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第二部 第四章 忍び寄る影

side双子王子 恐怖の夜③

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 同時刻、エドガーは隣の部屋からジャックの叫び声が聞こえて目が覚めた。
 それと同時に、コツ、コツコツコツコツコツコツという音が自分の部屋の窓から聞こえ、一気に目が冴えた。

 目を凝らし窓のほうを見ると、暗い中、尖った何かが窓を割る勢いでコツコツコツと鳴らし、ときおりこちらの様子を窺おうと丸い目ん玉がこっちを覗き込む。

「動物? 鳥?」

 それにしては全体像が見えないのはどういうことだ。
 あの尖ったものがくちばしだとしたら、体の大きさを考えるとやばすぎだろう。

 コツコツコツコツ、コツコツコツコツ

 地味に同じところを突いていて、窓を割ろうとしているのだろうか。あっ、ひびが入った。
 そもそも、王城の結界に危害を加えられるほどの力。
 単純に大きさだけでなく、その存在自体に特別な力があるはずだ。

 ちょっと(名誉のために)ビビっていたジャックとは違い、エドガーのほうはわりかた冷静に物事を見ていた。
 普段から思ったら即実行の双子の兄について回るため、面白いと思った提案には乗るがそのあと慎重に吟味しフォローするのはエドガーのほうだった。
 ジャックは決めて行動するまでは早くそれも終えたら満足してしまうため、その分考える癖がエドガーには付いている。

「エドガー殿下、こちらにも物音が。大丈夫でしょうか?」
「うん。今のところはだけど。ジャックのほうも何かあったようだね」
「はい。えっと、こちらは」
「うん。大きな生き物だよね。鳥、かな? なんとなく、危害は加えられないとは思うのだけど、どう思う?」

 護衛たちが数人やってきて、エドガーを守る陣形を組みながら窓辺を見る。

「……割って入られるのも時間の問題のようですね。もう少し下がっていてくださいますか?」
「うん。ジャックのほうは大丈夫かな?」
「そちらも数人ついておりますので、必ずお守りいたします。現状はこちらのことが解決次第、確認いたします」
「うん。で、もうあれは破られるよね。あっ!」

 目の前でコツコツと突いていた嘴が、ゴツッという音を立てて窓に突き刺さったまではいいものの、どうやら抜けなくなったらしい。
 バサバサバサッと激しく羽を動かす音がする。

「………………」
「………………」
「……あれって」
「どうやら、抜けないようですね」

 すっごい必死でバサバサしてる。足でゲシゲシ窓を蹴っている。
 それでもずぼって刺さったまま抜けず、エドガーのほうに向かって突き出ていた。

「………………」
「………………」
「…………ちょっと」
「間抜けですね……」

 夜中の侵入者のあまりな現状に、護衛とともに哀れんでしまう。
 なおも一生懸命脱出しようとしていたが、自分の力ではどうにもできないと悟ると、しまいにはキュルルルルッとした瞳でこっちを見てくる。黒に星が瞬くような光が散らばった夜空みたいな瞳だ。

「………………」
「………………」
「……助けを求めてる?」
「そうみたいですね……」
「なら、助けてみる?」
「殿下はここでお待ちください。我々でやりますから」
「わかった」

 護衛たちが警戒しながら嘴のガラス部分を割ってやると、解放されたそれがバサバサと羽ばたき中に入ってきた。

「うわっ」
「殿下」

 あまりの早業に慌てた護衛の言葉を尻目に、目の前に止まったそれは行儀よくエドガーの手前で止まる。

『リンリン』

 可愛く鳴くと、危害は加えないよと羽を折りたたんだ。鈍臭いけど頭はいいらしい。

「もしかして、リンリン?」
『リン』

 そうだというように、小さな返事が返ってくる。

「リンリンなんだ。とても大きくなって……」

 つい最近まで手乗りサイズだったんだけどな。大きくなるのレベルの常識が付いていかない。
 頭には立派なトサカみたいな羽と、尻尾のほうにも綺麗な羽が流れるようについている。こういう鳥の絵を見たことがある。伝説だと語られている不死鳥みたいだ。

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