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三章

過去の記憶ときっかけ

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りり、おーきくなったらぼくがむかえにきてあげる

………………ほんとに?

うん、ほんとだよ。
おおきなばしゃにのって、かっこよくなって、つよいおとこになってからからむかえにいくよ

じゅうぶんかっこいいわ

でも、りりをまもれるれーせいなおとこじゃない

ならわたしがもっとつよくなればすぐにむかえにきてくれる?

どうしてそう思うの?

だってもう…かっこいいし……

うーん…すぐにはむりかなぁ…

そっかぁ…

おちこまないで。りりがつよくなるんだったらぼくはもーっとつよくなってむかえにいくよ

…じぶんのことはじぶんでまもれるようになるわ

たのもしいね。でも、ぼくにもりりをまもらせてね

ふふ、たのしみだわ!

まっていて、りり…




























「おい、イアン」


突然現実世界に引き戻され、ハッとする

疲れて寝落ちしてしまったのだろう

計算式が途中で止まっている



「あ、悪い。」


扉の向こうからシルヴァンの声がする
何の用だろうか


「もう、夕食の時間だ。他の奴らに紹介も兼ねて今回は食堂に行くから、支度しろよ」


「夕食」と言われて、窓の外を見るとかなり日が暮れていた
かなり寝てしまった
勉強は、ほとんど進んでいない
本当は勉強したいが、夕食を取らないと暴走してしまう



「分かった、すぐ支度する」


幸せだった日々の記憶をしまい込み、気を引き締めて部屋を後にする









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「シルヴァン!こっちだ!」

食堂に行くと、奥の方から金髪の青年がこちらに声をかけてきた

「イアンもここに座れよ!」

(…良い奴だわ)








「イアン王子もご一緒でしたか」

「…」


隣には、2人の青年が座っている

(この優男みたいな奴も、一昨日いたな…)


少し垂れ目気味で薄緑の髪色。
どこか親近感の覚える男だった





こいつに関しては害は無いだろう
問題は…











「ジーク、相手は王子だ。俺ら貴族とは違う。無視するな」



こちらを全く見ようとしない男が1人

癖のない銀髪と冷たい印象のある深い青色の瞳の青年

…ここまで来ると、もうどうでもよくなってしまう



「食事は、どこで選ぶんだ?」

「あそこに人が立ってるだろ。あの人に食べたいものを言えば作ってもらえる」

「メニューは?」

「…ついて来い、教えてやる」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「流石、シルヴァンですね。面倒見がいいです」

「兄貴みたいだもんな」

「頼れるお兄さんですねぇ」

「ホッコリするな!」

「…」

「……いいんですか?ジーク」

「…何が」

「イアン王子は、親しみやすい人です。先日の件は何とも言い難いですがそれはそれでユーモアがありますし…。
それに彼は王子です。自国の皇子がこんな近寄りにくいせいで王族と繋がりを持ちたい者は全員彼に集まっていきますよ」

「…構わない」

「はぁ…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「うっわ、美味しそう…」

「意外に食べるんだな、お前」

「食べないと暴走するからなー」

「ん?」

「デミグラスハンバーグですか」

「美味しいよな、それ!」



シルヴァンに教えてもらい、ハンバーグをチョイスする

皿に乗せられたハンバーグは、たっぷりデミグラスソースがかけられており見てるだけでも幸せになれる



慎重に口の中へ入れると、肉汁が溢れ出してリリアーヌを幸せにしていく
It's delicious


饒舌にならないように感情の表現を表情のみに留める








るんるんでハンバーグを綺麗に切って食事をしていると、計4つの視線に気がついた
いや、もっと沢山の視線がこちらに向いているように感じる


「…何?」


「いや……」

意外にも1番初めに声を発したのは、皇子だった









「…バナナ」

「は?」


向こうは、困惑しているように見えるがこっちの方が困惑してしまう
なぜ急にバナナ?



「ハンバーグ…潰さないのか?」

「いや、潰さないわ」

何故そんなおかしなことを言うのか
普通に切って食べるだろう
それともそのまま、かぶりつくとでも思っているのだろうか

この皇子、大丈夫か?




「…先日は、潰していただろう」

「…あぁ、あれか。あれはまぁ、ワイルドさがどんな風に出るのか試してたんだよ」

((((((((((((((((???????????))))))))))))))))


その場にいた数々の天才達は、王子の言葉を全く理解出来なかった



「ほら、バナナってワイルドさがあるだろ?だから、潰して食べたら…かっこいいかなーって思っただけ」

(不思議だ…同じ人間のはずなのに生態がこんなにも異なるなんて)
(エピスィミアの人間は、大体こんな感じなのか…?)
(これは別の境地を生きる方が言う言葉だわ…。感動して涙が出そう)
(やっぱり頭がやられてるんだな…)
(これは、テリビル寮へ直行だな。アイツらとは気が合うだろう)
(…やばい奴がいる)


この時、天才達とって人間の奥深さについて考えるきっかけとなった














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