210 / 386
おとうととおとうと
7P
しおりを挟むこの曲者の本当の任務が和鷹か鷹の翼の誰かをおびき出し、差し違えることなら。あとから現れた5人の忍は曲者が任務を放棄して逃げださないようにするための監視か。
もしくは今回のように、おびき出した鷹の翼が1人でなく差し違えが難しくなった場合の手助けをするためか。
何にせよ、彼らの任務は完了してしまった。しかしなぜ?犠牲になったのは鷹の翼の和鷹と、新選組の隊士。
ついに新選組が鷹の翼を一掃するために仕組んだことなのか?隊士を斬ったと言いがかりをつけ、一網打尽に。
しかし、いくら鷹の翼に困らされているとはいえ隊士の命を犠牲にここまでするだろうか?それに、あの5人の忍は新選組の仲間には見えない。
人間らしい心を取り戻しつつある鳶の心がザワザワとざわめき、胸を押さえながら黒鷹に目を向ける。彼は、和鷹の胸に刺さっている小太刀に手をかけていた。
「御用改めである、神妙にいたせっ!……って、これは一体どういうことだ?待て動くな!神妙にしろと言ったはずだ、動けば即刻その首をはねてやる」
何というか、見計らったかのように屋敷の反対側の茂みから新選組のお出ましだ。
すかさず高遠が抜刀しながら斬りかかろうとしたが、新選組の先頭にいる男が脅すより早く桜鬼が肩をつかんで引き下がらせた。
が、その高遠の肩をつかんでいる手にグッと力がこもる。高遠が痛みに振り向くほどに、桜鬼は怒りを露わにしていた。
「副長、アレはうちのっすよ。最近怪しい行動が見られてたんで監視をつけてたんすけど……」
「初耳だな。この俺への報告を怠るとは、あとで必ず部屋に来い。おい黒鷹、何があったか説明しやがれ。場合によってはてめぇらを全員連れて行く」
先頭に立っている男――新選組の副長、土方は傍らに控える山崎が指さす曲者がすでにこと切れているのを悟ると抜刀、黒鷹にキラリ煌めく切っ先を向ける。
御用改めだと言っていたし、驚いていた様子を見るとこれは曲者の単独行動か?いや、それではただの狂人だ。目的がない。
土方も一目見てわかっただろう。これは、異様な光景だと。
「俺が……全て、見ていた。その男……数日前から――」
ヒュオッと周りの空気が一気に冷えたような感じがした。黒鷹だ。和鷹の遺体を抱きしめたままの黒鷹の体から、ドロドロとしたどす黒い殺気がにじみ出ている。
土方の声を耳にした途端、叫ぶのをやめ流していた涙が止まった。桜鬼達ですら怯むほどの殺気。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
戦国の華と徒花
三田村優希(または南雲天音)
歴史・時代
武田信玄の命令によって、織田信長の妹であるお市の侍女として潜入した忍びの於小夜(おさよ)。
付き従う内にお市に心酔し、武田家を裏切る形となってしまう。
そんな彼女は人並みに恋をし、同じ武田の忍びである小十郎と夫婦になる。
二人を裏切り者と見做し、刺客が送られてくる。小十郎も柴田勝家の足軽頭となっており、刺客に怯えつつも何とか女児を出産し於奈津(おなつ)と命名する。
しかし頭領であり於小夜の叔父でもある新井庄助の命令で、於奈津は母親から引き離され忍びとしての英才教育を受けるために真田家へと送られてしまう。
悲嘆に暮れる於小夜だが、お市と共に悲運へと呑まれていく。
※拙作「異郷の残菊」と繋がりがありますが、単独で読んでも問題がございません
【他サイト掲載:NOVEL DAYS】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる