鷹の翼

那月

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最強を求めて

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 雪の次に大食いの高遠は小さい頃から食べ盛りで、飢えに苦しんでいた。兄だから、妹達が生きるためにほとんど食べなかった。だから高遠は年齢の割に体が細い。

 それでもどんどん細くなる妹達の姿を見かねて、高遠の1つ年下の妹が自立できるようになると両親との縁を断ち斬って家を飛び出した。

 喧嘩を繰り返して強くなって、生きるために金を盗んで悪に身を沈めた。そうするしかなかった。

 高遠が家を出てすぐ、父親が早馬に轢かれて急死したためだ。母親は残った妹達の世話で仕事もできず、収入は姉の売り上げと高遠が手を汚して得た金の一部だけ。

 高遠の1つ下の妹が身売りするしかないというという時にようやく、姉が身請けされて生活は安定を取り戻す。

「それからは俺様もここにきて稼ぎが増えたからあいつらもそんなに貧乏してねぇ。でも俺様は、鷹の翼だからよ」

「お姉さんと妹さんのあとをつけてきていた不審人物は猫丸君が追い払っていたようですね。さっきはあんな酷いことを言っていましたが、巻き込みたくないからわざと突き放したんでしょう?」

 悪名高い鷹の翼を嫌っている者は新選組以外にも多い。鷹の翼の家族ともなれば人質に取られたり、時には襲われてしまう危険性が高い。

 現に、姉と妹を尾行していた者を猫丸とトラさんが撃退。猫丸がここに来た時、着物と両手の指先は血がついていたしトラさんの口元も血で汚れていた。

 高遠の家族だとバレてしまった。これ以上巻き込むわけにはいかない。高遠は、本当は家族のことが大好きだから、心から愛しているから。

 だからだろう?確信を突いた小紅に背を向け「ちげぇよ」と小さく呟いたのは。

「………………はぁ。あぁぁぁーーーーっ!!俺様らしくもねぇっ!この話は終わりだ!てめぇも、あんま深く考えすぎんなよ?俺様は喧嘩がしたくて家を出てここに来たんだ」

 耳が聞こえなくなるかと思った。自室で臥せっている黒鷹とその看病している桜鬼にも、引きこもっている和鷹にも聞こえたかもしれないくらいの大声で叫んだ。

 高遠はゴンッ!と壁を殴りつけ、痛みに悶絶して、涙目に小紅を振り返った。

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