221 / 386
出遭う
9P
しおりを挟むただの行きずりの子供だと思ったのだろう。2人を腕に抱えたその男は納屋を飛び出し、何度も声をかけながら走った。
どうやって乗せたのか、意識がもうろうとしていた黒鷹は馬に乗せられていたことだけ覚えている。2人を抱えたまま馬の手綱を握っていたのか?
時折、白鴇のうめき声が聞こえたので、黒鷹はよくわからない状況でもなぜか安心した。まだ生きている、と。
それも最初だけだった。途中で力尽きてしまったようで、それから次に目が覚めるまでの記憶はない。
どこに連れてこられたのか?あれは誰だったのか?もしかしたら夢だったのかもしれない。それでも、黒鷹は生きていた。
目を覚ますとまず先に天井が見えた。ミシミシと体が軋んで、ゆっくり首を横に向けると左側に白鴇の横顔が見えた。
「んっ……う、うぅ…………あれ?ここ……あ……兄さ、ん」
白鴇もすぐに目を覚ました。温かい布団の中で寝かされている2人は果たして、ここが現実なのかと疑っているようだ。
しばらく見つめ合って、頭だけ少し動かして周りに目を向けて。そして、2人の枕元に人影を見つけてビックリ。
ビクゥッ!!と、布団が跳ね上がるほどかなり驚いた。が、その人影は動かない。よく見ると、うつむいて寝ている。男だ。
とりあえず、ここは現実らしい。そしてこの人は一体誰?ここはどこだ?もしも危ない人だったら早く逃げなくては。
手を動かし、足を動かし、布団から出ようと試みるも上手くいかない。まるで自分の体ではないかのように動かないのだ。
黒鷹も白鴇もモゾモゾ動いて動いて、その音でついに男が目を覚ます。顔を上げて、眠たそうにゆっくりパチリパチリ瞬きをして黒鷹を見つめる。
完全に目が合ってしまい、黒鷹は恐怖と焦りで目が離せない。瞬きさえできずにジッと見つめ返しているうちに男の瞳にハッキリした光が現れた。
「うわぁっ!?お、起きておる……や、大きな声をあげてすまなんだ。ここは安全ゆえ、そう警戒せんでよい。体が痛むだろう?まだ横になっていなさい。なにせ、丸々5日ほど眠っておったのだからな」
2人以上に驚いた男は優しく微笑み、伸ばした手が2人を布団の中に押し込む。力強くて、抵抗もできなかった。
その声には聞き覚えがあった。納屋で最期を迎えようとしていた時に聞いたあの声。なら、この男が黒鷹と白鴇を助けてくれたというのか?
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる