鷹の翼

受け継ぐもの

６P

　先に逝ってしまっては意味がない。「俺のせいにするな」と、黒鷹から譲り受けた結い紐で髪を結んだ和鷹が笑ったような気がした。

　これからのことはこれから、追々決める。今はとにかく今やらなければならないことをやる。

　そして、今ある幸せを噛みしめたい。こんなにも穏やかな、温かい心地になるのは初めてだった。

　新薬が合っているとはいえ、病気が進行して弱っているのに。黒鷹は強く逞しくなった。夫に、父親になったからだろうか？

　血縁関係はない。しかし、近藤には今の黒鷹に夜鷹の姿が重なって見えた。大きくなった。本当の意味で部下達から慕われ、そして妻と子を愛し愛されていると。

　笑った。近藤に見つめられている黒鷹は和鷹の墓石に触れたまま、くしゃりと笑った。

「あぁ、そんなに働いたら寿命が縮んじゃうよ」

　震える父の声に不安を感じ見上げた紅鷹の頬にポタリ、大粒の熱い雨が落ちた。



　終わり。