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魔力検証
やっぱりこうなります①
しおりを挟む隊長たちのサプライズにほっこりと、そして改めて頼もしさを感じながらとうとう別れのとき。
「シュクリュ。隊長、そしてみんな~。いつも頑張ってくれてありがとう。そして、ダンスも本当にすごくて感動したわ。これからも伯爵領をよろしくね」
『わふぅ』
尻尾を大きく振り飛びついてくるシュクリュの横で、ぴしっと敬礼する隊長。そよそよそよとシュクリュが作る風圧でリボンと葉っぱがなびく。
野菜たちが手を振り、足を振り、お尻を振り、それぞれ体を使って表現してくれているのに対して、私は大きく手を振った。
隊長の貴重なリボン姿を目に焼き付け、シュクリュを撫で回してもふもふを堪能し、私は気合をいれる。
このたびの帰省は非常に充実した日々で、王都に帰ってもさらに頑張るためのエネルギーをたくさんもらい、私はやる気に満ち溢れていた。
種とよだれと自分の魔力で、これから王都で野菜たちがどのように育つか楽しみだし、今なら俺様王子とも渡り合えるかもってくらい満ち満ちている。
これは今が勝負時だと、よっしと気合いを入れ私はダッシュで姉に駆け寄った。
「ヴィア姉さまともご一緒できて楽しかったです」
「そうね。久しぶりに一緒に話せて楽しかったわ」
「私もです。帰りもたくさんお話したいです」
姉の手を掴み、行きに乗ってきた王家御用達ではないほうの馬車へと歩こうと促す。
「そう」
ね、とシルヴィアが頷く前に遮る声。
「どこに行くんだ?」
「どこ行くのですか?」
すぐさま私はアンドリューに腕を掴まれぐいっと腰を引き寄せられ、姉は背後からオズワルドにすっぽりと抱きしめられていた。
美貌の青年たちによって、あっさりと私たち姉妹は離される。
「その、ヴィア姉さまと一緒に馬車に乗ろうと思いまして」
「却下だ」
ぴたりとくっつくアンドリューの双眸は獰猛に細められる。
にっこりと笑んでいるがぴしゃりと告げられた声音は冷ややかで、私の提案は受け入れられないと告げていた。
「ヴィア姉さま」
助けを求めるように姉を見るが、姉もしっかりとオズワルドに捕まっていてそれどころではなさそうだ。
それはそれは変な光線が出ているのではないかというくらいの笑みで、姉を落としにかかる人外的美貌を持つオズワルド。
「さて、ヴィアはこちらですよ」
「えっ。ですが」
「大丈夫です。殿下たちは今後について深くふかーく話すことがあるようです。王都に戻っても殿下の立場上夫婦の我々と違ってすぐに会って話すことは容易ではありませんので、その機会を邪魔してはいけませんしね」
「…………」
案じるようにシルヴィアに視線を向けられ、アンドリューにがっちりと腰を掴まれながら私はぶんぶんと首を振る。
話し合いなら今回は十分できた。帰りくらい今のほっこりの気持ちのまま姉と帰りたいと、うるうると瞳を潤ませて姉を見つめる。
だけど、無情にもくいっと姉はオズワルドに頬を掴まれ意識を変えさせられる。
「ヴィア。せっかく一緒にいるのに離れるなんて耐えられません。夜は別々でしたし、ここからは夫婦の時間を過ごしましょうね」
「ですが、ティアも久しぶりですし」
「伯爵領にいる間にたくさん話をしたでしょう? 今回せっかくヴィアの生まれ故郷である伯爵領に一緒に来ることができたのに少ししか夫婦の時間を持てなかったですし」
姉の頬、髪を撫でながら、表情を変えず告げるオズワルド。さらさらと髪が頬に触れ、銀の髪が艶やかに光る。
オズワルドほどの美貌となると髪が顔にかかる姿でさえ絵になりすぎて、そんな場合ではないのにほぉっと見惚れてしまった。
とん、と腰に回されていたアンドリューの手でお腹を叩かれてはっとする。
横から異様な圧を感じたので、んんっとささやかに咳払いをして口元に笑みを作ってごまかした。
今はアンドリューを見たら駄目って本能が告げている。
内心ひやひやしていたら、目の前では姉夫婦が会話を続けている。
ただイチャイチャしているだけとも言うが、話の流れの決着は私にも関わってくるので成り行きを見守るしかない。
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