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【6】聖女 服を買う
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あ、そうだ。おデートの前に、モルガナさんに聞かなきゃいけないことがあったんだった。
「あの~、聖堂の棺が無くなっちゃった事についてなんですけど……」
『っ!!』
恐る恐る上目に問えば、何故かジェイドと会長二人が揃ってびくりと身を震わせた。
「あ、あのねルチルちゃん。ちょっと聞いて欲しい事があるんだけれど」
「は、はい」
モルガナさんがこちらに近づき、腰をかがめて目線を合わせる。
「今ね、うちの町の売りは『眠れる聖女とダンジョンの町』なの」
「はぁ」
ダンジョンの町かぁ。だから堅気じゃないっぽい人がたくさん居たのだろう。
「確かにあの棺は空っぽだったかもしれない。でもね! 中には夢と希望が詰まっていたのよ!」
「……はい?」
「というわけでね。今、商工会の会長と話して、新たに夢と希望を入れる箱を作るってことに決まったから」
それってつまり、客寄せユニコーンとして偽物の棺を作るって事かい?
「あの……それでいいんですか……?」
いや、良いなら良いんだけれど……。
もう一度棺の中に戻れと言われても困るし。
わたしの言葉に、モルガナさんは笑みを深くしてこちらの肩にぽんと手を乗せた。
「ルチルちゃん、どんなお洋服が欲しいのかしら? ワンピース? ドレス? 一緒に靴やアクセサリーも買いましょうね。お姉さんお金なら有るのよ」
「いや! 大丈夫ですよ! 誰にも言いませんから!」
顔を引きつらせて首をぶんぶん振ると、モルガナさんは何故かちょっと残念そうな顔をした。
「あら、欲のない子ねぇ」
「会長、オレ新しいブーツが欲しいんスけど」
「おめーには聞いてねーよ」
「あの~、聖堂の棺が無くなっちゃった事についてなんですけど……」
『っ!!』
恐る恐る上目に問えば、何故かジェイドと会長二人が揃ってびくりと身を震わせた。
「あ、あのねルチルちゃん。ちょっと聞いて欲しい事があるんだけれど」
「は、はい」
モルガナさんがこちらに近づき、腰をかがめて目線を合わせる。
「今ね、うちの町の売りは『眠れる聖女とダンジョンの町』なの」
「はぁ」
ダンジョンの町かぁ。だから堅気じゃないっぽい人がたくさん居たのだろう。
「確かにあの棺は空っぽだったかもしれない。でもね! 中には夢と希望が詰まっていたのよ!」
「……はい?」
「というわけでね。今、商工会の会長と話して、新たに夢と希望を入れる箱を作るってことに決まったから」
それってつまり、客寄せユニコーンとして偽物の棺を作るって事かい?
「あの……それでいいんですか……?」
いや、良いなら良いんだけれど……。
もう一度棺の中に戻れと言われても困るし。
わたしの言葉に、モルガナさんは笑みを深くしてこちらの肩にぽんと手を乗せた。
「ルチルちゃん、どんなお洋服が欲しいのかしら? ワンピース? ドレス? 一緒に靴やアクセサリーも買いましょうね。お姉さんお金なら有るのよ」
「いや! 大丈夫ですよ! 誰にも言いませんから!」
顔を引きつらせて首をぶんぶん振ると、モルガナさんは何故かちょっと残念そうな顔をした。
「あら、欲のない子ねぇ」
「会長、オレ新しいブーツが欲しいんスけど」
「おめーには聞いてねーよ」
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