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第三章(中)
お店を探ろう!
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前回のあらすじ、店にカチコミに行く。
「あ、ここのようだね」
売人が喋った店の前まで着いた俺たち。その店はやたらとファンシーな看板を出しており、窓から見える内装も、これまたおしゃれなものになっていた。
中には色とりどりの布生地や、ボタンや、テープなどが置いてあり、それらは全て、見た人の目を楽しませるものだった。
商品からいって、手芸用品店かな?
位置的にはカズ王子が扉を開け、一番に入るべきなのだが... 扉の方を向いてニコッと笑うと、一歩扉から身を引き、眉を潜めたリリーに扉を開けてもらう。
まだ腕が使えないようだ。
「いらっしゃいませええ、何をお求めですか!」
店に入ると、ピンクのバンダナを頭に巻き、赤のワンピースを着た少女が駆けて来る。
くるんと巻いたロングの金髪を揺らし、何やら作業をしていたのか、銀色のハサミを持ったまま接客をする。
ハサミは置きなさい。
「やあかわい子ちゃん。裁縫用の針を三本、赤色の布、そして適当なレースを探しているんだ」
「やだもう!!褒めても何も安くなりませんよ!布は無地の物でよろしいですか?」
「本心だよ。布は花柄のものを、何種類か見繕ってくれないか?」
事前に男から聞いていた合言葉をカズ王子が言うが... 店員の女の子ははさみを持ったまま両手を頬に当て、かわい子ちゃんというワードに反応し、恥ずかしがる。
こんな子が、麻薬に?
「すぐに準備するから奥で待っててくださいね、お茶も出しますから!」
「ありがとう、美味しいお茶を期待しているよ」
奥の部屋、と案内された部屋にはちょうど四人がけのテーブルが用意してあり、俺とクルミ王子、リリーとカズ王子で座る。
商品は置いていなくて、壁に絵画とかが飾ってある、応接室のような部屋か?
店員の女の子が店に戻ったのを確認するとリリーが口を開く。
「黒です」
「知っているよ」
見た目や言動からは疑わしいが、リリーとカズ王子から見れば明らかだった模様。
「リリーさん。あの女性がアンさんの居場所を知っているのでしょうか」
「男の口ぶりからするに、あの女がアンと会っていると見て間違いないと思います。問題はどうやってそれを吐かせるか、で... 」
「お茶が入りましたよお!熱いので気を付けてくださいね」
リリーが喋っているのを遮ってくるように、店員の女の子がお茶を持ってくる。それぞれ四人の前にティーカップを置くと、四角いトレーを両手に抱え、ニコニコと笑っている。
これは... 色と香りからいって紅茶かな?やたら上品なカップだな。あまり飲んだ事はないけれど、まあとりあえず一口... と思ったが、リリーがカップを口に近づけたままこちらを睨んでくる。
あ、これ飲んじゃいけないんですね。とりあえず飲むふりだけ...
するとリリーが、向かって右に視線をずらす。リリーの視線の先、俺の右にはクルミ王子が座っていて、今まさに紅茶に口をつけようとしているところだった。
やべ...
「クルミさん、きょ、今日のお昼... は、どうしましょう... 」
店員の女の子に見られないように、クルミ王子の持っているティーカップを見ながら激しくまばたきをして、サインを送る。
伝われえ!!
すると、クルミ王子は少し静止し、笑顔で俺を見る。
よし、伝わったな。
だが、俺の腹芸はリリーほどは上手くないのか、はたまた変なメッセージを俺から受け取ったのか...
ずずっ...
茶をすする音が、右から聞こえてきた。’
駄目だったあああ!
