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はじめての恋2

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 口を開けまた迷うように閉じたルーシーを見て、ラシェルはふっと自嘲の笑みを浮かべ、しかしすぐに何かを思い出したように真面目な顔を作った。

「ルーシー。聞いてほしい」
「はい」

 ただならぬ様子に、ぐっと下腹部に力を入れた。
 いつの間にか涙も引っ込んでいて、ラシェルが何を語るのかにすべての意識が向く。

「もう、今回のようなことは胸が苦しすぎて耐えられそうにない。ルーシーは俺が思っていた以上に特別で、誰にも替えられないってわかったんだ。こんなことは二度と絶対嫌だ。少しでも望みがあるなら俺と付き合ってほしい。そばで守る権利を俺にちょうだい」

 好きだとは伝えられていたが、付き合ってほしいと言われたのは初めて。
 腰に回された手と、ぴったりとくっつくとわかる厚い胸板、ほのかに甘い香りをさらに意識してしまう。

「その、付き合うって?」
「もちろん、恋人になってほしいってこと。一緒に時間を過ごして、二人でたくさんのことを感じて経験して、できたら将来も見据えていきたい」
「将来……、そこまで……」

 ラシェルの気持ちを疑っていたわけでも、軽んじていたわけでもない。
 過去の出来事から女性を嫌悪するほど嫌いなラシェルにとって、そういうことをする以外のコミュニケーションはあまり望んでいないのかと思っていた。
 そこまで具体的に意識して考えていたわけではないけれど、好きと言われて返事は焦らないと言われてそのまま保留としていたのは、具体的に好きを受け入れた先が想像できなかったからなのかもしれない。

「俺の女性嫌いは筋金入りだから。俺だけの特別を見つけた今は、もうルーシー以外の人は触りたくないし無理なんだ。ルーシーだけが欲しい。心もだ。だから、少しでも可能性があったら前向きに検討してほしい」

 女性に心を開いたことのないそんな彼が、身体だけでなく心の繋がりも欲しいのだと、自分だけだと告げてくる。
 そこまではっきりと示されて、気持ちが傾かないわけがなかった。

「わかりました。お付き合いいいですよ」

 ルーシーは化粧することだとか、目新しく楽しそうなことは好きなほうだ。
 それと恋愛は違うけれど、ラシェルと一緒に過ごすことはルーシーにとって楽しさも含むもので悪くないのではと思った。胸の中に膨らむ期待があることが答えのような気がする。

「えっ。本当に?」
「なぜ、そこで驚くのですか? ラシェル様がそうしてほしいって言ったじゃないですか」
「そうだけど……」

 なぜか驚き垂れ気味の双眸を大きく見開いたラシェルに、ルーシーはくすりと笑う。
 ラシェルの視線は不安そうに揺れながらも、その金茶の瞳の奥は期待の熱が見えている。

「ラシェル様と同じ気持ちかはわかりませんが、ラシェル様のことは好きです」
「好き……?」

 あれだけ毎日話しかけてきたのに、いざ受け入れられると及び腰になるらしい。
 それでいて期待を隠せず肯定してほしいとじっと見つめてくるところとか、守ってあげたくなるような愛おしい気持ちがルーシーの胸を占めた。
 性技に長けているのかもしれないが初心な反応に、自分も恋愛初心者なのに過去のことを包み隠さず教えてもらったからか、彼をこれ以上傷つけたくないと強く感じた。

「はい。女性が嫌いなのに優しくしてしまうところとか。ラシェル様の中で様々な葛藤があっての行動ではあると思うのですが、根はとても優しい人だと知っています」
「そんな綺麗なものではないよ」

 知っている。汚したい気持ちがあるのも、そういったことを目的として計算で女性に優しくもしてきたのだろう。
 過去にされてきたこと、自暴自棄で女性としてきたことを後悔し、自分のことを汚いとなによりも気にしているのはラシェルだ。

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