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約束
2P
しおりを挟む音のない、素早い動きは鳶と同等かそれ以上か、桜鬼と雪には見えていなかったようだ。夜鷹ゆずりの素早さか。
高遠のこめかみを冷たい汗が流れ落ちる。まさか、こいつも手加減してやってるんじゃないだろうな?と。
「さ、3本勝負だぁっ!」
今ので小紅が決して侮れない強者だと実感した。だから2戦目は一切の手加減はせずに目を凝らして挑んだ。
けれど、高遠の赤い目に小紅の動きを捕らえることはできない。動きを読んで先に繰り出したみねうちが小紅の手を叩いたが、左手。
痛みに顔をしかめた小紅は地面の土を蹴り上げて一旦跳び下がり。土が目に入って高遠がひるんだ隙に背後から、と見せかけて正面から短刀を突きつける。
ピタリ。土が入って涙がにじむ真っ赤な目の前に、短刀の切っ先。スレスレで止められるのは小紅が、それなりに手練れだという証拠。
また小紅の勝ち。自棄になった高遠がもう1度だと勝負を挑んでさっきよりはいい勝負になったものの、やっぱり負けてしまったところで黒鷹の「止め」が入った。
何度やっても小紅に勝てなかった腹いせに「桜鬼ぃっ!てめぇ、俺様と手合わせしやがれぇっ!」と、桜鬼との手合わせを始めてしまった高遠。
面倒くさそうに「えぇー」と笑いながらも鉤爪を手にはめている桜鬼は、やはり優しい。ニコニコ笑っている。
「お疲れ、小紅ちゃん。これで手ぇ冷やしとき?あいつ、力緩めとっても結構痛いんやから腫れるで」
みねうちで叩かれた左手に水で冷やした手拭いを巻いてくれたのは、背後霊のように後ろにぴったり鳶がくっついている雪。
「小紅さん、強くて格好良かったのにゃー。丸より速い、すごいっ」
「いえ、やっぱり私より高遠さんの方がお強いですよ。手加減をしていたようですし、黒鷹様にあんなことを言われたからわざと負けてくださったんです」
「え、僕何か言ったっけ?それにしても、僕の大事な大事な紅ちゃんに怪我をさせるなんて高遠。あとでお仕置き、しないとだねぇ」
黒鷹がわざと声を張りニヤリと黒い笑みを浮かべると、高遠がビクゥッ!と肩を震わせる。その隙に桜鬼に蹴り飛ばされてしまった。
彼は「手加減しねぇ」とは言っていたのに最後まで、特に最後はかなり手加減していた。
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