「お茶は美味しいですか?渋すぎませんでしたか?」
「レディーの淹れた紅茶を飲みたいのはやまやまなんだがね、本当に不幸な事に、腕を怪我してしまっていて自力では飲めないんだ。リリー、飲ませてくれないかい?」
「ええ良いですよお?さあ熱~いお茶ですよ、一気に流し込むのでお口をお開けくださあい」
両腕をだらんと垂らした笑顔のカズ王子の口に、ティーカップを押し当てる笑顔のリリー。
お前らもう好き勝手やってろ。
リリーの余裕っぷりから即死レベルの毒では無い事は分かるが、一応は王子だろうが。
そんな馬鹿やってる二人の様子を、微笑ましく見届けている店員の女の子だったが... 何かが倒れる音がすると、急にその笑顔が消える。
「一人だけ、でしたか。こんなに小さな女の子を連れてくるだなんて、随分となめられたものだと思いましたがなるほど。なめていたのは私のようですね」
音が鳴った方向、店員の女の子の視界の先を確認すると、クルミ王子がテーブルに突っ伏し、目を閉じているのが見える。
し、死んで... いや、寝ているな。いびきをたてている。
「まあ、殺人レベルの毒ではないですよね。ですがこいつを無力化しても後三人、どうしますか?」
「手負いの貴族、子供、そして非戦闘員の男... 」
すると店員の女の子は、腰から片手にハサミを取り出し、開いてそれを顎の下に、もう一方の手をチョキの形にしてへその辺りに構え、笑顔で続ける。
「全員、やっつけてやりますよ」
*********
大剣持ちの少女は、三本目の串焼きに口をつけていた。
杖持ちとメイド服の少女たちはすでに自分たちの分を食べ終わっていたようで、二人で話をしている。
「え、衛兵の方に話を聞くといっても、具体的にどんな事を聞けば良いのでしょうか」
「そうですね... 魔獣の発生時間、場所、目撃情報などが上げられると存じます。アン様にたどり着くためには、その中でも魔獣の発生地点を聞くのが手っ取り早いかと」
ふと、大剣持ちの少女は立ち止まり、串を口に突っ込みながら路地裏の方を眺める。話し込んでいる二人は、それに気付かずに進んでしまう。
「そ、そうですよね。アンさんは能力で遊ぶと言っていましたし、北の町で待っているとも言っていました。恐らく魔獣の件を追っていけば、簡単にたどり着けますよね」
「はい、そうだと存じます。ですが、麻薬の件も気にかかりますね。カズ王子殿下の口ぶりから察するに、魔獣の件と時期が重なっているのでしょう」
「ア、アンさんが絡んでいるかもしれないってことですか?」
メイド服の少女は一拍置き、続ける。
「植物から麻薬の成分を抽出することは、アンさんには容易いことかもしれません。死霊であるアンさんが広めるとなると、どうしても人間が、それも組織的な人間がアンさんに肩入れして... 」
「なあメイ、あれは放っておいていいのか?」
ここでようやく、二人は大剣持ちの少女が立ち止まっている事に気が付く。
「どうかなさいましたか、タイランお嬢様?」
二人で大剣持ちの少女に近寄り、路地裏を確認すると、大剣持ちの少女が見ていたのは一人の男であるのが確認できる。
その男はいかにも浮浪者といった風貌をしていて、壁のとある一点をジッと見つめ、静かにたたずんでいる。
「あの浮浪者が一体... 」
するとその男はにやりと笑い、見つめていた壁を拳で殴る。すると砂ぼこりと共に打撃音が響き、パラパラと破片が落ちる。
「あいつ、なんかやばいぜ」
「そのように見受けられますね」
大剣持ちの少女は残っていた肉を一気に口に入れ、咀嚼しながら背中の大剣を抜く。
「タイランお嬢様、気絶させないようにお願いいたします」
大剣持ちの少女は不満げに大剣をしまう。
そして男の元に素早く駆け、拳を振るう、が... 男の風貌からは想像もつかないほどの体の柔軟さを見せつけるかのように、素早く体勢を低くし、大剣持ちの少女の足を薙ぎ払う。
「タイランお嬢様、恐れ入りますが、お戯れはお控えください」
「痛って... 油断してただけだ!」
受け身を取った大剣持ちの少女は振り返り、自身の従者に言い返す。
男から目を離した少女のそんな隙を、男は見逃すはずもなく、低くした体制のまま男は少女の後頭部に向かって拳を振るう。
だがどうやってその拳を感じ取ったのか、少女は頭の位置を下げ、拳を避ける。
「今俺が!メイと話していたのがっ!見えねえのかあっ!!」
男のその行動に怒りを露わにするよう、大剣持ちの少女は後ろ足で男の顔面を狙い... 綺麗に顎に命中する。
「ぐふっ!?」
すると男の全身から力が抜け、地面に倒れ込む。
「あ、ごめんメイ。綺麗に入っちゃったぜ」
「... 」
「お、起こすことは出来ませんが、一応治療はしておきますね」
「あ、ここのようだね」
売人が喋った店の前まで着いた俺たち。その店はやたらとファンシーな看板を出しており、窓から見える内装も、これまたおしゃれなものになっていた。
中には色とりどりの布生地や、ボタンや、テープなどが置いてあり、それらは全て、見た人の目を楽しませるものだった。
商品からいって、手芸用品店かな?
