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1-something quite unexpected-

27私の知らない高塚くん②

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 高塚くんが転入してきて一ヶ月とちょっと。莉乃と関わったのは、たった三週間ほど。
 そんな短い期間で周囲には、高塚くんと私が付き合っていると認識されているという話だった。

 もちろん、志穂たちには付き合っていないことは言っている。
 でも、毎日クラスまで迎えに来て莉乃の鞄を持って手を繋いで一緒に帰る姿は、高塚くんに大事にされていることは間違いないってと豪語された。

 学校中の共通の認識だとかで、そこに愛がないのは逆におかしいからってすっごく興奮しながら言われたけど。
 納得はしかねるというか、どう捉えていいのかわからないというのが正直なところ。

 まあ確かに、客観的に見ながら説明されるとそうだなと思うけれど、付き合っていないものは付き合っていない。
 やたらとスキンシップが激しいのに、そういった言葉は皆無。

 二人曰く、階段のところで莉乃が背後をとられた時も、二人きりにしてくれという高塚くんの圧がすごかったらしい。
 その日のメールでも謝ってくれたけど、学校では誰が聞き耳を立ててるかわからないからこの話題はしにくい。帰りはいつも高塚くんと帰るしで、三人揃って話すのは本当に久しぶりだった。

 だから、一度話題に出ると、妙に盛り上がった二人にあれこれと突っ込まれた時間でもあった。
 選曲が流れててもそっちのけで、個室だーとばかりにその話題。

「にっこり笑ってたけどね、笑ってたんだけどね」
「そう。笑ってたんだよ。笑ってたんだけどなんか怖かったんだよね」
「そうそう。妙にあの時はそう言わないとってなったんだよね」
「私も。そこで約束してるなんて言ったらどうなるかわからないって思ったし。それに私たちのはいつもの流れの上での約束だったから……。そこで高塚くんを断っても、莉乃を絶対捕まえるんだろうなぁっていうのを全く隠してなかったから、早い方がいいのかなって。本当、ごめんね」

 二人のタッグはまだ止まらない。

「莉乃。ごめんね。なんか、すっごい莉乃のこと愛おしそうに抱きしめてたから、悪いことにはならないのかなって」
「そうそう、それ。あれにはびっくりしたよね。見ててもひゃあ~~ってなった~」
「ドキドキしたよね。そのドキドキでこっちもちょっとテンパったかも。とにかく、その時助けられなくてごめん!!」
「ごめんっ!!」

 二人が連携して、当時の感想とともに謝ってくる。

「ううん。私もすっごい圧感じてたし、今となってはあの日回避したとしても、結局こうなっている気はするからいいんだけど。なんで? って思うことは多すぎるんだよね。今日のこれもしぶしぶ納得したという感じだったし」

 高塚くん、この日に用事があるのは志穂たちと遊ぶことだって伝えたら、すっごくショックを受けていた。誘おうと思ってくれてたみたいだから余計かな。
 あの日もちょっぴり高塚くんにドキッとしたけど、ほんとあの人同じ歳なんだろうか。

 それで昨日の金曜日の放課後、もう一度遊べないかって聞いてきた。しかもわざわざ美咲がいるときに。
 無理だと断ると、きっとこの話を持っていきたいがためにしたんだと思う。

 次はどうしても莉乃と行きたいから、どの週末かはまだわからないけど万が一そっちと約束していた時は譲って欲しいと、高塚くんがおうかがいを立てていた。
 美咲がにやにや莉乃を見た後、そのときはそうするって約束してようやく機嫌が戻ったのだ。子供かっ。

 高塚くん的には今日のことがよほど諦めきれなかったから、次の約束ができてもずっとしぶしぶな感じだった。
 ものすごーく考えたであろう重い沈黙の後、小さな声で今日のことも楽しんできてねって言われた。そして、

「いいよ。りのと週末過ごしたかったけど、友だちも大事なのはわかってる。でも、次は絶対俺とな」

 と、しっかり念も押してきた。
 ついでとばかりに、さっさと繋がれた手にちゅってしたんだよー。
 それを見た周囲のうるさいこと。キャァーーッと悲鳴が上がったからね。ああ、月曜日は行きたくないな。

 どうしても遊びに行きたい子供のようでいて、すっごく我儘な大人。
 水曜日も、木曜日の放課後もいつもよりスキンシップが多くて困っていたところに、学校でもそんなことされて正気の沙汰じゃないって思ったから。

 それに、いいよって何かな? そもそも週末は今まで言われたことなかったし。予定入れていても私は悪くないよね?
 なぜ私が高塚くんの機嫌を気にしているのだろうって、なぜ自分のことなのに高塚くんが決めていくんだろうって、なんだか胸がもやもやした。

 その時のことを思い出していると、その現場を見ていた美咲がしみじみとつぶやいた。

「あれって、独占欲みたいだよね。高塚くんすごく葛藤してたよね。本当に付き合おうとかさ、その手の話はないの?」
「ないよ」
「毎日メールくるんだよね?」
「うん」
「莉乃もそれに返してると」
「できる範囲だけど」

 遅くても早くても、返しそびれても、それについては高塚くんは何も言わない。それもそれでどうなんだろうって、気にはなっている。

「それって、やっぱり付き合ってるみたいだよね。帰る時も手を繋いでるし、鞄持ってくれてるし」

 嬉しそうに話す志穂の中では、高塚くんは強引だけど莉乃を大事にしてくれる王子ってことで高評価だ。
 むしろ、多少の強引さも頼り甲斐があるとのことで、早くくっついたらって思ってる節があった。




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