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2-My goddess-【千歳SIDE】

61伝わらない、逃さない②

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 ずっと思ったように距離を詰められないまま、優しいりのに甘えてきた。嫌われていないのなら、いつかはと。
 なのに、りのの意思を持って一気に距離が開かれた。俺の届かないところに、行ってしまおうとしている。

 大事にしたいことと、すぐさま奪ってしまいたい気持ちの葛藤に悩まされながらも、りのといる時間は何事にも代えがたい時間だった。
 毎日、毎日、りのに会えると思うだけで、朝起きたときから寝るまでずっと高揚感があってもどかしいことさえも楽しかった。
 りのがいるだけで、りのから離れてさえいかなければ、少しはりのの気持ちがこちらに向くのを待つつもりではいたのだ。

「りの……」

 だけど、肝心のりのが逃げるというのなら、千歳の全力をもって追いかけるしかなくなってしまう。
 千歳は震える手を、ぎゅっと握りしめた。爪が手のひらに食い込むが、その痛みが心の辛さを軽減してくれることで握ることをやめられない。

 どれくらいそうしていただろうか。現実味のない時間が経過していた中、突如、ブブッブブッと座ると同時に放り投げたスマホが振動し、ようやく千歳は思考を現実へと戻した。
 電気をつけないままだったので、スマホのライトがやけに明るく感じる。ぼんやりとそれを眺めるが、まったく関係のない相手だったのでそのまま放置する。
 今は他のこととか本当にどうでもいい。りののことだけを考えたい。

 連絡するなと言われたから、連絡はしていない。だけど、それでいいのかどうか。
 なんというか、ずっとあった隔たりみたいなのが、りのの言葉の中に隠されているようで。
 何より、千歳自身がこのまま終わらせる気はない。千歳にはりのが必要だ。やっと見つけた俺の女神。

「そうだ。考えないと」

 連絡するなと言われたが諦めきれなくて、納得なんてできなくて、りのの連絡先の画面を開くが、指先が迷うように震える。──これ以上嫌がられたら。そう思うと、押すことを躊躇われる。

 こうなったら、あのあとすぐに追いかけられなかったことが悔やまれる。
 時間が経てば経つほど、りのとの距離がさらに空いてしまうようで、顔が見えない今、自分が起こす行動にりのがどう思うかわからなくて、何もできない。だって、大切な女神にお願いされた。

『………ごめん。高塚くんと一緒に帰ったりするのは楽しかったけど、やっぱりもうこういうのやめたい。連絡もしないで欲しい』

 こういうのってどういうのか。
 言葉ではいろいろ説明されたが、スキンシップも何もかもりのと自分との認識の違いがあるようで、とうてい千歳は納得できるものではない。考えられることは、

「強引すぎて怒らせた? いや、……そんな感じじゃなくて、最初っから遊びって思われてた?」

 千歳の中ではりのだけというのは、りのと思いの重さは違えどずっと変わらないままだったが、今までの千歳の行動が本気だと捉えられていないとしたら、りのの常に一歩引いたような距離もあり得るかもしれない。
 それは不本意ではあるが、そこに誤解があるとしたらその誤解を解いたらまだ千歳に可能性はあるだろうか。
 あからさまな態度で、隠しもしていなかったから周囲だってわかっていたし、まさか気持ちがまったく伝わっていなかったなんて思いもしなかった。
 
 連絡するなと言われたから、今日は連絡しない。

 でも、逃しはしない。

 好きすぎて、好きと言えなかった。
 言葉にすると何か違うくて。
 でも、そんなことを気にする前に、相手にわかりやすいようにもっと言えばよかったんだ。
 そしたら、りのが変な誤解をしなくて済んだかもしれない。

 もう遅い?

 いや、無理だ。
 拒否られたことが、心をえぐり千歳を弱気にさせるが、とうてい諦められる気がしない。
 
 せっかく会えたんだ。こうして話せたんだ。一緒に時間を過ごしたんだ。
 今更、りののいない時間を考えることさえ千歳の身体は拒否をする。りのがいなくなると考えようとするだけで、ずっと震えが止まらない。
 
「好きだ」

 愛してるんだ。

「逃さない」

 りのが逃げるなら必ず捕まえる。

 明日は学校だ。互いに休まない限り会える。だから、絶対捕まえて今度こそ離さない。
 気持ちも全て曝け出し、りのが逃げたいと思えないくらい自分の愛の重さをわからせる。重さでどこにも行けなくなればいい。

 静かに朝が明けていくのを、千歳はじっと眺めた。



-Next  莉乃視点に戻ります!!
 高塚くんが本気モードになりますww

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