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婚約と俺様王子
腹黒王子の婚約者になりました③
しおりを挟む「ティア。ずいぶん可愛い反応だな」
うっきゃぁぁ~っ!!
日頃されていることとか、いろいろ想像したのがバレている。穴掘って入りたい。
「ええっと、その……」
「わかってる。ティアは俺に迫られるのは嫌じゃないもんな?」
くっ……、鬼畜王子めっ。
乙女に向かって思っててもそんなことを言うもんではありません。
実に楽しそうに笑う王子をきっと睨みつけると、今度はふわりと微笑まれた。
「ティアが俺を好きってわかって嬉しい。俺にこうされて嫌ではないから余計に恥ずかしいってなってるところもいい」
だ・か・ら、俺様王子ぃ~。気づいていても口にするものではないんだって。
そう抗議したいけれど、柔らかな表情で期待のこもった眼差しを向けられ、私は否定の言葉は言えなくなった。
いろいろな羞恥で耳まで熱くなって、ぷしゅうーっと湯気が出そうだ。それをがっちり見られながら私はうっすらと涙の膜を張った瞳で睨みつけた。
「アンディは意地悪です」
「可愛がっているだけだ。ティアだけが俺をこんなに楽しませて和ませてくれるのだから、俺からこの時間を取らないでいてほしいな」
そう言いながらアンドリューは私の頬をするりと撫で上げると、優しく頭を抱き込むように抱きしめてきた。
「……アンディ」
弱々しく王子の名を呼ぶ自分の声に、知らず知らずに甘さが混じる。
王太子としての重責に追われている人の、爽やかな王子の装備仮面をなかなか外せない場所に身を置いている人の、愛情表現だと言われればできるだけ受け止めたいと気持ちが強くなる。
私が自由に動いていてもおおらかに受け止め、ときには力強く後押ししてくれる頼りになる人。
その上、楽しそうにそばで笑ってくれ、好きだと言って求めてくる姿を見ると、多少の意地悪も愛おしい。
「ティア」
ぐるぐるとそれでいて温かい気持ちにむむぅっと考え込んでいると、誘うように名を呼ばれ、下げていた視線を上げた。
困ったような顔で笑っているアンドリューと視線が合う。
「アンディ、どうした……っ、ひゃぁ」
それはどういった表情なのかと心配したのに、ぺろりと顎を舐められ色気もへったくれもない声が出た。
「ふっ、その声」
「もうっ、アンディ」
それさえも楽しげに見つめられ、柔らかに双眸が細まる。好かれているのだとわかる優しい表情に照れてしまう。
「ティアが早く嫁いでくれないかと思ってね。密かに優秀なティアは学園でもいい成績を残しているし、卒業すれば妃教育も本格的になる。必要なことだとわかっているが、何もかもすっ飛ばして今すぐずっと横にいればいいってすごく思うよ」
「む、り、ですよ」
あと、密かには余計だ。
普通の魔法はそれなりに良い成績を収めているけれど、私の魔法は土系に特化して地味なので目立たないのだろう。地味すぎてほかと比べて出来がわかりにくいのが難点だ。
魔法をかけてると葉っぱがツヤツヤになったり大きくなったりはするのだけど、非常に成果がわかりにくい。
あまり大きく願って変なことになってもと思うと、余計に微量になるというか、その加減が難しい。
私としては王子との婚約で十分話題をさらったので、これ以上あまり目立つのは避けたい。
だけど、せっかく魔法が使えるのならもっとぱぁっと派手に、おおぉっと周囲が感心できるものを使用してみたい気持ちもある。難しいところだ。
「ああ。その上、北部の食料問題の貢献。よくできた婚約者だが、目立つ杭は打たれやすいから心配でならないんだ」
「……そのための護衛ですよね?」
王太子殿下の婚約者となるということは、祝福してくれる人たちばかりではなく、敵意をもって接してくる人物も現われる可能性があることは説明されていた。
そのための対策と配慮をしてもらっている。まったく不安がないわけではないが、信頼しているので私自身はそこまで気にしていない。
「彼らの実力は折り紙つきだ。だが、心配なのは変わらない」
「…………」
「だから、ティア、少しでも俺に馴染むように、俺が寂しくならないように触らせろ」
お、俺様~。エロ魔神~。
真面目な話をしていたのではなかった?
なぜエロモード?
「えっ。話が飛躍して理解できません!」
そうは言ってはみたけれど、私も本当はわかっている。
政敵の話などは、私の重荷になって不安にさせたらと思って気遣ってくれているので深い話はされていない。
注意は怠ってほしくはないからとたまにさらっと話題に出されるが、基本はこんな感じだ。
単にアンドリューがそうしたいというのもあるだろうけれど、王子なりの気遣いであることもわかっている。
「せっかく一緒にいるのだから、俺だけに見せるティアの反応を引き出して堪能したいに決まってるだろ?」
だからといってこの俺様発言。
攻めモードにすぐにこっちもついていけるかといえばまた別問題なわけで、アンドリューの不埒な手がスカートの下に潜り込んでこようとしたので私はその手をぎゅっと挟み込んだ。
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