位置的にはカズ王子が扉を開け、一番に入るべきなのだが... 扉の方を向いてニコッと笑うと、一歩扉から身を引き、眉を潜めたリリーに扉を開けてもらう。
まだ腕が使えないようだ。
「いらっしゃいませええ、何をお求めですか!」
店に入ると、ピンクのバンダナを頭に巻き、赤のワンピースを着た少女が駆けて来る。
くるんと巻いたロングの金髪を揺らし、何やら作業をしていたのか、銀色のハサミを持ったまま接客をする。
ハサミは置きなさい。
「やあかわい子ちゃん。裁縫用の針を三本、赤色の布、そして適当なレースを探しているんだ」
「やだもう!!褒めても何も安くなりませんよ!布は無地の物でよろしいですか?」
「本心だよ。布は花柄のものを、何種類か見繕ってくれないか?」
事前に男から聞いていた合言葉をカズ王子が言うが... 店員の女の子ははさみを持ったまま両手を頬に当て、かわい子ちゃんというワードに反応し、恥ずかしがる。
こんな子が、麻薬に?
「すぐに準備するから奥で待っててくださいね、お茶も出しますから!」
「ありがとう、美味しいお茶を期待しているよ」
奥の部屋、と案内された部屋にはちょうど四人がけのテーブルが用意してあり、俺とクルミ王子、リリーとカズ王子で座る。
商品は置いていなくて、壁に絵画とかが飾ってある、応接室のような部屋か?
店員の女の子が店に戻ったのを確認するとリリーが口を開く。
「黒です」
「知っているよ」
見た目や言動からは疑わしいが、リリーとカズ王子から見れば明らかだった模様。
「リリーさん。あの女性がアンさんの居場所を知っているのでしょうか」
「男の口ぶりからするに、あの女がアンと会っていると見て間違いないと思います。問題はどうやってそれを吐かせるか、で... 」
「お茶が入りましたよお!熱いので気を付けてくださいね」
リリーが喋っているのを遮ってくるように、店員の女の子がお茶を持ってくる。それぞれ四人の前にティーカップを置くと、四角いトレーを両手に抱え、ニコニコと笑っている。
これは... 色と香りからいって紅茶かな?やたら上品なカップだな。あまり飲んだ事はないけれど、まあとりあえず一口... と思ったが、リリーがカップを口に近づけたままこちらを睨んでくる。
あ、これ飲んじゃいけないんですね。とりあえず飲むふりだけ...
するとリリーが、向かって右に視線をずらす。リリーの視線の先、俺の右にはクルミ王子が座っていて、今まさに紅茶に口をつけようとしているところだった。
やべ...
「クルミさん、きょ、今日のお昼... は、どうしましょう... 」
店員の女の子に見られないように、クルミ王子の持っているティーカップを見ながら激しくまばたきをして、サインを送る。
伝われえ!!
すると、クルミ王子は少し静止し、笑顔で俺を見る。
よし、伝わったな。
だが、俺の腹芸はリリーほどは上手くないのか、はたまた変なメッセージを俺から受け取ったのか...
ずずっ...
茶をすする音が、右から聞こえてきた。’
駄目だったあああ!
