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魔力検証

バケツとシュクリュ②

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 行きの馬車ではどうなることかと思ったけれど、アンドリューも魔力のことは真剣に取り組んでくれる。
 こういうところはとても信頼できる。腹黒俺様だけではない姿を見るたびに、ゲームの中の人から等身大の王子としての存在感が増していった。

 必要なことは伝えられる範囲であとで教えてくれると信じ、まずはと目の前のことに向き合う。
 隊長の指示もあるし、シュクリュに作るのも久しぶりなので美味しく食べてもらえるようにと気持ちを込めて具材を挟んだ。
 伯爵領産の野菜に肉多めとか、野菜たちもシュクリュのことを十分に理解している。

「できたわ。これをシュクリュにあげればいいのね」

 念のため確認すると、隊長が頷いた。
 そして、また抱っことばかりに腕を上げる。

「その抱っこはどんな意味があるんだ?」

 私では聞けないことを、ずばっとアンドリューが聞いてくれた。
 すると、隊長は下を指し、シュクリュを指し、私を指し、自分を指す。

 しっかり理由がある行動だということは伝わるのだが、意図がわからない。こういうときはやはり話せないのはなかなかつらい。
 そう思っていると、アンドリューが「なるほど」と頷いた。

 今ので理解できたの? スペック高いにもほどがある。
 実は密かに、隊長と俺様王子では衝突するのではと思っていたのだけど、相性は悪くないようだ。

「殿下、わかるんですか?」
「だいたいの予測があったことと、話を聞いて実際目にしてみるとな。俺の主観的希望もあるとは思うが、この結末は見てみたい」
「はぁ」
「まあ、隊長の言う通りにしてみればいい。シュクリュも逃げないのなら、それでいいのだろうし」

 アンドリューは意味深な言葉とともに、にやっと口の端を上げた。
 その表情はなんだか不安になるけれど、どんと構える王子の存在は実際に私の気持ちを軽くした。

 北部の食料問題やずいぶん規模が大きくなった事業のこともあり、魔力解明はとても重要なことで、それに一人で向き合うのと頼り甲斐のあるスペシャリストがいるのとでは心情的にまったく違う。

「ふぅ」

 大きく息を吐き出し、私をうかがいながらも尻尾をぶんぶん振っているシュクリュを見る。
 その視線は私の持つサンドウィッチ。相変わらず食いしん坊な姿に、難しく考えるのをやめた。

「シュクリュもいつも畑を守ってくれてありがとう。食べてくれる?」

 そう告げると、さらに尻尾を振りよだれを垂らす。
 すると、いつの間にか近づいていた副隊長カブたちがバケツでよだれを受け止めた。

 たらー、ぽとっ。

 キャッチ。

 だらーっ、ぽとっ。ぽとっ。

 キャーッチ、とばかりに、尻尾を振ってその勢いで垂れるよだれの方向がずれても、しっかりとよだれをバケツに入れていく。

 いぇーいとばかりに、周囲を囲んでいた野菜たちが小躍りする。
 へいっ、へいっと、右足、左足と出して角度と揃え、わさわさと葉を揺らし喜びを表現している。
 よだれキャッチに喜ぶ野菜……

「なるほどな」

 アンドリューは一人納得している。
 説明してほしいが、シュクリュが『くぅーん』とサンドウィッチを見ながら鳴いたので、私は慌てて差し出した。

 わっさわっさと振られる尻尾に、小躍りする野菜たち。
 そして、垂れるよだれをキャッチする副隊長カブたちに、また喜ぶ野菜たち。

 ぺろりと食べ終えると、すぐにもっとくれと堪えきれず垂らすよだれ。
 久しぶりなせいか、いつもよりよだれがすごいシュクリュにかわいそうなことをしていたなと思う気持ちもあるが、この状況が気になって仕方がない。

 ぽとっ。

 キャッチ。

 受け止めたカブたちはハイタッチをし合い、今度は美脚大根たちがバケツを差し出した。
 いつの間にか、バケツリレーみたいにバケツを持った主格の野菜たちが並び、美脚大根はよだれを受け止めると両手を上げて喜んでいる。
 そのそばで、堪えきれず垂れるよだれ。

 シュクリュ……、よだれで喜ばれてるけどいいの?
 小躍りやハイタッチとかされてるけど、いいの?

 異様な盛り上がりだ。
 食い意地が張りすぎだが野菜たちは喜んでるし、シュクリュもサンドウィッチを食べることができて幸せそうで、みんながハッピーではあるようだ。

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