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ご褒美⑤
しおりを挟む怒濤の展開を迎え気持ちも今までになく満たされた次の日、私たちは婚約者となっていた。
まさに寝て起きたら、私たちの関係が義姉と義弟から恋人へと変わったが一緒にいることは変わらない。
婚前に致してしまったわけだけれど、父は「あいつの息子だ。これ以上我慢を強いて爆発されるほうが問題だしな」とよくわからないことを言っていた。
周囲、特に伯爵である父が納得しているのなら私はそれでいい。イーサンのおかげで丸く収まったのだし、父もイーサンの能力を認めている。
あの後、改めて時間を貰いアダムには断りを入れた。絶対ひとりでは会わせられないと言うイーサンもついてきて、それでも構わないというアダムは男前だった。
感心した私に気づいたイーサンが話し中にもかかわらず、席の横からぐいっと腰を引き寄せてくる。
そのことに呆れはするけれど、私はこうして甘えて私だけと示してくれるイーサンが好きで嗜めはしても本気で怒れない。
経緯と私の気持ちを正直に話すと、アダムはひょいっと肩を竦めた。
「まあ。今回の始末を聞いたらな。もともと崩す隙なかったし、きっとこうなるだろうと思ったよ」
「あなたにも誰にもミラはあげません。僕の想いに勝てるわけないでしょ」
見せつけるかのようにぴったりくっつき私は自分のものだと主張するイーサンの腕をぺちっと叩くと、はぁっとアダムが溜め息を吐いた。
「少しは可能性あるかと思ったんだけどな。まあ、俺もこれで吹っ切れる」
「アダム。ごめんね。今回のことも、そして気持ちも嬉しかった。ありがとう」
「いいって。ミラが無事だったなら。結局そのわんこが活躍したんだろ? 学園でも威嚇が凄かったし、前話した時はミラは信じなかったけどさすがにわかっただろ?」
「……まあ」
本人も周囲を牽制していたと言っていたし、どのくらいのレベルかは知らないがずっと守られ囲われていたのだろう。
無駄にびびらせた相手には申し訳ないけれど、イーサンがそれで気持ちが落ち着くのならいいかと思う私も大概である。
苦笑しながらアダムを見ると、アダムは私を見ながら眩しいものでも見るように目を眇め力なく笑った。
「ミラがいいならいい。まあ、そいつが重荷になったら愚痴でもなんでも聞いてやる」
「そんな日は来ません」
「だそうだ。まあ、頑張れ」
私が答える前にイーサンが割り込むと、アダムははははっと快活に笑って「じゃあ、また学園でな」と話し合いの場を後にした。
ちくっと胸に痛みを感じながらその背中を見送る。アダムには救われる。
「あの人に惚れたりしてないでしょうね?」
イーサンもアダムの対応に思うことがあったのか、話しやすいように腰をずらすと嫉妬混じりに詰め寄ってくる。
無駄な心配をしているイーサンの苦悶を浮かべる表情に、私はふっと吹いた。
アダムの行動はなかなかできるものではなく格好良かったし、もしイーサンと出会っていなかったら彼に惚れている可能性はあったかもしれない。
でも、それはたらればの話だ。
私は私のことで必死になってくれるイーサンが何よりも愛おしくて、何よりも大事だ。出会ってからずっとそうだったから、これから先も変わると思えない。
「今回のことはとても感謝はしてるし、もしアダムが困ったときは力になれるようにとは思うけどそれだけだよ。私にはイーサンだけ」
うなされているイーサンのそばで手を繋いだまま寝落ちしてしまったあの日、「僕、これからいっぱい食べて身体を鍛えて、ミラを守れるようになるね」と言ったイーサンのように、右手を繋ぎ私は左手の小指を差し出した。
イーサンの『頑張り』も私の『ご褒美』も、この『約束』から始まった。
関係が変わった今、新たな約束をしようと見つめると意図を察したイーサンはくしゃりと頬を緩めてきゅっと小指を絡めてくる。
あの日は同じくらいの長さだった指は、太さも長さも変わってしまったけれど絡まる強さは変わらない。
「イーサンが望む限りずっと一緒にいるよ。約束」
「なら、永遠にだね」
じぃっと小指を見つめぽつりと告げると、繋いだ小指にキスを落としがばりと抱きしめられた。
「イーサン。ここ外」
「うん」
返事をしながらぐりぐりと肩に顔を押しつけてくるイーサンに、私は背を叩き抗議した。
「うん、じゃなくて」
「そだね。早く僕たちの家に帰ろう」
文脈のおかしさに眉を寄せていると、イーサンは顔を上げてそっと唇を私の耳に寄せ「ミラをたくさん食べたい」と周囲に聞こえないようにささやいた。
触れる息にびくりとなった私にイーサンはくすりと笑うと、調子に乗って頬にキスを落としてくる。
遠慮のなくなったイーサンの言葉に顔を赤らめながらも、求められることが、イーサンの幸せの中に自分がいることが嬉しくて私は笑みを深める。
私たちはぴったりくっつきながら、ずっと一緒に過ごしてきた、これからも過ごす屋敷へと並んで歩いた。
「ご褒美下さい」とわんこ系義弟が離れない FIN.
※短編から中編へと途中で変更したため構成の甘さが出てしまいましたが、テーマは無事楽しく書き終えることができました。
それもお付き合いくださる皆様がいるからこそで、最後までお付き合いいただきエールもありがとうございます。
近日中に短編のリベンジ(今度は義兄もの)、その次は長編と、今年はたくさん書いていきたいと思っておりますので、また見かけたらお付き合いいただけたら幸いです♪
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お付き合いありがとうございます♡
是非、お付き合いさせて下さいませ😁
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とっても嬉しいです。
ありがとうございます✨