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最初の酒は甘かった
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しおりを挟む「チッ!クソッ、やっぱり強いなぁ桜鬼は。生き甲斐って、まさか塩茹でした枝豆とか言わないよなぁ?ぐあっ!」
「そんな色気のないことなわけないでしょ。らあっ!僕達はあの子のおかげで変われた。僕もアイツもあの子の笑顔のためなら何でもできる。叶わない恋だっていい、あの子のことを想い続けるって決めたんだッ!」
「あまり良くない生き甲斐だなっ!?あの子の旦那さんに殺されねぇように、しろよッ!」
「覚悟の上だッ!!僕は小紅ちゃんのことが大好きだからッ!!」
うわお、恥ずかしい。もしかしたら彼女の耳にも届いているかもしれない。もしくは悪寒が走るか。
この桜鬼、小紅と結ばれることは確かに諦めているが、変態が悪化している気がする。見ろ、激しい攻防戦を繰り広げながら原田がドン引きしている。
まぁ、色々悩みに悩んだ結果だろう。ある意味、もっとも桜鬼らしい?
2人の攻防戦はどんどん熱く加速し、激しさを増す。近距離の桜鬼と遠距離の原田。攻撃の振りが大きい原田が距離を空けようとすれば桜鬼がすぐさま詰める。
強制的に、原田は槍を短く持って応戦。ほんのわずかな隙をついて桜鬼に大きな一撃を与え吹っ飛ばすとようやく本来の持ち方に変え、大きく振って風の斬撃をお見舞いする。
見えない風の斬撃。かなり意識を集中させないと見えない。すでに意識がもうろうとしている桜鬼は見切ることを諦め、槍の動きから予測して体を動かすことにした。
避けられるはずがない。ほとんどを腕や足にくらい、けれどやはりかなりの手練れか、致命傷となる頭や首や胸は防いだ。
同時に、桜鬼は斬撃を繰り出しながら近づいてくる彼を視界に捕らえ何かを投げつけた。
いきなり飛んできた物体を反射的に槍で叩き斬った原田。「ハッ」と息をのむ。それは、原田の財布。
「僕の本業、忘れないようにね?それにしても持ってないね。ちょっと、少なすぎない?」
「こんな時にそんな手際の良さを見せつけるなよな。今朝、罰金で土方さんにごっそり取られちまったんだよ。おかげで身軽になったってな――」
真っ二つになった財布と、地面にぶちまけたわずかな金子に苦笑をこぼす原田は油断した。すぐ目の前に、桜鬼がいる。
「僕から目を反らしたらだめだよ、原田。今は、殺し合っているんだから」
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