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3-Love doesn't stop-

77高塚くんの愛の証明③

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「そう彼女。大事な大事な彼女を見せたくないけど、一人歩きした噂のせいで嫌われたくないし、身の潔白を証明したいから協力してくれって言ってたの誰?」
「やっぱり見せたくなくなった」
「じゃ、協力しなくていい?」
「…………して」
「ぶっ。よろしい」
「マジで最悪」
「はいはい。俺は新鮮なセンが見れて嬉しいよ」

 二人のやりとりで相手は気心の知れた相手なのだとわかる。高塚くんのお兄さん的存在なのかな。
 相変わらず高塚くんに隠されるように斜めに座られているため、背後からそんな感想を抱きながら話を聞いていたのだが、そこで高塚くんが身体をずらして、莉乃の手を掴むと寄り添うように紹介した。

「りの。彼は俺がモデルしていた時の先輩でそれからずっとお世話になってるキョウ。前に電話していたのもこの人」

 なんとなくそうなのかなっと思っていたが、改めて紹介されて相手を見る。うん。高塚くんもだけど、この人も随分と美形だ。モデル仲間というから、高身長で顔も良い。
 しかも、事情を知っているようでそんな相手に見つめられると、妙に緊張してしまう。

「初めまして。キョウです。セン──こいつが君のことを探してた時から話聞いてたから、こうして会えたのは感慨深いよ。仲良くしてくれると嬉しいな」
「都築です。よろしくお願いします」

 相手から歩み寄るような言葉とともに安心させるように微笑まれ、莉乃もほっと息をついて頭を下げた。

「いい子そうで安心したよ。街で君を見かけてずっと探してたの知ってたから、どんな子なんだろうって気になってたんだ。しかも、見つからないから転校したって聞いてびっくりしたけど、上手くいってよかったよ」
「街?」

 自分の知らない話に首を捻ると、高塚くんが慌てた様子で「キョウ!!」と彼の名前を呼び話を止めた。

「俺はまだその話してないから黙ってて」
「そうなの?」
「そうなの。捕まえるのに必死でまだその話に至っていないというか」

 ちろりとこちらを見てきたので高塚くんに視線を移すと、困ったようななんとも言えない顔をしていたので、莉乃は思わず口を挟む。

「その話、ちょっと気になる」

 常々、どうして自分なのだろうって思っていたのだ。お互い好きだと分かった上で付き合った今は、そのことはそこまで大きく重要なことではないけれど、単純にどこで出会ったのか気になった。
 日々、高塚くんの愛情表現を受け止めるのに必死で、気になってはいたけどそれどころではなかったし。
 こうして改めて話題に出されるととても気になる。そう思って見つめると、

「ああー、話すのはいいけど。二人っきりのときね」

 そう言って、目を細めて髪をいたわるように触られる。
 髪をもむようにくしゃりと掴んだかと思うと、肩にある毛先までそっと梳いていく。その間、懐かしむような、それでいて痛ましいような眼差しを向けられ、ますますよくわからなくて首を傾げる。
 すると、「可愛い。好きだ」とぎゅうっと抱きしめられた。

 やめて、と身体をアピールするがどれも効果がなく、むしろ煽ってしまったのかさらに力を込められた。
 人が見ている前とか、どんな顔をしていいかわからない。
 恥ずかしくて、申し訳なくて、ちらりと高塚くんの先輩を見ると、にやにやした顔でこっちを見ていた。

 視線が合うと、「面白いから気にしないでね」と言われたが、それもどうかと思う。
 高塚くんは高塚くんで、本当に気にしていないかのそのままで会話を続けようとする。抱きしめられたまま進行しないでほしいが、どれだけ力を入れても離れていかない。 

「今日は噂についてキョウにも証言してもらうために来たからね。りの、このまま話を聞いて。今後、そういったことで誤解招くの嫌だし」
「話は聞くから、とりあえずこの体勢をなんとかして」
「それは無理。俺の腕の中で話を聞いてくれないと俺が不安だから」
「………………っ、どういう意味?」

 しばらく意味を考えてみたがわからずそのまま問いかける。腕の中で聞かないといけない理由がわからない。
 
「ぶっ。莉乃ちゃん、諦めて。それだけ莉乃ちゃんが好き過ぎて、これから話すこと信じてもらえなかったりしたらって思ったら、こいつも不安なんだろう。なんせ、学校転校してまで追いかけるくらいだから、今はいっときでも心身ともに離れたくないんじゃないかな? 初恋だしな。俺は気にしないから、そのままいてやって」

 私が気にするんです。
 そう思って困った顔をしているはずなのに、おそらく伝わっているはずなのに話が進んで行く。

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