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1-something quite unexpected-

34高塚くんと気まずい③

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 どう答えを導き出せば正解なのか。
 いつこのもどかしさから解放されるのか。
 
 高塚くんがわからない。
 自分のこともわからない。

 どうしたいとか。
 どうすればいいとか。

 高塚くんの土曜日の姿を見て余計にわからなくなった。

「ああ、もうっ! なにやってるんだろう……」

 土曜の夜もそして今日の朝も、なんだかスマホを見るのも嫌で見ていなかった。疲れていたり、拓真くんが来ているからとわざと見なかった。
 つまり、一日以上スマホに触れていない。

 休日も高塚くんのメールがくる可能性はあったけど、それを今までのように素直な気持ちで受け取れないと思った。
 今どうしてるのだろうとか。今まで気にならなかったことが気になって。
 もしかしたら、断っていたけど引く手数多みたいだし、別の女性たちと一緒で忙しくて連絡がこない可能性も考えたりもした。

 そしたら、すっごく腹立たしくて。
 高塚くんにとっての連絡ってそんなもんなんだと、たいしてマメに返してきたわけではないのに考えてしまう傲慢な自分もいて。
 来ても来なくても可愛くない気持ちに支配されそうで、見る気がおきなかった。

 それでも、ずっと見ないわけにはいかない。
 明日は学校だし、連絡も高塚くんだけではないだろうしと、ようやくスマホを見る気になった。

 ギュッと押して、指紋認証でホーム画面に浮かび上がる赤の数字。メールの数は2桁になっている。
 着信の数とメールの数が1日見ないだけで普段なら考えられないことになっていて、驚きとともに目を見開いた。

「えっ?」

 慌てて、緊急事態かなと確認すると大半が高塚くんの名前。

「ああ~」

 がばりと身体を起こし、スクロールしていく。
 いつも通りのメールが来るか来ないかの想像でもんもんとしていたのに、まさかの大量の連絡。

 これは予想していなかった。
 一つ一つ、時系列で内容を確認していき最後まで読み終えると、莉乃はスマホを持ったままおでこに手を当てた。

「まずいっ」

 これはまずいっ。じくじくと申し訳なさが増す。

 土曜の夜は大抵おやすみメールなのだが、その前に高塚くんから電話があったらしい。時間的に高塚くんを見てから30分後。そして、折り返しの電話が欲しいとのメール。
 それから、9時頃に寝たのかなと気を遣う文章とともに、見たら連絡が欲しいとあって。

 当然スマホ放置で見ていない莉乃は返していなかったから、11時におやすみとメールがあった。
 そして、今朝はいつもより早く、メール内容もいつもより様子が違っていて、昼にももう一度電話があったようだ。

「ああぁ~~、うぅ~」

 どうしていいかわからず、意味をなさない言葉が口から出ていく。
 さすがにこれを無視するわけにはいかない。

 一瞬、気づかなかったことにしてこのまま返さない方向もありかなって考えたけど、明日は学校で会うのだからこのまま返さない方が気まずい。
 ずっと放置してたっていうのもなと、鞄に入れっぱなしで気づかなかったと言い訳とともに謝罪のメールを打ち込む。
 意識的に見なかったこともあってちょっとばかり罪悪感を覚えながら、二度ほど読み返しこれでいいかと送信ボタンを押すと、まるで待ち構えていたかのように電話が鳴った。

「うわっ、えっ、高塚くん?」

 画面に表示された名前に慌てて立ち上がろうとして、携帯を落としてしまう。
 ベッドの下に滑り込み、ぐいっと手を伸ばして拾い上げるとようやく通話ボタンを押せた。

「は、はい」

 だめだ。いろんな焦りで声が上ずった。これじゃ、何かやましいことありますって言ってるようなものだ。んんー、気にしすぎかな。

『りの?』
「ごめん。びっくりしてスマホ落としちゃって」

 ひとまず、メールを打っておいてすぐの電話を取れなかったことへの詫びを伝える。

『びっくりしたの?』
「ああ~、と、うん。まさかすぐ連絡くるなんて思わなかったから……」
『…………』

 なぜにそこで沈黙?
 高塚くんからもらった電話やメールのことを思うと、意図的に放置した莉乃の罪悪感を思いっきりえぐってくる。
 メールの内容を思い出し、あわあわするだけで何から話せばいいのやらと、意味もなく視線が移動する。

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