上 下
73 / 81
3-Love doesn't stop-

72高塚くんの愛が爆発した④

しおりを挟む
 
「……大丈夫?」
「んんー、ダメージがでかい。そんなとこ聞かれてるとか信じられないし。一体、どういうタイミングなんだよ」
「まさかだよね」

 莉乃もあの場所であの時間で、同じ柱に立っているとかすごい偶然だと思う。

「…………その日、俺もりの見かけてて男と一緒とかショック受けてたけど、そんな会話まで聞かれてるとか考えもつかずあれこれ考えて嫉妬して」
「そう、なんだ」

 男って拓真くん?
 電話の時からちょっと気にしてるみたいだったのは、迎えに来てたのを見られてたのかな。

 だから、電話でも機嫌悪かったし、そういうのも高塚くんが心情を隠さなくなった理由の一つだったり?
 なんか、いろいろ自分たちにとってタイミングが悪かったというか、でもこうして話し合えるようになったのだから良かったのか。

「俺はりのがもう少し擦り寄ってきてくれたら、とろとろのどろどろにしようって思ってた。でも、まだ我慢できる範囲だったし、りのを怖がらせたくなかったから我慢するつもりではいたんだ。だけど、男といる姿見てぐちゃぐちゃになった。どうしてやろうって。親しげに名前も呼んでたし呼ばせてたし」
「…………っ」

 続く言葉に、莉乃は息を飲んだ。最後の方とか、高塚くんから漂う気配にひゅっと首筋が寒くなる。
 ああ~、ちょっとどころではなくて確実にその影響は大きかったようだ。
 そして、名前呼びをやたらと昨日から気にすると思ったら、もろにそこが原因だった。
 高塚くんの言葉は続く。
 
「ずっと、自分でも制御つかない溢れるこの思いを全て見せるには早いって。りのが逃げてしまうんじゃないかって抑えてた。ただでさえも、距離感じるのにいきなりは怖がられるかもって思ってたものが吹っ飛んで、りのがそういったことを耳にしてるとか考えもつかなかった」
「そっか……」

 徐々にのしかかるように実感する高塚くんの思いの重さ。
 今までエスコートとかスキンシップも多少行き過ぎてたけど爽やかだったからかな。なんだか、語られれば語られるほどずぅーんと重くて、それでいて甘さがじわじわと莉乃の中で疼いていく。
 ずっと心臓が忙しないのだけど、また違った意味できゅっと引きしぼられるというか、これ落ち着くことあるのかなってくらい自分で制御できない。

「あの電話はお世話になった先輩と話してたんだけど、揶揄う感じだったし言葉通りの意味じゃなくて。好きって言葉では表せないくらい、りのが欲しかった。ましてや、他人に気軽に好きとか言えるもんでもなかったし。俺の思いがわかってたまるかっていうか。そんな感じ」
「……えっ?」
「やっと休日休み取れたのに莉乃と会えなかったのとか、息抜きにと思って誘いに乗ったら勝手に女連れてきたのとかイライラしていたし」
「…………確かに、不機嫌そうではあったかな?」

 驚きはするが、なんだか今までの流れでその理由も納得できるもので。だったら、仕方がないかって。
 聞いたタイミングだったりが悪かっただけで、女性に対しての態度はどうかと思うけれど、気がないのにほいほい優しくしていたところを見てたよりは良かったと思う。
 あれっ。すっかり絆されている?

「引くよね? 愛しくて、誰にも見せたくなくて、俺だけのりのにしたくて、少しでもそういった言葉を出すと自分が止められそうになくて、そんなことしてる間に、りのに勘違いされて一度思いっきり振られた俺だけど……」
「振っただなんて」
「わかってる。告白もしてないのにって。でも、昨日は手を振り払われて一瞬心臓が止まったかと思った。連絡するなと言われて連絡できなくて、すぐにでもりのとの隔たりを払いに行きたかったけど、これ以上嫌われたらと思うと怖くて。それでいて、今日は絶対逃がさないって思ってた」
「あぁ~~~」

 もう、十分に伝わった。逃がさないって何度も言われて、説明されてよぉ
ーくわかった。
 高塚くんにすっごく好かれているってことを。
 どうしてここまで思われているとか、なんで自分なのだとかはやっぱり疑問はあるけれど、好かれているって言葉で表せないくらい愛されてるのではないかっていうことは、回される腕、吐息、言葉でもって理解した。

 その思いを疑ってはいけないくらい本気であること、他の誰かが疑っても莉乃が疑ってはいけないくらいのものだということも。
 どうしてそこまで莉乃を思ってくれるのかとかその原因はまだよくわからないけど、莉乃が悩んで一度拒絶したからか、高塚くんの愛が爆発してしまったってことを知ってしまった。

 そして、知ったからには離さないってずっと高塚くんは告げていて。
 押し込めていたものを、その蓋を開けさせた一端は自分にもあって。

 莉乃としては、ただ恋愛に悩んでいただけだ。相手の見えない気持ちに悩むなんて、誰もが経験することだろう。
 相手の行動が気になって悩んで、好きだと気付いて、心から好きと言えるように相手のことを知りたくて、信用したくて、相手の気持ちを教えて欲しい、どうしてなのかと聞いても普通なら問題ないことのはずだ。

 ただ、すれ違っている間に莉乃の思いもよらない方向に高塚くんがこじらせていて、そう問いかけた時には大変なところまで来ていた。
 つまり、高塚くんのこの状態は莉乃にも責任があるわけで。

「りの、愛してる。愛してるって言葉では表現できないくらい、りのを欲してる。だから、離れるとか連絡するなとか言わないで。ずっと俺と一緒にいて」
「……うん。私も一緒にいたい」

 熱烈な告白に、受け止めきれるかとちょっぴり心配になりながらも、受け止めたい、なにより他の誰にもあげたくないと、莉乃は頷いた。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

英雄王と鳥籠の中の姫君

坂合奏
恋愛
無慈悲で残酷なまでの英雄王と 今日私は結婚する グランドール王国の姫であるリーリエは、幼い頃に大量の奴隷を母親サーシャと共に逃がした罪から、王宮で虐待を受けていた。 とある日、アダブランカ王国を圧政から救った英雄王であるクノリス王からリーリエを嫁によこさなければ、戦争を仕掛けるという手紙がグランドール王国の王宮に届き、リーリエはアダブランカ王国に嫁入りすることになった。 しかし、クノリスはグランドール王国でリーリエ達が逃がした奴隷の一人で……

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

就活婚活に大敗した私が溺愛される話

Ruhuna
恋愛
学生時代の就活、婚活に大敗してしまったメリッサ・ウィーラン そんな彼女を待っていたのは年上夫からの超溺愛だった *ゆるふわ設定です *誤字脱字あるかと思います。ご了承ください。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

処理中です...