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夫婦と親子と主従の因縁
8P
しおりを挟むと、別の方から近藤の、開いている財布の中に何かが投げ込まれた。金子だ。わずかな財布の口に吸い込まれるようにして金子が入った。
投げたのは、苦笑いを浮かべる小紅。小紅は戦闘中、一旦財布を奪い金子を抜いて再び近藤の懐に戻していたのだ。
黒鷹や、盗人の夜鷹よりも盗みが上手いのかもしれない。他の3人がそう思うほど、小紅の盗みは誰も気づかなかった。ちょっと引いた。
「テメェまでそんなことをするたぁ、すっかり毒されちまったな」
「い、1度やってみたかったんです。ドキドキしましたがまさか近藤さんを相手にできるとは思わなくて、自分でもかなり驚いています」
だめだ、小紅の赤黒い瞳が爛々と輝いている。あぁ、上手くできて良かったですね。黒鷹が手を叩いて喜んでいるぞ。
近藤は苦笑を浮かべ、中身が正しくなったのを確認すると財布を懐へ。土方も守り袋を懐に戻そうとして、止めた。
黒い瞳でジッと見つめ、何を思ったのかポイッと放り投げる。そして素早く刀を一閃させると、薄水色の守り袋は真っ二つに。
小紅が「あっ」と声を上げた、その一瞬で断ち斬られた守り袋は地面に落ちる。
紅花、ハナはもう死んでこの世にはいないのだから。つながりを断つため、未練を残さないためにそんなことをしたのか。
守り袋など神様からの授かりものは1年が過ぎると、元の神社に返すのが習わしだ。それを、なにも斬らなくてもいいだろうが。バチ当たりめ。
小紅は胸がチクリと痛んだ。何とも言えない罪悪感に土方から目を反らす。が、首を横に振ってまっすぐ目を向ける。自分はもうハナではない。
「きっとバチが当たりますよ」
「バチが怖くて鬼の副長が務まるかよ。さぁ、もう話すことはねぇ。ここからは全力をぶつける刀で語り合うんだ。そうだろう、近藤さん?」
「そうだな。わしもスッキリした。さて黒鷹よ、お前がすでに重傷を負っていようが不治の病を背負っていようがわしは殺すつもりでゆく。覚悟せい」
「臨むところだよ。この足場にもだいぶ慣れてきたし、僕も今度こそ近藤さんの首を取れるように本気で行くから。ゴホッゴホッゴホッ……!」
本当に容赦なかった。背を曲げるほど酷く咳き込んだ黒鷹に、近藤と土方が同時に襲いかかったのだ。
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