鷹の翼

那月

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受け継ぐもの

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 あと、高遠が斎藤を訪ねて屯所に来ることもまぁある。行くまでは良いがビビッて誰にも見つからないよう侵入し、大抵は隊士に見つかるか松原が雪にもらった子猫に見つかるか。

 右目を失明して眼帯をつけている彼は右側が死角。弱点を克服するためにもと斎藤と手合わせをすることも、彼の気が向けばたまにある。

 実は甘味好きという共通点がある2人はこの前。店であんみつに舌鼓を打っているところで、桜鬼と原田と永倉に偶然会った。

 あぁ、出会ったというより、見つかった。昼間っから出来上がっていた原田に声をかけられた斎藤が一瞬のうちに姿を消したのはまぁ、うん。

 おかげで2人分の代金を支払うことになってしまった高遠はかなり怒っていたな。「てめぇのせいだっ!」とか言って、原田の金子をくすねようとして桜鬼に絞められていた。

 原田と永倉は以前のようにいつもの店で桜鬼と酒を酌み交わしたり、3人で誰が1番枝豆を食べられるか競ってみたり。

 原田が桜鬼との約束通り、動けるまで回復すると想いを寄せている根付け問屋の娘に熱い想いを打ち明けた。

 結果は、玉砕。すでに旦那がいるとのこと。残念だったな。まぁ、フラれた者同士の桜鬼と完全に潰れるまで呑んで。2人の介抱を永倉が引き受けたわけだ。

 新選組としては真面目に働いているものの、桜鬼と飲む頻度が格段に上がった原田に毎回雷を落としている土方。すっかり胃薬が手放せなくなっている。

 たまに松原の子猫に部屋を荒らされて子猫を追いかけ回しているのを見かけるが。いかんせん猫はすばしっこい。

 結局は諦めて痛む胃を押さえ、自分で茶を淹れて一息つく。それとたまに、まだ残っている雪の落とし穴にはまっているのも土方だ。

 苦労者はいつまでたっても苦労者だということか。彼にも早く、春が来ればよいのにと密かに願っているのが近藤勇。

 彼は今日、花と線香を手に鷹の翼の屋敷を訪れていた。

「お久しぶりです、近藤さん。この前の連続強盗事件、それから昨日の辻斬り事件での活躍はお見事でしたね。お疲れ様です」

「あれは犯人が逃げた先にたまたまわしがおっただけだ。わしではなく、誘導してくれた優秀な部下の手柄だな」

「とか言っちゃってぇ、そうなるよう予想して仕向けたのは局長さんでしょう?オイシイところばーっかり。ちぃには全部お見通しなのよ」

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