

「それはありえないわ」
「その反応、お嬢様らしくていいですねー」
「もっと落ち込むかと思っていたが」

 にこにこと笑うリヤーフの言葉に、ふむと楽しげな声を上げたアンドリュー。
 そこでなぜ楽しそうな声音なのかはわからないが、心配をしてくれていたのは伝わってくる。

「落ち込むも何もおかしいですから」
「そうだな」

 王都での活動は、アンドリューの婚約者となってからは大きな動きに関しては王子にも報告している。
 驚きの理由を的確に理解してもらってなによりだ。

 リヤーフも当然とばかりに頷き、皮肉な口調で告げたあとにこにこといつも以上に笑顔の上乗せで笑う。
 下手をすれば名誉棄損で商売が成り立たなくなるクレームは、表情は笑っているが腹に据えかねているのだろう。

「そうですよね。殿下のお膝元で私たちが何も対策していないと思って侮られていることには腹が立ちますが、おかげでいろいろつかめましたし」
「こちらの設定した期限内に食べていただけたら大丈夫なはずだものね。体調によりそういった症状が出るのは個人の問題ですからそこまではねぇ」

 伯爵領、そして王都でのお野菜ズの鮮度は高く一般的な野菜よりもずいぶん長持ちする。しかも栄養価が高い。
 商品にするにあたり、前世での賞味期限、消費期限というものがこちらになかったので、売る以上そういったものが気になり検討打診した。
 そのため、ベジロードの商品はしっかりと隊長たちにも相談し期限や栄養価を把握した上で販売している。

 製造工程で常にお野菜たちが関わっているので腐りようがないというか、正直スーパーな野菜たちのおかげでそちらのほうはずいぶん助けられているのだ。
 さらに保たせたいものは、多少値段は高くなっても魔法付与を施し賞味期限を延ばしたりと徹底管理を行っている。

 その上で、その方法を農務省に登録し認可されている今、そこは揺るがないものと認定されている。
 前世よりさらに徹底的な管理がなされているのだ。
 魔法万歳。そして魔力の通ったお野菜ズ様々だ。

 魔法のことといえば魔法省がこの世界で常識なのだが、別にそこでの申請が決まりというわけではないと聞き、農産業のことなので今回は農務省で特許を取得した。
 なので、もしかしたらその辺りのことを知らない相手が仕掛けてきたのかもしれない。

「はい。商品すべてに管理番号を振っているので、売れた時期の目安と消費していただく時期の目安はわかっています。売る際にも期限を含めお話しておりますので」
「そうよね」
「なので悪質きわまりないクレーマーはしっかりこちらで対処しております」
「さすがね」

 やられる前にやらないとすぐに陥れられる。
 そういったことを理解しているリヤーフは、たとえ元は上客であろうが敵と見做みなすとあっさりと笑顔を脱ぎ去ってしまうらしい。
 実際にそのような現場を私は見たことはないが、多くの従業員を抱えている身ではそういった厳しさも必要なのだろう。

「買い占めもやはり裏がありました。殿下からいただいた情報のおかげで裏で糸を引いている者たちがいることがわかりました」
「たち?」

 完売の経緯からして一人ではないだろうと思っていたけれど、複数の人物をあれからもう突き止めたというのだろうか。

「はい。今回なかなか尻尾を掴めなかったのは、裏を引く複数人とさらにその手下、すぐに切れるよう理由など知らされずお金に目が眩んで実行した者たち。末端はランダムでそれぞれの繋がりがないため、割り出すのに苦労しました。ですが、裏で糸を引いている者は憶測の域を出ておらず証拠はありません」
「ないけど、そうだろうというだけの理由はあるということね」
「はい」

 そこで私はアンドリューを見た。
 ん? と眉を上げるその表情は涼しげで、この件がなければ背後で手を貸してくれていることなど私に知らせなかっただろう。

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