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婚約と俺様王子
無慈悲な俺様②
しおりを挟む「覗くやつが悪い」
「まぁ、そうなんですけど。そうじゃなくって」
あわあわする私に、アンドリューは綺麗な笑みを浮かべた。
「ティアを困らせていいのは俺だけだ。だから、これは保険。ティアのことをよく見てるやつで、俺のものだとわかったら手を引くならいい。だが、それでもちょっかいかけてくるやつは、な」
にこにこと笑みを浮かべながら恐ろしいことを告げるアンドリューは、その話を続ける気がないのか、その手が下のほうへと向かっていく。
――ああ、もうっ!
そして、私に散々甘い声を上げさせたあと、王子は言い放った。
「ティア。最後まではしない。だけど、今日はもっと近いことをしようか」
「…………」
もっと近いことって何?
アンドリューにされたことで、思考がふわふわしながらうすらぼんやり思う。
だって、ずっと近いことばかりだ。散々私を喘がすだけ喘がせて、決して、アンドリューは最後までしない。
初めは私の気持ちがついてくるのを待って、ときには強引に、そしてゆっくりとアンドリューの手のひらの上で徐々にエッチなことに慣らされてきた。
王子が私に触れて興奮しているのを知っているのに、何度かそのことに触れてみるが淡い笑顔で首を振られるだけでここまできた。
ここ最近それがもどかしくもあって、毎回初めての痛みを思うとすくむ気持ちはあるけれど、我慢されるくらいなら一層強引に奪ってくれたらいいとさえ思うようになった。
「ティア?」
「どうして最後までしないんですか?」
先日、次の段階とは言っていたはずだ。
だから、今日は予想外であったけれど、ベッドに押し倒されたときには初めてを捧げる覚悟もどこかでしていた。なのに、まだ奪わないと言われる。
今太ももに触れているものにまったく気づかないほど鈍感でもないし、それが何を意味しているかなんてわかりきっている。
初心な私でもわかるほど、アンドリューの身体は私の身体に触れるたびに私が欲しいとわかりやすく反応していた。
これも前世の情報だけど、我慢するほうもだいぶつらいというのは知っている。
しかも、何度も何度も我慢させている自覚はあって、こっちが良いって言ってしまいたいほど、アンドリューは私の快楽を優先する。
会えば高確率で仕掛けられるけれど、決して己の欲を優先させることをしないアンドリューだから、本気で求められたときには私はいつでも差し出す覚悟はしていた。
だが、今日も最後まではしないらしい。
こちらはある程度覚悟はついているのに、なんだか惨めな気持ちにもなった。
私を感じさせるだけ感じさせて、自分は何もアンドリューにしてあげることができなくて情けなくもなる。
自分でもよくわからない感情を持て余し、どうしたらいいのかととても心ともなくなって縋るようにアンドリューを見つめた。
綺麗な瞳で見つめかえされ、つぅっと涙が出る。
「ティア、泣いてるのか? どうした?」
「……だって、アンディは欲しくない? いつも私ばっかりで……寂しい」
口に出して、ああ、自分は寂しかったのかと気づく。
アンドリューが私を満たしたいと思う気持ちと同じように、私だって多忙な王子を満たしてできるなら自分が癒やしたい。
それをさせてくれないのが寂しくて、できないのが悔しくて惨めでもあるのだ。
きゅっと唇を噛む。
ぽろりと落ちた涙は、自分の意思と関係なくぽろりぽろりと流れ落ちた。
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