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最強を求めて
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しおりを挟む元野生のなせるわざか。素晴らしい反射神経で飛び出した猫丸は「ンニャッ!?」と、ものすごい速さで飛んでいったトラさんを抱き留めた。
腹が立ったとはいえ投げ飛ばすなんて。猫丸がいなかったらそのまま壁に叩きつけられて死んでいたぞ。
「最低!あ……雪さんに頼んでたのに、来ちゃった。もう、丸知らないからにゃーっ」
ガタガタ震えるトラさんを腕に抱える猫丸はギンッ!と高遠を睨み付け、扉の向こうに何かを感じて目を向けるとそのまま、高遠が口を開く前に出て行ってしまった。
小紅も感じる。2人分の気配がこちらに近づいてきていると。走ってきているのか、バタバタと慌ただしい。
扉を睨み付ける高遠が侵入させまいと扉に手をかけたその瞬間、彼の体が吹っ飛んだ。さっきのトラさんのように思いっきり飛んで、抱き留めてくれる者はいないので勢いよく壁に背中を打ち付ける。
「見つけたっ!って、何でそんなところで伸びてんのよあんた。さっきの小さい子に聞いたでしょ?母様が危ないの、顔くらい見せなさい」
「いってぇなぁ!!姉貴がぶっ飛ばしやがったんだろうが!くそっ……こんなところまで来やがって。俺様は2度と戻らねぇって決めてんだ、帰れ」
「に、兄様こわい……父様が死んじゃった時も来なかった。母様、ずっとずっと兄様のこと心配してたんだよ?少しでもいいから――」
「うるせぇ!ジジイが死のうがババアが死のうが俺様には関係ねぇ。あの家を出た時から俺様は縁を切ってんだ、もうてめぇらの家族じゃねぇ」
勇ましく勢いよく扉を蹴破って高遠を吹っ飛ばしたのは、彼によく似た大人の女性。
髪は彼と同じ色だがボサボサではなく整えられていて、赤い色の目は同じく怖いくらいの獣の獰猛さを感じる。どうやら高遠の姉らしい。
その姉の後ろに怯えて隠れているのは、同じ色だがちょっと癖になっている髪の10歳くらいの女の子。目は赤ではなく薄い茶色だが、目尻が吊り上がっていて高遠の妹を感じさせる。
修羅場か。悪名高い鷹の翼の屋敷の中によく踏み込めたものだ。猫丸の口ぶりからすると門前で雪が止めていたらしいが、姉が振り切って来たな。
母親が病気で、今日にでも息を引き取ってしまいそうだからせめて最期に顔くらい見せろと迎えに来たのだ。
先に亡くなっているらしい父親の時も行かなかったようだし、家出少年とはいえ、自分を産んだ母親なのだからどんなに嫌っていても行くのが普通か。
しかし高遠は「帰れ」の一点張り。彼の体からにじみ出る黒い気が濃く、立ち込めているような感じがする。
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