鷹の翼

那月

文字の大きさ
上 下
364 / 386
ねこねここねこねこ

6P

しおりを挟む

 一生懸命に戦ってそれでも負けてしまえば仕方ない、死を覚悟している。けれど、こんなところで潰える鷹の翼ではないと信じている。

 鷹の翼の皆がそれぞれ仲間を信じているように、猫丸もまた皆の強い想いを信じている。だから、どんなに力の差が歴然な強敵でも諦めない。

 猫丸は仲間を、家族を信じている。山猫に頼らなくてもきっと松原を倒せる。証明してみせるんだ!

 猫丸は大きく息を吸い込み、力で振り下ろされる薙刀に脇腹を斬られながらも体をひねって松原の手から脱出。着地と同時にギンッ!と睨み上げると物陰から複数の影が飛び出した。

「なっ、また猫か!くっ……邪魔をするでないッ!」

 飛び出し、松原に襲いかかったのは30匹ほどの猫。1度は戦いに恐怖し逃げていた猫達が、帰ってきた。

 本当の意味で覚悟を決めた今の猫丸になら全てを捧げられる。どんなに怖くても立ち向かっていけると、猫丸の瞳の奥に燃え上がった炎を感じたから。

「丸は鷹の翼の猫丸。たくさんの猫達を使役する、最年少の隠れた特攻員。猫被りな丸の本当の姿、その目に焼きるけろにゃーッ!!」

 ほんの一瞬、猫丸が大人になった姿が見えた。声が聞こえた。もちろんそれは現実ではない幻なわけで。

 薙刀を振り回し力づくで猫達を払いのけた松原に、今度は猫丸が襲いかかる。自信に満ちた2つの黒い瞳が、松原の目に映った。

 まるで別人。伸びるはずのない暗器の爪が伸びているのか?いや、そんなはずはない。だが伸びているように見える。その爪が松原の胸を斬り裂き、立て続けに繰り出された蹴りは薙刀で防がれる。

 目の前でシュンッと姿を消すと今度は間髪入れずに猫達が再び四方八方から襲いかかり、松原の動きを封じる。

 だが、松原もやられてばかりではない。これでも新選組の四番隊隊長なのだ。猫達に噛みつかれ鋭い爪で引っ掻かれながらも蹴り飛ばし、薙刀で斬りかかる。

 蹴り飛ばされた2匹の猫を抱き留め、すぐにまた姿を消す猫丸。次の瞬間松原の頭上に出現するとさっき抱き留めた猫2匹を上から仕掛け、自分は着地。

 頭と肩に噛みつかれながらも松原は猫丸の着物の裾を踏みつけ、逆さに持ち替えた薙刀で猫丸の右肩から手首までを斬りつけた。

 その、薙刀を握る手に猫丸がガブッ!と噛みつく。鋭く尖った八重歯が、他の歯も皮膚を突き破って歯が根元まで埋まるほど強く強く噛みつく。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

戦国の華と徒花

三田村優希(または南雲天音)
歴史・時代
武田信玄の命令によって、織田信長の妹であるお市の侍女として潜入した忍びの於小夜(おさよ)。 付き従う内にお市に心酔し、武田家を裏切る形となってしまう。 そんな彼女は人並みに恋をし、同じ武田の忍びである小十郎と夫婦になる。 二人を裏切り者と見做し、刺客が送られてくる。小十郎も柴田勝家の足軽頭となっており、刺客に怯えつつも何とか女児を出産し於奈津(おなつ)と命名する。 しかし頭領であり於小夜の叔父でもある新井庄助の命令で、於奈津は母親から引き離され忍びとしての英才教育を受けるために真田家へと送られてしまう。 悲嘆に暮れる於小夜だが、お市と共に悲運へと呑まれていく。 ※拙作「異郷の残菊」と繋がりがありますが、単独で読んでも問題がございません 【他サイト掲載:NOVEL DAYS】

処理中です...