「お茶は美味しいですか?渋すぎませんでしたか?」
「レディーの淹れた紅茶を飲みたいのはやまやまなんだがね、本当に不幸な事に、腕を怪我してしまっていて自力では飲めないんだ。リリー、飲ませてくれないかい?」
「ええ良いですよお?さあ熱~いお茶ですよ、一気に流し込むのでお口をお開けくださあい」
両腕をだらんと垂らした笑顔のカズ王子の口に、ティーカップを押し当てる笑顔のリリー。
お前らもう好き勝手やってろ。
リリーの余裕っぷりから即死レベルの毒では無い事は分かるが、一応は王子だろうが。
そんな馬鹿やってる二人の様子を、微笑ましく見届けている店員の女の子だったが... 何かが倒れる音がすると、急にその笑顔が消える。
「一人だけ、でしたか。こんなに小さな女の子を連れてくるだなんて、随分となめられたものだと思いましたがなるほど。なめていたのは私のようですね」
音が鳴った方向、店員の女の子の視界の先を確認すると、クルミ王子がテーブルに突っ伏し、目を閉じているのが見える。
し、死んで... いや、寝ているな。いびきをたてている。
「まあ、殺人レベルの毒ではないですよね。ですがこいつを無力化しても後三人、どうしますか?」
「手負いの貴族、子供、そして非戦闘員の男... 」
すると店員の女の子は、腰から片手にハサミを取り出し、開いてそれを顎の下に、もう一方の手をチョキの形にしてへその辺りに構え、笑顔で続ける。
「全員、やっつけてやりますよ」
*********
大剣持ちの少女は、三本目の串焼きに口をつけていた。
杖持ちとメイド服の少女たちはすでに自分たちの分を食べ終わっていたようで、二人で話をしている。
「え、衛兵の方に話を聞くといっても、具体的にどんな事を聞けば良いのでしょうか」
「そうですね... 魔獣の発生時間、場所、目撃情報などが上げられると存じます。アン様にたどり着くためには、その中でも魔獣の発生地点を聞くのが手っ取り早いかと」
ふと、大剣持ちの少女は立ち止まり、串を口に突っ込みながら路地裏の方を眺める。話し込んでいる二人は、それに気付かずに進んでしまう。
「そ、そうですよね。アンさんは能力で遊ぶと言っていましたし、北の町で待っているとも言っていました。恐らく魔獣の件を追っていけば、簡単にたどり着けますよね」
「はい、そうだと存じます。ですが、麻薬の件も気にかかりますね。カズ王子殿下の口ぶりから察するに、魔獣の件と時期が重なっているのでしょう」
「ア、アンさんが絡んでいるかもしれないってことですか?」
メイド服の少女は一拍置き、続ける。
「植物から麻薬の成分を抽出することは、アンさんには容易いことかもしれません。死霊であるアンさんが広めるとなると、どうしても人間が、それも組織的な人間がアンさんに肩入れして... 」
「なあメイ、あれは放っておいていいのか?」
ここでようやく、二人は大剣持ちの少女が立ち止まっている事に気が付く。
「どうかなさいましたか、タイランお嬢様?」
二人で大剣持ちの少女に近寄り、路地裏を確認すると、大剣持ちの少女が見ていたのは一人の男であるのが確認できる。
その男はいかにも浮浪者といった風貌をしていて、壁のとある一点をジッと見つめ、静かにたたずんでいる。
「あの浮浪者が一体... 」
するとその男はにやりと笑い、見つめていた壁を拳で殴る。すると砂ぼこりと共に打撃音が響き、パラパラと破片が落ちる。
「あいつ、なんかやばいぜ」
「そのように見受けられますね」
大剣持ちの少女は残っていた肉を一気に口に入れ、咀嚼しながら背中の大剣を抜く。
「タイランお嬢様、気絶させないようにお願いいたします」
大剣持ちの少女は不満げに大剣をしまう。
そして男の元に素早く駆け、拳を振るう、が... 男の風貌からは想像もつかないほどの体の柔軟さを見せつけるかのように、素早く体勢を低くし、大剣持ちの少女の足を薙ぎ払う。
「タイランお嬢様、恐れ入りますが、お戯れはお控えください」
「痛って... 油断してただけだ!」
受け身を取った大剣持ちの少女は振り返り、自身の従者に言い返す。
男から目を離した少女のそんな隙を、男は見逃すはずもなく、低くした体制のまま男は少女の後頭部に向かって拳を振るう。
だがどうやってその拳を感じ取ったのか、少女は頭の位置を下げ、拳を避ける。
「今俺が!メイと話していたのがっ!見えねえのかあっ!!」
男のその行動に怒りを露わにするよう、大剣持ちの少女は後ろ足で男の顔面を狙い... 綺麗に顎に命中する。
「ぐふっ!?」
すると男の全身から力が抜け、地面に倒れ込む。
「あ、ごめんメイ。綺麗に入っちゃったぜ」
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