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第4章 繋がる温もり

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 東の空がほんのり明るくなり、静かな朝を迎える。目覚ましを止めると、静香は詰まるような胸から大きく息を吐き出した。


 ────ああ、緊張してきた。


 今日は達貴の家にお泊まりする。
 互いの家族が見守るような雰囲気は余計に気恥ずかしいが、今は達貴を一人にしたくないという気持ちが大きかった。

 少しでも寂しさ、不安といったものが自分といて和らぎ、一緒に過ごすことで楽しい時間が増えればいい。
 達貴の全てを柔らかく包み込みたい。
 泊まりの意味を考えるともちろん緊張するが、彼が望むなら全てを委ね、彼の思いを余すことなく受け止めたかった。


 好きだから、緊張する。

 好きだから、大事にしたい。

 好きだから、静香だって彼を望む。彼の全てが欲しいのだ。


 トクッ、トクッと高鳴る胸が朝から落ち着かないが、時間を気にせず達貴と一緒に過ごせると思うだけで口元が緩む。
 駅前で待ち合わせをし、いつもより多めにDVDを借りる。そんな少しの違いがこれから先の時間を意識し、嬉しいとともにまた変に鼓動が高鳴る。

 だが、互いにそこにはなるべく触れないように、いつものようにを心がけ、映画を見たり、話したり、ご飯を食べたり、一緒に食器を洗ったり。
 ちょっとした新婚みたいな空気が漂い、達貴がにっと照れたように笑いながらも穏やかで慈しむように向ける眼差しに、なんとも言えない思いでお腹の奥の方がぽっと熱くなった。
 気恥ずかしさ以上に、そこからじわじわと浸透する愛しさに、見つめられる幸せに、静香の口元は綻ぶ。

 じわりと火照る気持ちと身体のまま部屋に戻ると、初秋の清涼な空気が入り込み、わずかに身を震わせた静香を見て達貴が窓を締める。
 相変わらず日中は暑いが、朝晩は羽織を必要とする日が増え、肌寒くなってきた。

 達貴とともに過ごすようになってから、一日、一週間、一ヶ月、半年と時とともに好きが増してどこまでも気持ちが溢れる。
 その間に、季節がゆっくりと移り変わっていた。

「先にお風呂入ってくる?」
「いいの?」
「いいよ。使い方わかる? それとも一緒に入る?」
「……一緒は遠慮します」
「なんだ残念」

 達貴がふっと口元に笑みの形をとったが、瞳の奥には隠しきれない熱が見え隠れする。
 本気か冗談なのかの境目で、少しでも緊張をほぐそうとするかのやり取りに、ああもうすぐなのだなとドキドキが止まらなかった。

 他人の家のお風呂に緊張し、先を思うとあまりリラックスできないまま上がる。
 ずっとずっと心臓がばくばくと鳴っている。初めてのことに、どのような気持ちで、どのような顔で、どのような……と考えると切りがない。

 わかっていることは、自分が達貴と離れたくない。そばにいて触れ合いたいと思っていることだ。
 覚悟を決めると、パジャマを着て達貴の部屋に戻った。視線が絡み、わずかに外されながら達貴が入れ替わりに部屋を出て行く。

 静香はふぅっと息を吐き出し、ベッドの前に座った。
 ドクドクドクドクッと心臓が飛び出しそうなほど鳴っている。これからの時間を思うと、不安と期待と、そしてもっと触れ合えることに嬉しさが灯る。
 今まで以上に彼を、達貴をそばに感じることができる。それがとても嬉しいとさえ思い、緊張の間で静香は小さく小さく息を吐き出した。


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