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おとうととおとうと
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しおりを挟む和鷹の目が虚ろになっていき、衝動的に引き寄せきつく抱きしめる黒鷹。何度も名前を、言葉にならない想いを力の限り叫ぶ。
兄だとは思わない、と和鷹は言っていた。素直ではないから。本当は、鷹の翼の頭領である黒鷹を、そして幼い頃から共に過ごしてきた兄弟として兄である彼を尊敬していた。
兄に甘えたいと思うこともあっただろう。でも黒鷹は和鷹とは本当の兄弟ではない、偽り続けている負い目を感じて近づこうとはしなかった。
お互い、求め合っていたというのに。それぞれの思いがあってそれができないままこの時が来てしまった。
「兄上、は、細いから……っ、もっと食べて……俺の分まで。生き、て……ゴホッ!俺、兄上…………大好きだか、ら……」
やがて、和鷹の腕がダランと落ちた。黒鷹の肩に顔が埋められ、音が、止まった。
「か、ず……?ねぇ、まだ寝ちゃだめだよ。こんなことをしたやつらを見つけないと。和は僕より頭がいいから、一緒に考えないと。ねぇ…………聞いてる?返事は必ずしろって、いつも言ってたのは和でしょ?ねぇ、何か言って!目を開けて!僕を見てよ和!いやだよ和ッ!和ッ!和ッ!和ッ!死ぬなぁぁぁぁぁッ!!和鷹ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
魅堂和鷹は死んだ。
黒鷹の、大好きな兄の腕の中でその短すぎる生涯に幕を閉じた。あまりにも理不尽な終わり。
誰よりも長い時間そばにいた、本物の兄弟のように過ごしてきた黒鷹には彼の突然の死が受け入れられない。両肩をつかみ激しく揺さぶる。
黒鷹が叫ぶたび、その叫びが皆の心に深く突き刺さる。返しがついていて外れない、次に突き刺さる叫び声に打ち付けられて深く、心の奥へと潜っていく。
開くことのないまぶた。声を発することのない喉。動くことのない体。全てが終わってしまった和鷹を生き返らせることなんてできないのに、黒鷹の悲痛な叫び声はそれが出来そうなほどに力強い。
大気がビリビリと震えるほどに黒鷹はひどく悲しみ、ひどく怒った。
一体なぜこんなことに?この曲者は、初めから鳶や和鷹をおびき寄せて差し違えるためにわざと見つかるようにしたのか?
忍は、仕える主人の命令ならば自らの命を絶つことができる。かつての鳶がそうだった。
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