鷹の翼

那月

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出遭う

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 猫丸はひそかに周囲に待機させていた猫達を解散させ、暗器を外すとトコトコと黒鷹のあとを追う。

 雪は眠気でフラフラなもうすでに目を閉じてしまっている鳶を支えながら、たまに寝落ちてしまわないようド突きながらゆっくり歩く。

 雪の武器はその体なのだし、ド突かれるたびに呻いている鳶から武器を全て外そうものなら。体のあちこちに仕込んでいてとんでもない量になるのでこの2人は免除。

 残ったのは「罠じゃねぇのか?」とまだ疑っている土方と、黒鷹の背を見つめる近藤と、そして黒鷹の刀を大事そうに抱える小紅。

「恐れ入りますがお預かりさせていただきます。お話が終わるまでは双方にお返ししませんので、ご容赦ください」

 深々と頭を下げた小紅は2人から刀を預かり、1歩下がる。案外、素直に刀を渡したものだ。刀は武士の命だというのに。

 土方のは近藤が無理矢理奪ったに等しいが、手放したのはそれほど事の重大さを理解しているからだろう。

「潔く死んだと思っていたんだがな、寝返りやがったのか。ハナ」

「死にましたよ、ハナと呼ばれていた紅花は。今、ここにいるのは鷹の翼の頭領である黒鷹様の小姓、小紅です」

「ハッ、言うようになったじゃねぇか。間者ではなく正式に鷹の翼の一員になったからには、これからはこっちも容赦しねぇからな」

「わしとは久しぶりだな、元気そうで何よりだ。敵になってしまったのは残念だが…………そうか、良い居場所を見つけたようだな」

 腕いっぱいに何本もの刀を抱えた小紅は少し悲しげにうつむくと、しかしすぐに顔を上げて「はい!」とニッコリ微笑む。

 これに土方は「くっ」と嫌そうな顔をしたが。しかしすぐに「生意気になりやがって」と、笑みを見せた。

「そうか、良い顔になったな。おまえはほとんど感情を表に出さなかったから、父として嬉しいぞ。あぁ本当に、綺麗な良い娘に育ったものだ」

 近藤の口から「父」の言葉が出てきても、もう動じない。親バカ発言に赤面しつつも「つ、ついてきてください」と背を向けて歩き出した。

 近藤の本心。たとえ血のつながりがなくとも近藤は父親として、成長した小紅を誇らしいと思った。そして小紅の、巣立ちを感じた。

 はたと足が止まる。近藤は、何本もの刀を抱えフラつきながらも必死に黒鷹の後を追う小紅の背中に見たのだ。バサッと大きく広がる、鷹の翼を。

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