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白と黒と光と影
3P
しおりを挟む「んう、む…………や、すまなんだ。某は三上浩之進。この、三上城の城主をしておる。それは某の嫁の佳代、そっちは侍女だ。城といっても小さくてな、跡継ぎもおらんで正直困っておる」
「娘はちょうどあなた達と同じくらいの歳よ。婿養子も考えてるから、あなた達のどちらかがなってもいいのよ?大歓迎だわ、ねぇあなた?」
「良いな。恩を返せるものがないというのなら、ぜひとも養子に――」
「それじゃあ恩返しにならないよ。助けてもらった上に僕達の居場所をもらうなんて、僕はただ兄さんと一緒に生活できればそれでいいのに」
「そうだよ、勝手に話を進めないで。どうせ冗談だろうけど、僕達は、コホッコホッ!自分達で生きる道を作るためにあの家を出たんだ」
黒鷹は知っていた。近くに三上城という、城と呼ぶには首をひねりたくなるくらい小さな城があり、その城主が三上浩之進だと。
なら、ここは三上城の中なのか。男のしゃべり方からして町人ではないと思ってはいたが、まさか城主だとはな。
笑いながら話を盛り上げていくお気楽な夫婦の言葉を遮った白鴇は、城主と知って恐縮したのか「すみません」と首を振る。
必要以上に大人の手は借りない。そう決めていた黒鷹は目を反らし「助けてもらったお礼は必ずします」とだけ呟いた。
「……お前達を着替えさせた時、あの家で何があったのかは察しがついた。某達を信じなくともよい。姿を消しても追おうとは思わぬ。だが、ここにいる限り某達はお前達を我が子のように世話する。そう決めたのだ」
そう言ってまたおにぎりをかじる浩之進。それはただの哀れみに過ぎない。それでも彼は決めた、揺るぎない熱い想いに2人は、顔を見合わせる。
浩之進もその嫁の佳代も、2人が知っている大人達とは違う。命の恩人だから、優しいからというだけではない。
纏っている雰囲気というのだろうか?出会って5日、しかし会話をしたのがこれが初めての2人は。子供ながらに久しぶりの安心感を感じて力が抜ける。
まだわからない、何か裏があるのかもしれない。でも、もしかしたらこの人達なら。心を許せるかもしれない。
もしかしたら、本物の家族になってくれるかもしれない。そう、期待を込めて黒鷹と白鴇は、笑った。
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