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求婚は唐突に4

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 困って殿下の方を遠慮がちに見ると、興味深げに観察されておりました。
 はっ!! 今、気づきましたが、普段殿下が隠しておられる素の部分を見せられたのですから、なおさら逃げられないのではないでしょうか。
 むむっと眉を寄せると、二人揃って晴れやかないい笑顔を浮かべられました。

「ほお。本当に賢いな」
「ええ。私のヴィアですから」

 互いの祖父母の代に血縁者がおられるということですが、薄まりつつあっても血の繋がりを感じるタイミングです。
 続いて、オズワルド様を援護するように発せられた殿下の言葉に追い打ちをかけられます。

「ロードウェスター嬢。先ほどの話を聞かせてもらったが、あなたは確かに特筆すべきところのない伯爵家の令嬢だ。だが、あなた自身は価値がある。女性でありながら常に上位の成績を修め、先ほどの教科書にかけた保護魔法は見事だ。なにより、オズワルドが欲したご令嬢だ。それだけでも、陛下に掛け合うに値する」
「まさか」
「さすがだな。しっかり反応があると楽しいものだな。この婚約を無理いって早く認めてもらうよう手配した甲斐があるというものだ」

 内容、特に後半の言葉に驚く私に、殿下がウインクします。普段の隙のない完璧ぶりからの、気さくな感じはやはりギャップがあります。
 こういう姿も好感が持てますが、妹情報を思い出すと大丈夫だろうかと心配になります。

 私には関係ないことですので、お相手の方に羞恥まみれになるのを我慢していただくしかないのでしょう。
 この国の大事な方で、お世継ぎにも関わるので頑張ってほしいです。

 妹のせいでちょくちょく余計な情報が頭をよぎりますが、まずは自分のことです。

 この国の貴族の婚姻は王宮に提出し、最終的には陛下の承認が必要なのです。これは王侯貴族のパワーバランスを保つための制度です。
 特に、力のある家柄の者は精査の目が厳しくなると聞いてますが、殿下の言葉が本当なら、この婚約は陛下も認めた正式なものとなっているということです。

 王宮を通さず家同士で成り立つ婚約もありますが、最終的には婚姻を認めてもらわないといけないので、婚約の段階で提出するのが一般的です。
 なぜかというと、いざ、結婚しようとしたときに国からの承認がなかなか下りず時間がかかりすぎることもあるからです。常に平時とは限りませんから、事前に準備ということですね。
 婚約さえ認められれば、あとは成人していれば各々のタイミングでよほどのことがない限り結婚できます。

 もちろん幼い頃からの婚約で事情が変わり破棄というものもありますので、各々の事情で皆が皆提出するわけではありません。
 婚約の段階で王宮を通していたら、破棄するにも承認が必要となります。なので、婚約の段階で申請をするということは、それだけ本気だと示すものになります。

 まさかのスケールに、不安すぎて思わずすがるようにオズワルド様を見ます。
 すると、腰を引き寄せられ正面から覗き込まれました。

「オズワルド様……」
「逃がさないって言いました」
「…………そう、ですか」

 きっぱり言い切られ、崩す隙はありませんでした。
 こうなったら謹んで受けるしかありません。家柄も、才能も、私にはもったいないと思う相手ではあります。この婚約で親孝行だってできます。

 ですが、閨の情報が少し気がかりです。
 妹が恐れおののくほどの溺愛系絶倫とは、どれほどのものなのでしょうか。それだけが、非常に心配でなりません。

 いったい、ディストラーさんは今まで何をしていらっしゃったのでしょうか。
 殿下たちを攻略しているはずなのでは?

 殿下の様子も思っていたものとは違いますし、攻略対象者の一人が求婚してきてますが。
 ……今からでもお任せしたいところですが、無理、でしょうね。

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