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3-Love doesn't stop-
64高塚くんが必死③
しおりを挟む「何か誤解があるのなら、話し合いたい。昨日のまま終わりとかありえないから」
「誤解……」
その言葉に縋りたくなる。
高塚くんと自分との間に認識の差があるのなら、知りたいしわかりたい。
高塚くんが来てくれたら、向き合おうって思っていた。好きな人がいないって知ったことで、ようやく自覚した気持ち。
でも、それを言っていた本人に好きって言われた。
今までは一緒にいたいとか甘い言葉はたくさん言われたけれど、そういった言葉は全くなかったのに。
これはどう捉えればいいのかわからなくて、嬉しいのに複雑で、やっぱり信じられないとも思って。
それと同時に、『りのは俺が信じられないからそういうこと言うんだよね? 俺のなにが信じられない? そんな俺が言葉にしたところでりのはそれを信じてくれた?』と言われた言葉も思い出されて。
結局は自分が怖いだけなんだと思うと、情けなくて。
そして、突き放したのに変わらず迎えに来てくれたことが嬉しくて、自分の思いが言葉にならない。
「りの、俺はりのが好きで。りのに一目惚れして探して、会えなくて会いたくてこの学校に来たんだ。言葉が足りなくて何か誤解を生んでいるのなら、本当に話し合いたい。知れば知るほどりのが好きになって、好きって言葉は軽々しくて自分の物じゃないって気がして、これだけ人を好きになったのは初めてでどうしていいかわからなくて、たくさん傷つけたのなら謝る。ただ、これだけは信じてほしい。俺はりのが好き過ぎて、りのしか欲しくなくて、りのがいない世界はもう考えられないってくらいりののことばかり考えてる」
今までのは何だったと思うほど、「好き」と繰り返す。みんなの前で、これだけたくさん語られて、信じてみたいと思う気持ちが強くなる。
だって、真摯に語る瞳はずっと莉乃だけを見ていて、手は小刻みに震えていてその震えが直に響き、高塚くんが本気だということが伝わって来る。
「その、昨日は私も感情的になってごめん」
「りのにそう言わせた俺が悪い。正直、ずっとりのだけってわかりやすい態度に出していたつもりから、どうしてりのが俺の気持ちを信じられないのかわからなかった」
「…………それは、」
それは、好きだとか、付き合って欲しいとの明確な言葉がなかったからだ。
だけど、言葉があったところで信じていたかはわからないし、たらればの話は切りがなくて、結局は言葉があってもなくても受ける側の気持ち次第なのだと思う。
過ごす時間の中で高塚くんの存在が大きくなった今は、惜しみなく言葉をくれる高塚くんを信じたい気持ちが勝っている。
そうであればいいなという気持ちが、莉乃の中で大きくなっていて期待してしまう。
ただ、ちょっとここは人目がありすぎて、自分の気持ちも赤裸々に語るには恥ずかしくて、疎まれていないなら前みたいにと思っていたところからの告白に、莉乃自身がついていけない。
簡単に連絡がなくなって遠ざかっていったと思っていた相手が、猛スピードでぶつかってきて、散々悩んだ気持ちだとか一気に吹き飛んで、高塚くんの言葉を飲みこむのに精一杯。
「俺の気持ちはきっと重い。言葉にするともっともっと重くなって、りのを縛り付けてしまいそうで、際限がなくなりそうで怖かった。だけど、我慢して言わないことでりのが離れていってしまうなら、それが俺の気持ちの例え一部を表す言葉だとしても、それで伝わるのならもう何も考えずりのを好きだって愛してるって言おうって」
「愛、してる?」
こんなの饒舌な人だったかな? 高塚くんの気持ちが知りたいって思っていたけれど、熱烈すぎて実感がわかない。
「そう。好きでは俺の思いは言い表せないくらい、りののことでいっぱいなんだ。少しでも離れていたくない。いつも別れる時は苦痛だった。もっともっとずっと一緒にいたい。いつも聞き分けのいいふりして、嫌われたくなくて格好つけてたけど、もういいよね」
何が?
あれっ? ちょっと思ってた方向と違う。
嬉しいことは嬉しい。自分に向けられていた優しさや愛情は、好きだなって思ったものは偽りなく自分に向けられていたと思うと、ふわふわするくらい気持ちが浮き立つ。
愛想つかされたわけでもなくて、公の場で熱烈な告白をされて、嬉しいのになんだか不安な気持ちになるのはなんでだろう。
さっきまでとは違う不安に、自分でも頼りない顔になっているのがわかる。
「えっと」
「俺に時間をくれますか? 話し合いがしたい」
真摯な声に頷きたくなる。
懇願するように上目遣いで見つめられる。うっ、美形だなぁ。
人の魅力は造形だけではないけれど、やっぱりその顔だけでもドキっとする。高塚くんが、好きな人が自分を求めていると思うと、さらに鼓動が高鳴る。
「私もちゃんと話したい、です」
「そう。良かった」
ちゃんと自分も気持ちを伝えなければと意思表示をすると、莉乃の肩に高塚くんが顔を埋めた。
心底安堵したとばかりにぼそっと呟かれ、その熱い吐息にぞくりとする。
肌を粟立て敏感になっているところで、高塚くんは顔を上げると同時にふっと耳元を生ぬるいものがかすめていく。
「えっ?」
驚きで思わず掴まれていない方の手で耳を抑えると、眩いくらいの笑顔をが目の前で見つめられた。
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